クロッキー F 美術館

西洋のデッサンとクロッキーの魅力

1 西洋におけるデッサン
 西洋の美術館を訪問すると、たくさんのデッサン(素描)を見ることができます。デッサンは大作と同じように高い人気があり、デッサンだけの企画展が開催されることもよくあります。これは、日本におけるデッサンの位置付けと大いに違います。別ページ『デッサンって何?』で紹介したように、『絵画の基礎訓練』や『美術学校の入学試験科目』として扱われることで、絵画表現の魅力を失うからです。西洋におけるデッサン(素描)は『大作をつくるための下絵』である場合がほとんどですが、大作が失った魅力を持っていることが多いのです。

2 デッサンの魅力
 大作よりもデッサン(素描)の方が魅力的である理由は、いくつかあります。デッサンは、作家のダイレクトな思いや実験的な表現方法を試行錯誤する場だからです。自由な発想と方法で、新鮮な感動を描きとめたり、それを絵画として形にするための方法を模索する場だからです。これに対して、大作の完成度は高くなりますが、デッサンのような勢いや作家の新鮮な感動が上手く伝わらないことがあるのです。

3 ミケランジェロのスケッチ
 私は、2001年夏イタリアでたくさんのミケランジェロの作品を見ました。その中でもとくに印象に残っているのは、メディチ家礼拝堂(新聖具室)の地下室にあるミケランジェロの落書きです。
(写真右。画像がブレテいて失礼! しかも何だか分らない)

 1時間待たされて見学したスケッチは、イタリア旅行最大の収穫の1つでした。まず、彼の手は非常に速いスピードで動いていたこと。次に、男女の見方に大きな違いあることです。女性には全く関心を持っていないのですが、男性に対しては、その筋肉を撫で掴つかみ取るような感触なのです。筆を動きは、彼の手指と完全に同じでした。支持体が紙ではなく、石板であったこともミケランジェロの好奇心をそそったと思いす。なお、彼は2つの悪癖『作品を完成させないこと』『同性愛であること』を持っていたことを補足しておきます。
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4 クロッキーの魅力
 で紹介したミケランジェロの落書きは、英語で『スケッチ』と訳されていました。その日本語訳を『素描』とするべきか『速写』とするべきか悩むことろですが、大作に見られない魅力があることは間違いありません。クロッキーは大作が表現できないものを対象(モチーフ)とするので、クロッキーは大作とは別次元の作品です。クロッキーの魅力は、大作では表現できない種類の『心の動き』を対象としていることです。

2010年4月10日公開

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