クロッキー F 美術館

第4章 Fのクロッキー技法
超至近距離から描く

1 手で触れられる超至近距離
 自分の手の長さよりも短い距離、私なら70cn以下の距離を超至近距離と定義します。それは、手を伸ばせば触れるかの距離です。右図は、モデルが自分の右足と右手を私の机に乗せたものですが、それは私の目からちょうど70cmの距離でした。

右図:大部分は1m以上の距離なので、混乱することなく画面におさめることができました。立ちポーズなので、モデルの左足は絶対に欠かすことができず、頭部がきれる結果となりました。
F美術館コレクション vol.2010 Feb 21より)

.

2 モデルが描き手の場所を占める場合
 右図は、私の机の両端にモデルが左右の手をついたポーズです。彼女の頭が私にぶつかってしまいそうなので、私は自分の頭を(後ろへではなく)下へずらしました。紙と自分を後ろへ移動すれば良いのですが、それではポーズの価値が失われます。私は机の上に這いつくばるようにして、画面の四隅を確認しながら描きました。

右図:ふにょふにょの線ですが、臨場感を表現できたと思います。1番初めに描いた線は額から顎、そして、肩から腕へ抜ける線だったと思います。なお、このようなクロッキーができるのは、かなり特別な場合であることを付け加えておきます。
vol.2008 dec 27より)

.

3 首を回して見る
 モデルの大部分が超至近距離にある場合、目玉の動きではモデルの全てを見ることができないので、首を回しながら見ることになります。それを画面に収める方法は、見た通り、感じた通りにどうぞ! とアドバイスするよりも仕方ありません。ただし、私は顔の表情を大切に描くようにしています。超至近距離を感じさせる腕や脚はとても重要ですが、透視図法が役に立たないことは一目瞭然です。

右図:覆いかぶさるようなポーズの場合、それを透視図法で表現するなら、少なくとも4つの消失点が必要になります。(前掲コレクションより)

.

4 モデルが身体が画面をふさいだ場合
 右図は、モデルの左手が紙上におかれたものです。私は、その手の輪郭をなぞってから、バランスを取るようにして身体各部や顔を描きました。手の平の位置は、私が決めたのか、「紙の上に手をおいて下さい」とだけお願いしたのか忘れました。通常、モデルが画面をふさぐようなことはありませんが、このような遊びができるのもクロッキーの醍醐味の1つです。

右図:手の平、腕、顔の順に描いたことは覚えていますが、実際の身体と脚はどうなっていたのか忘れました。画面が落ち着くように再構成したように記憶しています。
vol.2009 May 30より)

.

5 遊びとしてのクロッキー
 超至近距離のクロッキーは、描くことより遊ぶことの方が大切です。この場合の遊びとしての要素は、自由奔放、一体感、挑戦などです。このような遊びのチャンスを得たなら、是非チャレンジして下さい。超遠距離クロッキーより、大きな歓びが得られると思います。もちろん、遊べるような関係があることが前提条件です。

2010年4月11日公開

↑ TOP


Copyright(c) 2010 All rights reserved.