このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2004年度)です

2 分解者
                   2004 11 8(月)
                   各教室
 土の中に住んでいる小さな動物や微生物は、死骸を底辺とした食物連鎖(例:落葉→ ミミズ→ モグラ)を形成しています。しかし、土の中には、死骸を分解(例:落葉→ 小さな落葉→ 小さな有機物→ もっと小さな有機物→ 無機物)して生活している微生物もいます。多種多様な微生物の中でも、有機物を無機物まで分解するものを特に「分解者」と言います。

 一般に、食物連鎖(生物どうしの食う食われるという関係)の始まりは、生産者(無機物から有機物を生産する植物)であると考えられていますが、分解者をスタート地点としても考えることができます。

(上:分解者が生産した無機物は、肥料として生産者の根から吸収される)


<授業の流れ>
 このあたり(食物連鎖や自然環境など)は、学習指導要領で示されている指導内容が少ない割りに、話を膨らますと切りがありません。時間に余裕があれば中学3年生にふさわしい脱線をお勧めしたいのですが、確実に押さえなければならない重要語句や内容を学習した後、教科書や理科便覧の図表の説明を正確に行うだけで十分です。学習内容は非常に簡単なので、どのような手順の授業を展開しても生徒の理解度は大きく変わらないので、自信をもって指導して下さい。欲張らなければ大丈夫です。さて、以下は本年度実践した4学級の授業内容を重要度に応じて再編成したものになっていますが、実際の授業では、生徒のつぶやきを拾い上げながら、楽しい展開をして下さい。
1 分解者とは
 またまた大問題からのスタートです。教科書では、『分解者とは、有機物を無機物までに分解するはたらきをしている菌類や細菌類』と定義されていますが、自然界の菌類や細菌類は1種類だけで活動するのではなく、何百、何千種類もの菌類・細菌類が協力しあって分解(生活エネルギーを得る)しているので、具体的な例を挙げることがとても難しいのです。理論だけを説明するなら簡単ですが、授業では具体的な生物を挙げなければ面白くないばかりでなく、理解も深まりません。/ そこで、私は、有機物を小さくするだけの菌類や細菌類も分解者とし、学級によっては、さらに拡大解釈して、有機物を小さな有機物に分解している消費者(例:ミミズ)も分解者に位置づける可能性を残しました。(正確な分解者の定義については誤解するかも知れないけれど、たくさんの生物が協力し合って有機物を小さく分解していくことは深く理解できる。)/ また、教科書の記述「微生物には菌類と細菌類がある。」は、誤解を招きやすい内容表現ですが、これについは、サラッとそのまま指導しました。
◎ 微生物の定義
 「微生物とは、顕微鏡でしか見ることのできない微小な生物。」 これには、ゾウリムシ、アメーバー、ワムシ、アオミドロ、ミカヅキモ、クンショウモ、ケイソウ、など、非常にたくさんの種類(動物、植物、菌類・細菌類、その他の生物)があります。主観的な大きさだけが判断基準になっているので、ミジンコを微生物とするかどうかは、しばしば大議論になりますが、それは全く不毛な論議なのでホドホドで止めましょう。/ 余談:プランクトンの定義は、浮遊生物。(大きさは関係ないので、体長10メートルでもプランクトン。また、浮遊生活も曖昧な場合がほとんどなので、浮遊という基準も曖昧になりやすい。)

◎ 授業で必ず教えること
1) 土の中にはたくさんの微生物が住んでいる。
2) 微生物は、菌類(カビ、キノコのなかま)と細菌類の2つに分類できる。
3) 有機物を無機物まで分解する菌類と細菌類を、とくに『分解者』という。

(上:この学級では、生物ピラミッドの右側に『分解者』を書き加えることで食物連鎖が完結する、と説明した。)


(上:この学級では、生産者と分解者の復習をしてから、分解者を追加した。)


(上:この学級では、まず、生産者と消費者の関係を図示させてから、次に、生物界全体の食物連鎖を完結させる生物を考えさせた。そして、土に中に生活する小さな生物(分解者)の存在に気づかせ、さらに、植物(生産者)が土中から取り込むことができるような形としての無機物にまで考えを広げさせた。)

2 有機物が無機物になるまで
 有機物は、いっぺんに無機物にはならない。たくさんの生物が協力しあって、少しずつ分解していく。実際の授業では、有機物→ 無機物、と指導するのでなく、大きな有機物→ 小さな有機物物→ もっと小さな有機物→ 無機物、として説明すると良い。

3 有機物と無機物の復習
 家庭科の先生と打ち合わせをすること。家庭科では、有機物を3大栄養素(炭水化物、タンパク質、脂肪)と、無機物をビタミンなどとして指導している。先生のよっては、さらに詳しく学習していることもあるので、話をしてみる価値は十分にある。家庭科の教科書や参考書も有効な資料になるだろう。

(上:1年生で学習済み。)


(上:炭素を含まない物質を無機物というが、二酸化炭素は例外。)

◎ Bさんの学習プリント

◎ Cさんの学習プリント


◎ Cさんの学習プリント

4 感想・まとめ

◎ 黒板例

(上:この学級は、生産者の光合成の復習から始めました。)

<評価基準>
1 自然事象への関心・意欲・態度
 B 学習プリントを正確かつ丁寧に記述することができる

2 科学的な思考
 B 食物連鎖における無機物の位置は、唯一、生産者に吸収される前であることを指摘できる

3 実験・観察の技能・表現
 B 生産者、消費者、分解者の関係を正しく図示することができる

4 自然事象についての知識・理解
 B 分解者を正しく定義することができる


授業を終えて
 本当に苦労した。時間があるなら、双眼実態顕微鏡を使って、土の中の生物を観察させたい。これまでの経験から、生徒達は丸1時間飽きることなく観察することだろう。そして、無理なく分解者を指導できるのだが、・・・本年度は、とにかく苦労した。

動物と植物と菌類・細菌類

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(C) 2004 Fukuchi Takahiro