このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2004年度)です

平均の速さと瞬間の速さ
              
                   2004 6 22(火)
                   第1理科室

 瞬間の速さの概念を教えるべきか否か! 中学生レベルでは、瞬間という時間の概念を理解し、それから先に進むことが難しいので、私は新学習指導要領で語句が登場していても教えないつもりでいた。しかし、実際の練習問題で、『瞬間の』あるいは『平均の』という言葉でつまづく生徒が多発しているのを目の当たりにし、当面の問題(高校入試)を解決するために、急遽、授業を行った。本時のねらいは、中学校3年レベルにおける、『瞬間』の時間の曖昧さを理解すること。そして、実際の入試問題においては、『瞬間』や『平均』を無視して考えても差し支えないことを理解すること。以上2点である。等速運動では(瞬間の速さ= 平均の速さ)であるが、加速運動の瞬間の速さは(横軸を時間、縦軸を距離としたグラフ曲線の任意の時間における接線の傾き)として求められる。


(上:Aさんの学習プリント)

生徒の準備: 定規
教師の準備: 60個の点が打たれた記録テープを印刷した学習プリント


◎ 授業の流れ
1 学習プリントをもらう
(始業前)

2 記録テープの点に、番号1〜60をつける
(3分)
 ・ 1番初めの点は、0番(ノーカウント)
 ・ だから、61個目の点が60番となる
 ・ テープの切断は、各点の上

3 6の倍数の点に、記号A〜Jをつける
(2分)

4 点A〜Jに、時間を書き込む
(5分)
<説明の手順>
 「違う色のペンを用意して下さい。時間を書きましょう。まず、60個のめは点は、記録タイマーのスイッチが押されてから何秒でしょう?」
 「そうです。1秒です。東京の記録タイマーは1秒で50回打つので違いますが、大阪や名古屋では1秒間に60回打つので、60個めの点は1秒になります。次に、30個目の点に書きましょう。R君! 30個目の点は何秒ですか?」
 「ヒントをあげましょう。60個で1秒だから、30個なら・・・? もう1度言いますよ。60個で1秒だから、その半分の30個なら何秒?」
 「そうです! 0.5秒です。」
 「Sさん、24個目は」
 「そうです。0.4秒。」
 「Tさん、18個目は?」
 「はい。0.3秒。」
 「Uさん、12個目は?」
 「そうです。0.2秒。」
 「Vさん、6個目は?」
 「はい。0.1秒。」
 「もう、分かったと思いますが、W君、48個目の点は何秒?」
 「正解! 0.8秒です。」
 
5 各点の距離を測り、記入する(8分)
初めからの距離を計測させたクラスと、各点間の距離を計測させたクラスがあったが、理解度はほぼ同じだったと思われる。
<指導の手順>
1 定規を準備させる
2 はじめから点Aの距離を測定させる
3 測定した距離を発表させる
4 多数決で、距離を決定する
 (プラスマイナス1mmの誤差で正解とする)
5 3、4と同様にしてAB間の距離を測定、決定する
6 全ての点間の距離を測定させる
7 距離を発表させる
8 多数決で距離を決定する

(上:初めからの距離を測定させたクラスの学習プリント)


(上:各点間の距離を測定させたクラスの学習プリント)
 
6 速さの練習問題を解く(20分)
 次の順に解かせると効果的である。必要に応じて、追加・削除する。
(1) はじめから点Aまでの速さ
(2) 点AB間の速さ
(3) 点BC間の速さ
(4) はじめから点Bまでの速さ
(5) はじめから点Cまでの速さ
(6) はじめから点Jまでの速さ

 これだけ計算させれば、全ての速さに対応できるはずだ。もし、さらに発展的な問題が必要な場合は、次の手順で出題すればよい(本校では実践していない)。
(7) はじめから1個めの点までの速さ
(8) 1個めと2個めの点の間の速さ
(9) 初めから2個めの点の間の速さ
(10) 初めから10個めの点の間の速さ


(上:C君の学習プリント)


(上:B君のクラスの指導手順は、前述した手順と若干異なる。)

7 平均の速さと瞬間の速さについて理解する(5分)
 上記の(1)〜(6)のそれぞれについて、平均の速さか瞬間の速さか考えさせる。
<説明の例>
 「まず、(6)について考えてみましょう。これは簡単ですね。初めから1秒間の速さですから、その間には速くなった遅くなったり等速になったり、いろいろな速さの平均ですから、平均の速さです。ここまではいいですね!」
 「全員、理解できたようですね。」
 「では、次に(1)について考えてみましょう。教科書によると、0.1秒間の速さを、瞬間の速さと言います。0.1秒は瞬間なので、瞬間ということなのでしょう。みなさん、瞬間の速さについても納得してくれましたか。」
 「まあ、一応納得してくれてみたいですが、実は、よくよく見てみると、
1個め、2個め、3個め、4個め、5個め、6個め、とどんどん間隔が広くなっていることが分かりまね。だって、手で引っ張り始めたところですから、どんどん速くなって当然です。ですから、いくら0.1秒でも瞬間とはいえません。もっと細かく、0.01秒にしても同じです。どんどん速くなっている途中ですから、瞬間とは言えません。でも、一応、テストの時は0.1秒ぐらいで『瞬間』、1秒ぐらいで『平均』と言うようです。まあ、とにかく、瞬間も平均も気にしなくて大丈夫です。今日の問題練習で、そんな時間でも速さを計算できるようになりました。言葉に囚われることなく、言葉を無視して問題を解きましょう。正解が出ます。不安な人は、一応、瞬間、あるいは、平均という言葉を入れて確認して下さい。もう一度くり返しますが、みなさんは、どんな条件でも速さを求めることができるので心配無用。また、こんな風に考えても大きな間違いではありません。瞬間はない。全て平均である。」

8 速さの単位変換を復習する
(12分)
 前時と同様に、単位変換を復習させる。<説明の例>は前時を参照。




<評価基準>
1 自然事象への関心・意欲・態度
 B 学習プリントを正確かつ丁寧にまとめられる

2 科学的な思考
 A 中学校レベルにおける瞬間という時間の概念の曖昧さを指摘できる
 B 瞬間の意味について深く考察できる

3 実験・観察の技能・表現
 B 記録テープの距離を誤差+−1mmで測定できる

4 自然事象についての知識・理解
 B 等速運動におていは、瞬間の速さ=平均の速さであることを理解できる
 B 平均の速さと瞬間の速さを求めることができる


授業を終えて
 最近感じることは、役所の作った新学習指導要領にたくさん文句をつけている自分がいるけれど、文句をつける明確な基準があるから新学習指導要領は大切だ、ということ。全国の教師にとって大切な存在だ。しかし、それに比較して、生徒の評価基準(通知表、内申)は完全に各学校に任せられ、明確な基準がない。幸にして、今のところ生徒や保護者から厳密な問い合わせはないが、殺到するようになれば、すぐに全国的スケールの問題になるだろう。しかし、「全国統一の絶対評価テスト」を行えば解決策する。数年前、相対評価から絶対評価に変わったんだから、学校独自の評価を使う必要はない。絶対的テストを行えば、誰も文句をつけることはできない。よね? 今は大きな問題になっていないけれど、学校独自性や先生個人が批判されるようになったら、必然的に全国統一テストが実施されるようになるだろう。(もしかしたら、政府は最終的にそのようなテストを導入し、莫大な金を動かし、個人の能力情報を手に入れようとしているのかも・・・あな恐ろし)

← 前 時
復習問題1(速さの単位変換)

次 時 →
これまでの復習問題2

↑ TOP

[→home(C) 2004 Fukuchi Takahiro