このページは『3年(2011年度)Mr.Taka 中学校理科の授業記録』です

17 HClとNaOHの電気泳動
          2011年11月上旬、理科室

 はっきり言って、この実験は教科書から削除されるべきものです。理由は、学習内容と実験が整合しにくいこと、その1点で十分です。実際の授業現場では、主要な部分で良い結果が出ないだけでなく、マイナス極で混乱を招く現象が起きます。この説明は、どの教科書会社も説明していません。私も説明しませんでした。来年度から使われる教科書には、すでにほとんどの出版社で印刷されてしまっていますが(今年の移行教材もそうですが)、是非とも削除してください。よろしくお願いします。

 どこの誰の発案か知りませんが、イオン泳動や電気泳動は不要です。水素イオンが電圧によって動くことは、これまでの実験で十分に理解しています。推測ではなく、すでに生徒は理解し、イメージしています。混乱させる実験はやめましょう。

本時の目標
(1) 移行教材(教科書)に示された実験を行い、結果をまとめる
※私自身の目標は、深入りしないことです。混乱を招く結果については、後述するように、上手に誤魔化します。一応、正しい説明は載せておきますが、説明することによって理科嫌いをつくる可能性が高いのでお勧めできません。これは重大な警告です。

授業の流れ
1 教科書を読み、実験の方法と結果を知る(5分)
2 1をプリントにまとめる(10分)
3 実験する(30分)
4 片付ける(5分)


授業の様子
1 教科書を読み、実験の方法と結果を知る(5分)
2 そして、プリントにまとめる(10分)


上:私の板書。生徒は、これを自分のプリントに写す。
 まず、左図の塩酸を見てみよう。中央に置かれた塩酸のうち、水素イオンは見水素イオンは−極へ移動する。したがって、青色リトマス紙が赤になるのは簡単に理解できる。しかし、実験現場では、−極で説明が極めて困難な現象が起きる。水素イオンの移動で赤色になる前に、−極が青色に変化してしまうのだ。その理由は記されていない。真実は、−極で水素イオンが水素(ガス)になって空気中へ逃げてしまうので、水酸化物イオンの残る。その結果、−極がアルカリ性になる、であるが、その説明は困難を極める。私は、この事実を誤魔化すために、まず「クリップが汚れていたのかなあ?」と言い、それでも食い付いてくる生徒対して真実を教えたが、高度な理解が必要になることは言うまでもない。この場面で、あえて混乱させるのは無意味である。また、右図の説明も難しい。右は赤色リトマス紙を使うが、なぜ、水酸化物イオンによって赤色が青色になるのか、その理由を説明することが大前提になるが、そこまで学習する必要があるのだろうか。私は「水酸化物イオンが移動するから青になります」と、さらっと流したが、よく思考する生徒が自宅に帰ってから混乱するようなことは極力教えるべきではない、と思っている。中学理科は、ただでさえ曖昧なことをたくさん教えているのだから、、、もちろん、自然は深く研究するほど分からないことが増えるようになっているけれど、、、。

3 実験する(30分)

上:タッパーに食塩水(食塩100gに水200g)をつくる。食塩は飽和している方がよい。飽和食塩水は、水100gに食塩36gを入れたもので、その濃度は21%。上の写真は、食塩が溶け残っているが、これぐらいでちょうど良い。おっと、メインになる泳動装置は、スライドガラスの上にろ紙、その上にリトマス試験紙を置き、その両端をクリップで止めたもの。


上:水酸化ナトリウムをしみ込ませた『こより(テッシュを幅1cmに引き裂いたものをよじったもの)』を、リトマス試験紙の中央に置く様子。


上:1つのスライドガラス上で2つのリトマス紙を置き、さらに、いくつも並列つなぎにして実験を同時進行させている様子。僅かな初期条件の違いで、結果が大きく変わるので、いくつも同時に試すことが必要だ。この班は、4人で協力して行っている。


上:Aさんの学習プリント。青色のリトマス紙の−極側が赤になっている。これは、−極に水素イオンが移動したことを示す。しかし、このページの冒頭で記したように、クリップで挟んだ部分は鮮やかな青を示している。この説明は前に記した通り「−極で水素イオンが水素(ガス)になって空気中へ逃げてしまうので、水酸化物イオンの残る。その結果、−極がアルカリ性になる」である。教科書の実験では、リトマス試験紙をはさまないようにしているが、同じような結果になることは簡単に予測できる。


上:Aさんの学習プリント


上:実験中の様子



上2枚:万能リトマス試験紙による塩酸の電気泳動

左(赤)は+極右(黒)は−極
−極側へ水素イオンが移動する。
万能リトマス紙は水素イオンで黄色になる。
水素イオンは−極で電子をもらい水素になる。


上:Bさんの学習プリント

4 片付ける(5分)


授業を終えて
 先生がどれだけ予備実験をしておいても、1班1実験では無理です。1班4人なら、スライドガラス4枚、クリップ8個、リード線8本、リトマス試験紙(赤青)各8枚が必要です。生徒も先生もかなりの力を要求されますが、5年ぐらいはチャレンジするしかないのでがんばってください。そして、削除してください、と声にして叫びましょう。

 教員免許更新もそうです。先生はお人好しが多いので、教員免許を10年で更新しなければいけない(免許はく奪?)法律ができると、結局、それを受け入れ、講習を受けている人ばかりなので、ちゃんと言うべきことは言わないとダメです。子どもまでに被害がおよびます。ま、私は子どもより自分のために発言していますけれど、、、このページを読まれたみなさもよろしくお願いします。時間がないことはわかっていますが、免許講習に奪われる時間と金もひどい話です。子どものためじゃなくて、自分のためにがんばろう!

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