このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 2年(2017年度)です

第31時
実習6 分 子 

     2017 7 13(木)、18(火)、19(水)
     各教室

はじめに
 分子=空気中の気体、として紹介しましょう。中学2年の子どもたちは酸素、二酸化炭素だけでなく、窒素、水素、アルゴン(私は中学1年で教えています)、水、その他いろいろな物質を答えるはずです。いろいろな気体がでてきたら、それらの化学式、その次にモデル図を教えます。目に見えない分子を視覚(モデル図)化することで、親しみを感じるようになれば大成功です。ポイントが『美しい規則性』であることはこれまでと同じです。原子周期表からみちびきだされる整然とした原子たちの秘密に迫る授業を展開しましょう。

参考資料:分子とは何か
 
以下は私の著書『中学理科の化学(福地孝宏著、誠文堂新光社、2011年)』の第2章の扉からの抜粋です。


上:本日の板書


本時の目標
・分子を知る
・主な分子は、大気中に気体として存在することを知る
・分子は単体と化合物に分けられることを知る
・分子の化学式から、そのモデル図を書くことができる
・物質の分類について、ざっくりまとめる

準 備
生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • 本日の学習プリント  1枚/人
  • チョーク       1本

授業の流れ
(1) 本日の紹介 (1分)
 
「今日の学習テーマはプリントのタイトル通り、分子です。分子の意味はとても難しいので、授業ではとも簡単にまとめます。教科書で予習してきた人もいると思いますが、あいまいな表現がたくさんあり、学習するほどのわからなくなるでしょう。したがって、今日の授業では中学生が覚えなければいけない分子を紹介するので、覚えて帰ってください。これまでに聞いたことがあるものばかりです。面白くなるのは、それらのモデル図です。大きさや色を変えて、見えない物質をイメージできるようにしましょう」

(2) 大気中に含まれる物質 (5分)
 
(黒板に半径60p程度の円を書いてから)これは何でしょう? ・・・ 地球、違います。丸、違います。空気、惜しい! 空気ではなくて空気に含まれる・・・ 続きを答えられる人はいませんか? ・・・素晴らしい! これは空気に含まれる気体の割合を表すための円です。円グラフの輪郭です」


上:大気中に含まれる物質を学習した後の板書

(2-1) 窒 素
(円グラフを78%・21%・1%に分けてから、78%の部分を指差し)これは何ですか? ・・・ その通り! 窒素です。窒素は空気中に78%含まれている物質で、今、みなさんが呼吸しているものの大部分は窒素です。酸素ではありませんよ! 窒素は無色透明で、人畜無害です。高級お菓子にも入っています。窒素ガス100%の袋に入っています。水分や酸素などいろいろな気体が混ざっている空気では、味が変わってしまうからです。これを知らなかった人は残念。まだまだ美味しいものを知らないようですね(ハート)。さて、(窒素と書いてから)窒素の化学式は何ですか? ・・・(子ども達のつぶやきをしっかり聞いているように片手を耳に当てながら)えっ、2つの答えが聞こえますが、Nですか、それともN2ですか。正解はどちらかなので、全員に聞きます。正解だと思う方に全力で挙手してください。では聞きます。Nだと思う人!  ・・・ぶー。思いっきりハズレです。正解はN2です。窒素は、必ずN2です。2つの窒素原子が結合して、N2の状態で飛び回っています」

(2-2) 酸 素
(円グラフの21%の部分を指差しながら)これは何ですか? ・・・ その通り! 酸素です。酸素は呼吸に使ったり、ものを燃やすのを助けるはたらき(助燃性)をもっている物質です。(酸素と書いてから)酸素の化学式は何ですか? ・・・その通り、O2です。酸素は、必ず2つの酸素原子が結合した状態で飛び回っています」

(2-3) アルゴン
(円グラフの1%の部分を指差しながら)これは何ですか? ・・・ 何っ! 二酸化炭素は違いますよ。正解は・・・ A君、よく知っていますね。正解はアルゴンです。アルゴンはとても安定した物質でまったく変化しないと言ってもよいほど頑固な物質です。いつも一人で空気中に存在している物質です。(アルゴンと書いてから)アルゴンの化学式は何ですか?・・・そうですね。エー・アール(Ar)です。アルゴンは常に単独で存在する物質なのでArと書きますが、実はAr1の1が省略されています

(2-4) 二酸化炭素
「では、二酸化炭素はどこにあるのでしょう? 二酸化炭素はこの円グラフに書けないほど少量なのですが、そのパーセントを知っている人はいますか? ・・・Bさん、よく知っていますね。なるほど、社会科で教えてもらったのですか! さすがです。(0.04%と書いてから)先生が中学生の頃は0.03%として教えてもらいましたが、最近は0.04%に増えたようです。ここでちょっと雑談ですが、地球温暖化の原因は何か知っていますか? 二酸化炭素の増加だと思う人? ・・・なるほど、その可能性もありますが、円グラフに表現できない0.01%増加によって、気温が数℃上昇したと考えることはできません。その割合で計算すると、二酸化炭素1%増加で気温100℃以上になり、地球にある水はすべて水蒸気になってしまうでしょう。さらに、地球46億年の歴史から振り返ると、今は氷河期にあたります。氷河期とは地球のどこかに氷河がある時期なので、みなさんも私も、氷河期に生まれ氷河期に死んでいく運命にあります。ということで、地球温暖化で騒ぐのはほどほどにした方がよいでしょう。とくに、政治家たちが二酸化炭素の排出量でお金のやり取りをしていますが、先生は無知な人々をだましているような気がしてなりません。もちろん有害ガスの排出規制は大切なことだと思いますが、二酸化炭素は無臭無色透明、無害な物質です。それは植物の光合成に不可欠で、地球の生物を支えている最も大切な気体です。二酸化炭素がなくなれば光合成が止まり、地球上すべての生命が死滅するでしょう。雑談が長くなりましたが、二酸化炭素の化学式は?・・・ その通り、CO2です。

(2-5) 水
「最後に、割合が大きく変わる物質を紹介します。0%〜3%の範囲で変動します。この教室では、現在約2%存在します。何かわかる人! ・・・すごい! よくわかりましたね。水です。砂漠では? ・・・そう! 0%です。先生はサハラ砂漠やゴビ砂漠などいろいろな砂漠を歩いたことがありますが、昼間に歩くと瞬間に水がなくなります。先生はあまり水を飲まないタイプなのですが、わずか2kmを歩く途中に水2リットルを飲んだことがあります。昼間に歩くと死ぬ、ということを学びました。水2リットルは重いだけでなく、とても貴重なものです。雑談が止まらなくなってきましたが、その時、先生の口や目にたくさんのハエが飛んできました。水をもらうためです。涙の主成分は水です。涙がなくなったら、目が見えなくなります。ラクダの長い毛は砂やハエから目を守るためのものです」
 「おっと、雑談で重要なことを言い忘れるところでした。この教室の湿度は現在、約・・・70%ぐらいです。先ほど2%と言ったのは、空気全体にたいする質量(g)の割合です。空気全体の重さに対する水の重さの割合いと考えれば良いでしょう。これに対して、湿度は最大に水蒸気がある場合を100%として考えるので、今は最大100%に対して70%ぐらいの水蒸気が飛んでいるわけです。詳しくは3学期の気象分野で学習するのでしばらくお待ちください。わからない人も、今はわらなくて大丈夫です。とにかく、空気中に含まれる水の質量の割合いは、0%〜3%です。100%は他の気体が0、ということなので、つまり水です。水中にいる場合、水100%ということになります。今は空気中にいるので、空気全体の重さに対して、最大(100%)でも重さの割合いは3%にしかなりません」
 「で、水の化学式は?・・・ その通り、H2Oです。」

以上(2-1)から(2-5)までの気体を紹介したら、以下の2点をまとめます。それらは子どもたちの混乱を避けるためにとても有効なことです。

  1. 分子=気体、と考えてもよい
  2. 分子という語はよく省略する
    (原子という語は絶対に省略しない)

(もし)
  子どもから水素、塩素、アンモニアなど他の気体が出てきた場合は、名称をまとめておきましょう。化学式については、子どもたちの理解度に合わせて紹介しても省略しても構いません。

上:別クラスの前半の板書(この時は室内コンデションが悪く、子どもたちに書かせることが多くなった)

(3) 単体と化合物に分類する
 
「次に、分子を2つに分類します。(黒板に左右2つに分けた表を書き、左に単体・右に化合物と書いてから)1つは単体、もう1つは化合物をいいますが、単体は1種類の◯◯から、化合物は2種類以上の◯◯からできています。(黒板に『単体は1種類の◯◯からできているもの』『化合物は2種類以上の◯◯からできているもの』と書いてから)では◯◯に入る言葉は何ですか? 化学式を調べればわかることですが、・・・その通り、原子です」


上:主な分子を単体と化合物に分類した板書

 「では、これから先生が問題を出しますので、それらが単体か化合物か答えてください。2択問題なので、全員挙手で答えてください。手をあげるのが遅い人は不正解とします」

(3-1) アルゴン
第1問はアルゴンです。これは簡単ですね。アルゴンの化学式を見れば誰でもわかりますね。では、質問しますよ。手をあげる準備をしてください。では、聞きます。アルゴンは単体だと思う人! はい、正解です。今、手が挙げなかった人は間違いです。アルゴンの化学式をみてください。Arです。Arの次に1があるのですが、それが省略されています。もし、アルゴンが原子が2つならAr2、3つならAr3となりますが、実際は1つしかないのでArとなります。
(表の単体のところにAr(アルゴン)、そして、アルゴン分子のモデル図を書く)

(3-2) 酸 素
「第2問、酸素は単体ですか、それとも、化合物ですか? 酸素の化学式を見れば簡単にわかりますね。では、どちらかに手を挙げてください。おっと、考えている人がいるので10秒待ちます。・・・(10秒後)・・・では、手をあげる準備をしてください。聞きます。酸素は単体、だと思う人! 正解です! 今、手を挙げていない人はO2の2にひっかかったのだと思います。O2の2は酸素原子が2個あることを示していますが、単体と化合物の違いを確認してください。単体は1種類の原子、化合物は2種類以上の原子からできている物質です。したがって、O2は酸素原子2個が結合していることを示していますが、原子の種類数としては、・・・そうですね、1つしかありません。したがって、酸素原子2個が結合している酸素分子、すなわち、酸素は単体です。(表の単体のところにO2(酸素)、そして、酸素分子のモデル図を書く)

(3-3) 窒 素
「第3問、窒素はどちらですか? 酸素は先生のフェイントにはまった人がたくさんいましたが、今度間違えたらヤバイです。頑張ってください。窒素、すなわち、窒素分子の化学式を見れください。では、聞きます。窒素は単体、だと思う人! 正解です! 手を挙げていない人はちょっと残念です! 
(表の単体のところにN2(窒素)、そして、窒素分子のモデル図を書く)

(3-4) 水 素
「第4問は水素です。水素の化学式は知っていますね。・・・その通り、H2ですから、水素は単体か化合物かどちらですか? この答えは先ほど窒素を間違えてしまったA君に聞いてみましょう。
(A君の顔を見ながら本当に当ててもよいか確認してから)A君、どちらですか? ・・・素晴らしい! リベンジ成功です。水素は水素原子だけでできている単体です。A君ありがとうございます。(表の単体のところにH2(水素)、そして、水分子のモデル図を書く)

(3-5) 塩 素
「この他にも単体はたくさんありますが、中学生に覚えて欲しいものはプールのにおいで有名な物質です。・・・よく覚えていますね。塩素で正解です! 塩素の化学式は? ・・・その通り、Cl2ですから、塩素、すなわち、塩素分子は塩素原子2個が結合した単体です。
(表の単体のところにCl2(窒素)、そして、塩素分子のモデル図を書く)

(3-6) 水
「ということで、単体ばかりをまとめましたが、ここで化合物を紹介します。まず、水です。水の化学式はみなさんご存知の通り・・・H2Oですから、これは、何原子と何原子の化合物ですか? ・・・その通り、水素原子と酸素原子の化合物です。
(表の化合物のところにH2O(水)、そして、水分子のモデル図を書く)」ここで問題です。水は何個の原子からできているでしょう? 答えは2個か3個のどちらです。シンキングタイム10秒で、全員に挙手してもらいます。では、シンキング始め! ・・・時間になったので挙手の準備をしてください。水は何個の原子からできているかを聞きますよ。答えは2個か3個です。では、・・・2個だと思う人! はい、残念! 正解は3個でした。今、挙手しなかった人は正解者になりますが、本当の正解者なら3個になる理由を説明できるはずです。みんなに説明してくれる人は?  ・・・では、Bさんお願いします。・・・(生徒が答えてから)・・・よくわかる説明でしたね。水分子H2Oは水素原子2個と酸素原子1個が結合したものなので、原子合計は3個になります。もちろん、原子の種類は2種類です」

(3-7) 二酸化炭素
「次の化合物は二酸化炭素です。二酸化炭素の化学式は・・・CO2で、
(表の化合物のところにCO2(二酸化炭素)、そして、二酸化炭素分子のモデル図を書く)モデル図はこうなります。ここで、先ほど間違えたC君に問題です。(C君の顔を見ながら本当に当ててもよいか確認してから)C君、二酸化炭素は炭素と酸素の化合物ですが、原子の数は合計何個になるでしょう? ・・・3個、素晴らしい、大正解です」

(3-8) 塩 酸
(3-9) アンモニア
 申し訳ございません。(3-8)と(3-9)は省略させていただきます。

4 本日の考察とまとめ
 最後の5分は、生徒各自で自由にまとめさせます。

 


◎ 生徒の学習プリント

上:Aさんの学習プリント(クリックすると拡大)


 ※右の物質の分類(混合物と化合物)は次時におこなったものです


上:Bさんの学習プリント(クリックすると拡大)
 ※右の物質の分類(混合物と化合物)は次時におこなったものです


授業を終えて
 最近の教科書は饒舌なので、私は以下のようにまとまめました。

  1. 分子=気体、と考えればよい
  2. 分子という語は、省略する
    (原子という語は、絶対に省略せずにつける)

 各教科書会社はこれを明記するようにしてください。また、トピックや囲み記事がない紙面づくりを目指すと、先生や子どもたちが教科書の背骨にしたがって学習できるようになります。ページ数は1年生で130ページ(週3時間)、2・3年生で180ページ(週4時間)までにすると現場の先生からの絶大なる支持が得られると思います。ページ数を減らすことは勇気と決断力と編集力と深い自然に関する理解が必要ですが、頑張ってください。増やすことは簡単で安易です。
  教科書は教科書です。問題集でも資料集でもありません。自信を誇りをもってください。私たちは本物の教科書を望んでいます。教科書づくりに関わるすべての人も同じ思いだと信じていますが、今の教科書は子どもと先生を混乱させています。骨太な教科書をつくってください。それを買います!

note:純物質を教えるタイミング

  1. あなたは、物質と純物質の違いを説明できますか。これを明確に説明できる先生であっても、性急に教えないようにしてください。かなりゆっくりと、遅いタイミングで教える方が良いと思います(2つの違いは第27時参照)。
  2. 元素や原子という最小単位の粒を学び始めた中学2年生のこの時期に、純物質という言葉を使うことは混乱を招きます。彼らの物質のイメージは、純物質です。しばらくは物質をいう言葉だけを使い、すべての物質は原子からできているイメージを確立させましょう。そして、物質(純物質)には単体と化合物があることを十分に理解してから、混ざり物のある混合物を教えましょう。
  3. すべての分子は純物質です。
  4. 私の実践では、次の時間にゆったりと混合物(物質の分類)を教えています

関連ページ
単体と化合物(2年、2003年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の化学

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復習6.1 物質の分類

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