このページは、Mr. takaによる『若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第9章 評価は不要物か?

9 合唱コンクールは相対評価で

─ 子どもが自然体で勝負できる最高の舞台を逃すな! ─

1 子どもは競争することが好き
 私は、このページのタイトルを『合唱コンクール』としました。これは競争を意味しています。教育学者の中には、楽しむための『合唱祭』にするべきだと主張する人がいますが、子どもは競争が大好きです。音楽や合唱に興味がなくても「隣のクラスには負けられない」と練習します。まったく単純な理由ですが、それが子どもの素直な姿なのですから、大好きな競争を取り上げ、大人が示す不可解な目標で子どもをねじ曲げる必要はありません。ライバルを倒すために仲間と手を取り合い、全力を尽す努力をすれば良いのです。
 → 関連ページ『合唱コンクールで学級づくり

2 競争させる項目
 採点項目(評価基準)は音楽に関することが中心になります。この採点項目は、そのまま子ども達の目標となりますので、事前に明確に示して下さい。

主な採点項目
(1)練習中の態度  ・練習時間を守ったか
・事前のプレ・コンクールので態度
(2)本番の態度 ・入退場の様子はどうか
・音楽に集中しているか
(3)正確な音程 ・各パート毎に、正確な音がとれているか
・合唱全体として、美しいハーモニーが表現できているか
(4)強弱の表現 ・各パート毎に、強弱の幅が十分にあるか
・全体として、強弱の表現ができているか
(5)リズム ・各パートのテンポが正確か
・全体として、リズムの線が合っているか
(6)曲想の表現 ・曲を深く理解し、それを表現しているか
・指揮者を中心として、
(7)伴奏者 ・ピアニストがその役割を十分に果たしているか
(8)指揮者 ・指揮者が合唱団と伴奏者を十分に指揮しているか
(9)鑑賞中の態度  ・他のクラスが発表している時に、真剣に鑑賞しているか

 ここで注目して欲しいのは、(1)練習中の態度、(2)本番の態度、(9)鑑賞中の態度です。とくに(1)は学級経営上、重要です。数カ月にわたる練習期間を通して、子どもは着実に自分を客観視できるようになります。事前コンクールでは、先生は我慢して黙って見守るようにするほど、子ども達は自らの力で成長していきます。

3 子ども達による採点
 コンクールの採点は音楽の先生が中心です。合唱コンクールは、音楽の授業の集大成とも言えるものですから、先生がリーダーシップを発揮して採点(評価)するのは当然の仕事です。その一方、子ども達に合唱を評価させることも必要です。なぜなら、鑑賞(採点、評価)は、音楽の大切な要素の1つだからです。したがって、合唱コンクール当日に、生徒全員(あるいは、音楽係や代表生徒)に採点させ、それを最終的な順位に反映させることも悪くありません。実際、私の経験では、教師と子どもの採点結果はほとんど同じでした。先生と同じということは、音楽の先生の指導が浸透していることの証明です。素晴らしい教育を受けた子どもは、自分の個性からみた多様な採点をしますが、最終結果は多くの人が納得するものです。さらに、採点させないようなコンクールは間違っている、ともと言えます。
 なお、子ども1人ひとりの鑑賞力を教師が評価するのが理想ですが、合唱コンクールは時間がないので割愛せざるを得ません。美術科での鑑賞については、別ページ『美術で相互評価をさせよう』をご覧下さい。

4 合唱の特異性
 音楽や美術は、自分を表現することが学習目標の1つです。その表現は、風呂場での鼻歌のように自分や一部の人だけを対象にすることもありますが、学校では全ての人に対して開かれた表現(作品)を指導します。
 音楽と美術作品を比較すると、音楽はやり直しが効きかないことが分かります。録音でもしない限り、音楽は時間とともに失われます。したがって、鑑賞も一過性となり、その場の雰囲気に非常に左右されます。逆に考えれば、音楽は雰囲気や時間を表現するとも言えます。
 合唱コンクールで一番初めに発表するクラスが不利になることは、このことから説明できます。どれだけ採点(鑑賞の視点)を厳密にしても、過去のものと現在のものを、同一に比較することは非常に難しいのです。

2008年6月18日

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