このページは『Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第4章 学級運営

15 朝読書の効果

1 朝読書の体験
 朝、1時間目が始まるまでの短い時間に読書をすることを『朝読書』と言います。私は、この朝読書の指導現場に5年間いましたが、そこでの体験を記録・考察します。ただし、私は学級担任ではなかったので、直接指導していません。事件が発生した時に、ピンチヒッターとして指導しただけです。また、1つの学校における経験なので、偏った考察になる可能性がありますが、1つの事実として記します。なお、朝読書と同じような朝の活動『朝学習』については、別ページ『朝学習で生徒と触れあう』をご覧ください。

2 朝読書の主な目的
(1)朝、落ち着いた時間を過ごす
(2)読書に親しみ、読書する習慣をつける
(3)1つのことを継続して取り組む態度を養う
(4)自主的に本を選び、目標をもって読書する
(5)優れた書物から、人類の英知を得る

3 朝読書のルール
(1)各自で本を持って来ること。
(2)本を読んでいる間は、絶対に話さないこと。
(3)面白くても、大声を上げて笑わないこと。
(4)8:35になったら、途中で読書を止め、今日の連絡を聞くこと。
(5)放課中に読書をしても良いこと。

4 指導方法は『教師も黙ってひたすら読む』だけ
 生徒が興味ある本を持参し、各自で黙読するだけです。そして、教師の指導はただ1つ。生徒と同じように、読書に没頭することです。生徒が本を読んでいる間は、生徒と同じように真剣に本を読んで下さい。回収物を点検したり、遅刻した生徒を指導したりしてはいけません。もし、事件が発生した場合は、読書している場所を離れる必要があります。つまり、読書指導は他の教員に任せて下さい。任せられた教員は、すぐさま持参した本を読むことに専念します。

5 私が見た朝の現場
 朝読書の指導をしたことがない先生は、「こんなのは理想だ」と思われるかも知れませんが、朝読書はこのような状態でしか存在し得ません。1人でも話をしはじめたら、数日後には崩壊します。年度当初に、しっかりと話をしておくことが大切です。また、読書の習慣が身につかなかった生徒は、10分間死んだようにぼけーっとしていたり、寝ていたり、誰にも迷惑がかならないようにしています。とても可哀想ですが、大多数の生徒が熱心に読書している場所で、1人を指導することはできません。

6 私が感じた朝読書の功罪
 読書する習慣はできたと思います。10分放課でも1人で読書する姿が見られるようになったので、大人社会でいわれる『活字離れ』は心配ないように感じました。

 その一方、私は2つの問題点を感じました。1つは、本の内容です。過激なイラストが入った『おたくな本』、少年犯罪を描いた本は有害です。朝から異常なイメージを頭の中につくっているようでは、まともな学校生活ができるわけがありません。バーチャルな世界を構築し、それを学校現場に持ち込まれることはとても危険です。本の中の主人公は、いとも簡単に学校を休んだり、家出したり、喧嘩をしたり、誰かが死ぬのと体験したりします。

 もう1つの問題点は、友達と一緒に遊ぶことより読書を好むようになることです。学校に集る理由は、自分と違う考えもって行動する人とぶつかり合うことです。みんなと協力して1つのことを成し遂げることです。そもそも、1人の活動する読書は学校で指導するものではないように感じます。悪くいうと『引きこもり指導』をしているように感じます。かと言って、放課中の読書を禁止することは不適切なので、私の中でいまだ未解決な部分があります。

 なお、生徒を静かに管理するために読書させておく、という方法は悪くないと思います。例えば、身体測定や健康診断のとき、黙って整列させておくよりも、自分の好きな本を読みながら順番を待つことは有意義です。

2007年6月

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