このページは『Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。 |
第4章 学級経営
5 学級のリーダー作り─学級の委員と係は、個別の専門リーダーである─
学級の委員と係は、ほとんどの学校や学級にありますが、その立場が曖昧なようです。それは、先生のお手伝いではありません。委員や係としての権限と責任を与えて下さい。義務として仕方なくやるのか、責任をともなう権利として自主的に行うか、それは大きな違いです。
1 リーダーの決めの手順
(1)室長(学級委員長)を決める
室長の選出は、学級運営上とても重要です。室長の人柄を含めた力量によって、クラスの雰囲気が大きく左右されるからです。別ページ『室長(学級委員長)の決め方』を参考にして、学級全体が納得するようにして選出して下さい。司会者は先生です。(2)委員を決める
次に、学級の委員を決めます。その種類と人数は、学校の生徒会によって決められています。生徒手帳に書いてあると思いますので、黙読させて下さい。次に、先生が補足説明しながら、雰囲気を高めます。生徒から質問が出てくるなら、かなり意欲が高まっていると考えて良いでしょう。先生は、各委員会の名称を黒板に書き、これから決める内容をはっきりさせます。そして、十分に立候補が出る雰囲気ができたところで、司会を室長へ譲ります。学級委員の例
(ア)生 活
(イ)美 化
(ウ)給 食
(エ)保健(体育)
(オ)図 書
(カ)視聴覚、広報
(キ)選挙管理室長は、黒板の前に立って立候補者を募ります。副室長は板書します。
1)立候補者が1人の場合
立候補者が1人の場合は、副室長が黒板にその氏名を書きます。そして、室長が、学級全員に対して承認の拍手を求めます。室長は、その拍手によって、立候補者が当選したことを宣言します。2)複数の場合
複数の立候補者が出た場合は、一言ずつ抱負を述べさせても良いでしょう。その場合、事前に、「立候補がたくさん出た場合は、室長を決めたときと同じように一言ずつ話をして下さい。とくに何もない場合は、『@@小学校の@@です。とにかく頑張りますので、よろしくお願いします』の一言でオッケーです。その言い方によって、君の『やる気』が分かると思いますので、とにかく一言話をして下さい」と話をしておきます。その後、挙手による選挙を行なうのが公平です。白紙を用意して無記名で投票させたり、うつ伏せになって挙手させる方法もありますが、私は開かれたクラスを作りたいので、そのまま挙手させます。なお、ジャンケンはお勧めできません。
3)立候補がない場合
全く立候補者がない場合、雰囲気が悪くならないうちに、先生が次のような助け舟を出します。
「ここで立候補すると、かなり凄いと思います。皆が嫌がるものを、しかも、自分もやりたくないと思っているのに、皆のためにやるのですから、かなりカッコイイと思います。これだけ待っても誰もいないのですから、立候補した人が完全に仕事をできなくても文句を言う人はいないでしょう。いたら、先生が叱ります。ということで、誰かいませんか?・・・(挙手がない場合)・・・さあ、迷っている人は立候補しましょう。迷っているなら、困難な道を選べ! それは先生が迷った時に決断するときの言葉です!・・・(挙手がない場合)・・・仕事の内容が分からなくて不安なのかも知れないので、もう一度先生が説明しましょう。@@委員は、、、、、です。じゃあ、誰かいませんか?・・・(挙手がない場合)・・・どうしても立候補が出ないようなので、今日はここまでにしましょう。でも、委員は絶対に決めなければならないことなので、明日の朝にもう一度立候補を聞きます。学級の係は、委員が全部決まるまで待ちます。また、もしかしたら、皆の前では立候補し難い人がいるかもしれないので、その人は放課中に先生のこっそり教えて下さい。それから、帰りの会にも聞こうかな! では、これから配るプリントについて説明します。」(3)学級の係を決める
※全ての委員が決まるまで、学級の係を決めてはいけません。
次に、学級の係を決めます。次に、よくある学級係を紹介します。学級係りの例
(ア)9教科の学習係(国語、社会、数学、理科、音楽、美術、保健体育(男女別)、技術と家庭、英語)
(イ)号令係
(ウ)書記、学級日誌係
(エ)給食、ミルク係
(オ)回収・配付係
(カ)何でも係
(キ)レクリエーション係
(ク)席がえ係係の決め方は、(2)委員を決めると同じです。室長が司会者となり、決めていきます。決める順序はどれからでも良いでしょう。おっと、その前に『学級の係の種類』を決め、その仕事と権限と責任をはっきり決めなければなりません。1年生の場合は、先生が『原案』を出して下さい。詳しければ詳しいほど、子ども達はやる気を出します。あいまいな点や、子ども達に任せたいことがある場合は、はっきりと考えさせます。例えば、「先生は、学級の時間にレクリエーションとたくさんやろうと考えています。その内容は何でも構いませんが、先生は決めません。君たちが決めて下さい。それで、その原案を考えたり、皆の考えをまとめる係をレクリエーション係として、男女各2人ずつ決めたいと思います。男女それぞれ決めるのは、時には男女別々にやりたいこともあるかも知れないからです。また、人数は2人ずつが原案ですが、1人でも3人でも何人でも構いません。このレクリエーション係は、室長・副室長と協力して、レクリエーションの日時や内容を細かく決めます。もちろん先生も協力しますが、基本的に先生は、時間と場所を確保するだけです。かなりたくさん確保しますが、君たちが決めなければ、先生は勉強の時間にします。でも、先生は、勉強は授業だけで十分だと思うので、しっかりレクリエーションして下さい。例えば、『花火大会をやろう』という計画は難しいですが、君たちのお父さんやお母さんや地域のおじさんおばさんが応援に来てくれて、花火代も全員が納得するようにできて、安全な場所も準備できて、最後のひと押しだけになったら、先生も力を貸します。君たちが努力した分だけは応えますので、やれるだけやってみて下さい。先生は基本的に何もしませんが、君たちの努力は決して裏切ることはしません。では、このような仕事をするレクリエーション係が必要かどうか、そこから決め下さい。必要ないなら、それでも構いません。それでは、室長さん。あとは、よろしくお願いします。まず、レクリエーション係を作るかどうか、皆の意見を聞いてから、多数決をとって下さい」、と話します。
2008年現在、名古屋市は40人学級ですから、1人の生徒が複数の委員と係を兼任することはあまりないでしょう。しかし、30人以下の少人数の場合は、1人が複数の委員や係を受け持つことになります。
2 リーダーの権限と責任
冒頭でも述べたように、すべての係りは権限を責任を持っています。例えば、回収係には下のような権限を与えます。そして、回収係の命令に従わない者は、先生が厳重に注意します。一方、回収係は、出席番号順に揃えて先生へ提出する責任があります。学級の代表ですから、万一提出を忘れると大変なことです。しがたって、その責任を遂行するために、権限が与えられるのです。回収係りの権限
(1)出席番号や名前が乱れている者に対し、書き直して再提出を命令できる権限
(2)乱れた提出物を、整とんして再提出させる権限
(3)個人がばらばらに持ってくるのではなく、できるだけ出席番号順にしてから提出させる権限
(4)全員の確認が終わるまで席を立たないように注意する権限このように、学級のリーダーは室長だけではありません。号令係、黒板消し係、給食係、9教科の学習係も、それそれ専門のリーダーがあります。1つの学級はたくさんの人が集っているので、役割を分担させ、それぞれに責任と権限をもって仕事をすることが大切です。また、その責任と権限は先生が示すのではなく、できるだけ室長を中心にして学級で話し合わせるようにして下さい。学級担任1人が『お山の大将(リーダー)』になっているようではいけません。
また、2000年頃にクローズアップされているいじめの1つに、室長などのいわゆる良い子がターゲットになるものがあります。これは、いわゆる良い子が少ないから起こる現象なので、先生が良い子を増やして下さい。解決方法は難しくありません。このページで述べたように、小さなリーダーをたくさん作るのです。とくに、学級全体で決めた委員や係にもとづくリーダーは、とても明快なので、これを利用できないようでは、子どもの流動的な人間関係の中でリーダー・シップを育てることは不可能です。
若手教師のみなさんは、明確な名称をもった室長・委員・係に、明確な権限と責任があることを確認して下さい。これは、子ども達にとっては小学校で学習済みのはずですが、まだまだ十分に確認しなければなりません。そして、中学では、自分達で新しく係を作ったり、その権限を決めたり変更できることを体験させて下さい。なお、この段階では、先生が適切なタイミングで助け舟を出すなど、強力なリーダー・シップが必要です。
3 先生はリーダーではなく、監督です。
以上で、学級の組織ができると同時に、生徒全員が専門分野のリーダーになりました。次の段階は、先生がリーダーから監督に昇格することです。先生が監督になることで、生徒の自主性が十分に発揮され、先生を越えたアイデア溢れる学級が生まれます。その方法については、別ページ『担任は学級監督です』を参照して下さい。
2008年1月3日
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