このページは『Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。 |
第4章 学級経営
17 通知表って何?
─作らなくても良いものだってこと、知っていますか?─1 通知表は学校の独自の連絡帳
ほとんどの学校は年に数回、各家庭との連絡方法の1つとして『通知表(簿)』を作成しています。その内容と形は、各学校の校長の責任によって自由に決めることができます。学区の実態に応じて、独自の項目を作ったり重要度が低い項目を省略したりできます。実際、通知表を作らない学校もあります。通知表は、指導要録のように法律で規定されて(法定表簿)いないものです。2 公立中学校の現状
しかし、公立中学校の場合は、教育委員会から指定された画一的な内容を記述しているのが現状です。私は、公立学校が独自性を出すのが難しいことは理解できます。しかし、学級担任や教科担任の評価や表現方法が必要以上に規制されたり、詳細に記述することを求められることは問題だと感じています。なぜなら、通知表作りに時間をかけるようになると、教員が子どもの向き合う時間が減るばかりではなく、子どもの活動を規制する結果になるからです。子どもや保護者の立場からすると、通知表の評価基準は『子どもの目標』となり、詳細な項目は『子どもを縛ること』になるからです。3 通知表の主な内容
通知表の主な内容は次の通りです(名古屋市立公立中学校、2008年)。
(1)各教科の観点別評価、成績(評価)
(2)各領域の活動の評価(様子)
(3)特別活動(学級の係、生徒会活動、部活動、表賞など)の記録
(4)出欠の記録
(5)身体の記録
(6)行動の所見(1)の『各教科の評価』は必要だと思いますが、各教科の『観点別評価』は必要だと思いません。この理由については、別ページ『評価って何?』に譲ります。
(2)の各領域の活動と評価は、最近の動向として削減される方向にあり、私は歓迎しています。とくに、2009年度から実施される学習指導要領は、『選択教科等』と『総合的な学習の時間』の時間数を次のように削減しましたが、これは現行の要領が適切ではないことを示していると言えるでしょう。
選択教科等 155時間〜208時間 → 0時間
総合的な学習の時間 210時間〜335時間 → 190時間
選択教科等は0時間になったことで問題が解決しましたが、総合的な学習の時間は190時間(中学3年間の合計)残されています。総合的な学習の時間(2002年から施行)が0時間になるのは時間の問題だと思いますが、私は一刻も早く全面解決して欲しいと願っています。それまでは、評価したり様子を記録しなければならない可能性が残るからです。(3)〜(5)については、項目を記述するだけで十分でしょう。もし、文や文章表現を求められるなら、私は反対します。そのために消費される時間は、保護者との直接面談に振替えるべきです。冒頭に述べたように、通知表の本来の目的は、保護者との連絡にあるからです。とくに、通知表を渡す直前に『保護者会』が開かれる学校の場合、通知表の記述は大変に簡潔にしなければ、保護者会の存在意義を失ってしまいます。何ごとにおいても、重複は避けるべきです。
(6)の『行動の所見』は、担任の先生として頭を痛めることでが、これはとくに重要なので、別ページ『子どもの所見を書こう!』をご覧下さい。
4 道徳には注意して下さい
2009年度からの改定で、政府は、道徳を『領域』から『教科』へ格上げしようとしました。幸い、その目論みは挫折し、多くの現場の教員が胸をなで下ろしたことは記憶に新しいと思います。しかし、同じようなことは時の為政者によってくり返し画策されるでしょう。若い先生はピンと来ないかも知れませんが、道徳を教科にすることは大変な危険性をはらんでいます。私は、道徳の時間は必要だと思いますが、教科の1つとして道徳の学習内容を『評価の対象する』ことには断固反対です。それは、子どもの価値観を評価することであり、時の為政者の言いなりになる国民を作る結果になるからです。世界平和や戦争反対の立場からも、絶対に許してはならないことです。
5 若い先生に望むこと
子どもや保護者の立場からすると、通知表は絶対的な存在で、わずかなミスも許されません。先生が記述したことで一喜一憂したり、人生が決まったりすることだってあります。とても大きな責任あることを忘れないで下さい。全ての項目はいずれも大切なもので、公平公正、かつ、正確に記述しなければなりません。万一、間違えてしまった場合は、地面に頭をつけて謝罪し、正直に訂正する姿勢も忘れてはいけません。
しかし、先生の基本姿勢はリラックスしていることが大切です。先生が神経質になると、それは伝染病のように広がってしまいます。通知表よりも『日常の保護者との連絡』を大切にすること、通知表には『絶対的な形式や内容は存在しない』ことを覚えていれば大丈夫です。最後に残るのは心と心の触れ合いなので、いっしょうけんめい取り組んでいる限り、あなたの失敗は必ず解決します。6 これからの通知表のゆくえ
この先、現場の教育活動が充実していくなら、通知表は非常にシンプルな形式と内容になるだろう、と私は予見します。ただし、そのためには教員1人ひとりが十分な力を持っていることが要求されます。1日も早く、単純で美しく、子どもと保護者が感動し待ち望むような通知表が作れるような日が来るように、皆で研鑽を積み重ねましょう。
ここまで読んだ先生はわかったと思いますが、通知表の形式と内容は、時代に左右されます。若い先生は自分の考えをしっかりもって、時代に流されないようにして下さい。教育は、人間の活動の根幹となるものです。2008年5月24日
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