このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第8.2章 いじめという犯罪

2 いじめとは何か(2007年公開)
※ このページの内容は古いので、Mr.takaによる『いじめの定義』をご覧ください!

はじめに 子どもの世界では、ごく自然な行為です
 子どもの健全な発達に、「いじめ」は不可欠です。いじめはごく自然な行為であり、その経験を通して、子どもは「人としての心」を成長させます。また、学校にはたくさんの子どもが集るので、いじめは無数に発生するのは当然のことです。教師に必要なのは、「いじめ」の質を見抜く目です。悪質な「いじめ」は即座に消滅し、良質なものは見守るのです。教師は、専門の教育を受けているので、流行に惑わされて全の行動を「いじめ」として一括して片付けるのではなく、教育的効果を狙わなければなりません。ただし、繰り返しますが、悪質なものは即刻、すべての教職員と関係する保護者、必要なら外部の関係機関と連絡をとり、完全撲滅に向けて取り組みます。

1 一般的な定義のまとめ
 2007年現在、いじめは明確に定義されていません。以下にさまざまな研究者の考えを羅列しますが、私が注目しなけばならないと思うのは、太字にした部分です。2007現在は、いわゆる「旧来のいじめ」と「犯罪行為」が混同されていると思います。

(1)力が弱いものを怯えさせたり傷つけたりする行為
(2)教師や保護者など強いものに対して秘密に行なわれる行為
(3)繰り返し行なわれる行為
(4)意図的に行なわれる行為
(5)人権侵害、犯罪の1つ


Mr. takaによる、定義の解釈 

(1)と(2)は普遍的な定義になると思います。自分より強い者に対して向かっていくのは「いじめ」ではありませんし、いじめを処罰できる強者(強権)がある者に知られたとき、「いじめ」は消滅するからです。最近の「いじめ」は、教師や保護者の抑止力が急速に失われたことが一因です。
いじめが秘密裏になりやすい理由
(ア)仕返しが怖い
(イ)いじめがあることを知られたくない
(ウ)親や先生を心配させたくないという高いプライド
(エ)相談するのが恥ずかしい

(3)の繰り返し行なわれる期間については、数日から数10年です。かなりの幅がありますが、比較的に短時間でいじめが解消することに注目して下さい。短時間に解消するいじめは、子どもの発達(自主的な学習)として重要です。大人が見守るべき場合さえあります。いじめの正しい姿は、『子どもの中で自然に発生し、解決する』ことを忘れてはいけません。本来、大人が介入するものではないのです。これは、大人社会のいじめにも当てはまります。

(4)は、『無意識のいじめ』があるのではないか、と最近見直されています。しかし、私はこの考えに反対です。これを認めるなら、専門の病院で治療、完治するまで出校停止にしなければ、無差別に大量の子どもが無意識にいじめらることになります。これは、一般の大人や学校の先生やに解決できる範囲ではありません。その子どもは、無意識に他人の心身を傷つけ、相手の心の傷を感じない人間なのですから、、、私の考は、「いじめは、子どもの健全な成長に必要な自然で無意識レベルの行為である」というものです。意識して行なわれるいじめは犯罪であり、処罰の対象であると考えています。

(5)は最近になって追加されたものです。1980年頃のいじめは犯罪ではなく、子どもが自主的に社会ルールを学習するための段階として存在していました。2007年においては、いじめという言葉が拡大解釈され、犯罪行為までも内包するようになっています。私は、この拡大解釈に反対です。

2 原因(加害者の動機)
 加害者の動機は、かなりいい加減で自分勝手なものです。主に次の3つに分類できます。子どもの自然な発達に必要なものは、どのように考えても許される動機ではありません。

(1)ただの暇つぶし、遊び、からかい
(2)まじめ、生意気な子に対する反発感情
(3)欲求不満のはけ口として


定義の解説 

(1)は、個人的な理由です。自然発生的な遊びに近く、小動物をいじめて遊ぶ行為の延長線上にあります。これは、子どもの自然な行為であり、複雑な大人社会で生活するための重要な学習になります。被害者の立場からすれば決して許されるものではありませんが、それでも、加害者・被害者ともに健全なる人間関係を模索する1つの手段として有効性を認めるべきレベルです。ただし、行き過ぎは絶対に許されません。また、いじめ以外の遊びがあれば、このタイプのいじめは発生しませんが、現実の大人社会を見る限り、私は「健全なるいじめ体験」は必要不可欠であると確信しています。

(2)は、集団感情、集団意識の芽生えとともに発生します。自分が所属するグループを違う考えや行動をする子どもに対しておこなれます。大人社会でも同じようないじめが多数見られます。例えば、政治家がつくる政党間の争いや、政党内におけるいじめです。子どもは、このような大人の姿を見ていじめを学習します。だだし、これは教師や大人によって撲滅しなければならないレベルです。絶対に許してはならないと思います。大人社会でも同じです。

(3)の原因は、大人がつくったものです。子ども自身がつくる欲求不満は限度が知れていますが、子どもを取り囲む環境がつくる圧力は、被害者を自殺に追い込むような重大犯罪を引き起こす原因になります。このレベルは、子どもに罪はありませんが、大人は完全なる罪を被らなければなりません。私は、もっと加害者を取り巻く大人達を分析し、その原因を政府やマスメディアが一般大衆に伝えなければならないと思います。現在の行政府の姿勢は、原因究明からほど遠いと感じています。

3 加害者と被害者
 加害者と被害者がはっきりと区別できるいじめは、即刻、完全撲滅です。誰が何と言おうと、許してはいけません。先生の手におえない犯罪レベルに達しているなら、外部の関係機関に依頼しなければなりません。

いじめの成立
 いじめが被害者の苦痛によってだけ成立するなら、いじめを科学的に分析したり解決したりすることはできません。なぜなら、苦痛は数値化したり、被害者以外が否定できないからです。誰かが「いじめられた」と叫んだ途端に成立してしまうからです。例えば、誰から見ても明らかに加害者である子どもが「いじめられた」と叫べば、被害者になります。「君の心の痛さは嘘だ!」、と否定できないのです。しかし、こんな馬鹿なことを認めてしまったら、現実に起こる複雑な問題は解決できないので、ある程度、型にはまったものや社会的慣例にしたがって判断しなければなりません。たくさんの事例を集積することも必要です。2007年現在、いじめを科学的に分析できない以上、個々の事例や、特殊な事例を集めることは、将来発生するであろう新しいタイプのいじめに対応するためには、必要不可欠です。

 しかし、学校現場では、加害者と被害者ははっきりしないこともたくさんあります。これは、このページの冒頭で紹介したように、子ども達の自然な活動の1つとしての「いじめ」です。このいじめは、一見するといじめに見えますが、被害者が「いじめの原因」になっているのことも多く、しばらくすると自然に解決します。このレベルのいじめは、子どもが成長と共に数が減り、やがて、豊かな人間理解へと変わります。

4 いじめから見た子どもの分類

名 称

活動内容
(1)加害者 ・いじめる子ども
(複数であることが多い)
(2)被害者 ・いじめられる子ども
(単独であることが多い)

(3)仲裁者
・重大にいじめに発展しそうになったとき、加害者と被害者の間に入り、
 いじめを制止する子ども
(単独であったり、複数であったりする)
やじうま
(4)野次馬
・いじめを見て楽しんだり、はやし立てる子ども
(野次馬という行為は、自分がいじめられないようにするための自己防衛
手段といえるが、実際は、次のターゲットになる子どもが多い)
よそもの
(5)傍観者
・見てみぬ振りをする子ども
(結果として、いじめを肯定していることになってしまう)
(大人も先生も、いじめを注意しないと肯定したことになる)

 上のように5つに分類しましたが、実際の現場では、明確に区別することは簡単ではありません。しかし、先生が介入した場合は、その行為に限定して、立場を明確にして下さい。曖昧なまま指導をしてはいけません。そして、そのいじめに限定して指導を終えてからは、『加害者が被害者である』可能性を十分に探って下さい。これを怠ると、そのいじめは解決しないばかりが、より陰湿ないじめに発展します。

5 いじめの連鎖構造
 いじめは、連鎖しています。また、どこかで始まり、どこかで終わります。下の流れ図は、3人の子どもA〜Cを表していますが、A君が始まりで、C君が終わりの子どもです。C君は、我慢するばかりですが、どこかで、何からなの形で発散したり、勉強などの良い形で欲求不満のエネルギーを昇華させたりします。そうした意味では、A君よりも、C君の方が人間として大きく成長します。だたし、あまりに酷いいじめだったり、受け止めるだけの力がないと重大な結果になる可能性があります。
※ 起点となるAは、自分が虐めていることに気づいていないことがあります。
 また、Aはが大人によって虐められていることがあります(下図)。

大人 P

大人 Q
 Aを虐めている大人が、故意に虐めているなら単純な犯罪として片付けることができます。しかし、大人PやQが虐めていることを気づいていないと、膨大な負のエネルギーの連鎖が起こり、Cが自殺まで追いやられることがあります。2007年現在、大きな社会問題となっているいじめは、このタイプです。私は、このタイプの犯罪は「いじめ」に分類できない、と思います。

6 いじめの昇華しょうか
 虐められたマイナスエネルギーをプラスに変えて発散することを、『昇華』といいます。大人になってからも同じですが、嫌なことをバネにして、良いことを頑張るエネルギーにするのです。これは大変な作業ですが、自分で切り拓くしかないのです。子ども自身が創造しなくてはなりません。それが本当の個性になるともいえます。人生は楽だけではありません。私は、自分のことを『エネルギー変換装置』だと思っていますが、あなたも優秀なエネルギー変換装置になって下さい。苦労も楽しめるようになりますよ。

エネルギー変換の例
いじめられた負のエネルギー → 正の勉強エネルギー

7 いじめの形
(1)悪口を言う
(2)持ち物を隠す、汚す、捨てる、壊す
(3)無視する
(4)仲間はずれにする
(5)叩く、蹴る、つつく
(6)冷やかす、からかう
(7)性的な嫌がらせをする
(8)金品を強要する

 いじめを発見した場合は、犯罪とそうでないものを見分けなければなりません。犯罪は犯罪であり、教育の範囲を越えています。子どもだからといって加害者をかばうことは犯罪です。教師は罪を犯してはいけません。未成年として酌量の余地があるかどうかの判断は、被害者の意向をふまえ、専門の機関に任せなければなりません。私たちは教師としての職務を全うしなければならないのです。

8 いじめが引き起こす結果
(1)身体が傷つく
(2)心が傷つく
(3)不幸な経験がトラウマとなる
(4)他人を虐める
(5)自殺する
(6)いじめられたエネルギーを自分が成長するエネルギーに変換する
 ここで注目しなければならないのは、(6)です。一般に、いじめられるのは良くない経験ですが、いじめられた負のエネルギーを正のエネルギーに変換して自分を成長させるのはとても良いことであり、むしろ、その力『昇華』を身につけることは大人になる上で絶対に欠かせません。

9 未然に防ぐ方法
(1)楽しい学校生活にする
(2)ストレスを溜めるようなことはしない
(3)合意のもとで、勉強したり校則をつくる
 上の(1)〜(3)は、教師や親の努力によって行なうものです。
 逆に、教師や親がいじめの原因になっている場合もありますので、子どもの声を謙虚に聴かなければなりません。

(4)いじめを、正のエネルギーに変換する
(5)直接原因を探り、根絶させる
 いじめの原因を探るのは、とても難しいことです。私は、ここで『直接』原因という言葉を使いましたが、それでも原因を探ることはかなり困難です。もし、加害者と被害者の意見が一致しているなら、それを直接原因として、根絶させることは絶対に必要であり、見逃してはいけません(いじめの連鎖構造)。

解決のための前提条件
(1)いじめがあることを認識すること
(2)仕返しの恐怖の怯える必要がないこと
(3)子ども、教師、保護者、全員一致の体勢があること。

10 解決例:ばい菌扱いされるA子
(1)ばい菌扱いするような行為が見られたら、その場で徹底的に指導する。
 指導例「B君、どうして@@と言ったんだ。理由はあるのか。あるなら言ってみなさい。ないなら絶対に言ってはいけません。そして、今君が言ったことに対して、Aさんに謝りなさい」「えっ、Aさんが謝らなくて言いと言っているって。なるほど、AさんとB君はそれで良いかも知れないけれど、先生は良くない。先生はこの学級の担任として、誰かが誰かをばい菌扱いするのは絶対に許さない。何らかの正当な理由があったとしても、先生は許しません。校長先生が許したとしても、先生は許しません。B君! 先生が一生懸命つくろうとしている学級で、誰かをばい菌扱いしたことに対して、先生に謝りなさい。それが嫌なら、先生は、今、君が言った一言を、他の学級の友達全員が認めるかどうか、全員を集めて聴きます。今からすぐに集めて聞きます。さあ、Aさんに謝って終わりにするか、先生に謝るか、あるいは、今から全員を集めて今あったことを説明して皆の意見を聞くか、決めなさい」「決めれないなら、それは君が誤摩化そうとしているのだから、A子に謝りなさい。今回のことは、それだけで、1つの区切りになります」「はい、B君が謝ったので、これで1つ区切りができました。Aさんは、今のことについては、これで良いですか。」「良いなら、B君、ちょっとこっちに来なさい」

 「B君。Aさんの前では言えなかったけれど、もし、何か言いたいことがあるなら言ってごらん。先生は、何も叱ったりしません。君には君の考えがあると思うから、、、」

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(C) 2007 Fukuchi Takahiro