このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第6.3章 校 則

1 人類の法則『学校生活=校則』を学ぶ

1 校則とは何か
 ある学校の規則を『校則』といいます。校則は、それを決めた学校だけに通用するルールなので、隣の学校と違います。「うちの学校は厳しいからなあ」という声は、どこの学校の生徒からも聞かれます。このルールは、以下のように、文章になったもの(生徒手帳に書かれているもの)と文章になっていないものの2つに分けられます。

2 生徒手帳に書かれている校則
 文章になっているルールは明確で、問題ないように思いますが、現場では微妙な問題が毎日のように起きます。例えば、『中学生らしい髪型』と書いても、その基準は人によって違います。そこで、『女子の髪は肩より長くなったら縛ること』としますが、肩までの長さの生徒はたくさんいます。さらに、髪の縛り方もいろいろありますが、詳しく生徒手帳に印刷することはありません。どんなに詳しく書こうとしても、できないからです。同じような例として、別ページ『登下校は、白い靴をはくこと』では、新製品が発売されるたびに議論し、生徒と攻防をくり返していることを紹介しています。

3 文章になっていない校則
 文章になっていない校則を『常識(コモン・センス)』といいます。上の例では、女子生徒の髪の縛り方は明記されていませんが、ゴムの色、縛り方、縛る位置などが決まっています。このように、文章になっていなくても全員が守るルールを『常識』といいます。「それは校則ではないだろう!」と噛みついてくる者がいる場合は、文章化されることがありますが、どんなに詳細に記述しても無理があることは、上ので述べた通りです。つまり、各学校にはそれぞれ『学校の常識』があり、校則と同じ力を持ちます。

4 校則を使って生徒に教えること
 先生は、人類の法則の1つである『学校生活=校則』を教えます。社会生活=ルールであること、2人以上集ればルールができることを体験させ、理解させます。ルールがなければ、会話もジャンケンもできません。日本語はとても難しいルールがあり、このHPを読むためにはかなりの難しい日本語のルールを知っている必要があります。ジャンケンには『グー』『チョキ』『パー』の3つがあり、三つ巴の関係になっています。このルールを変えることは自由ですが、変えるためには参加者全員の同意が必要です。

5 校則は全員が守らなければ、学校が崩壊する
 ジャンケンも日本語も校則も、全員が100%守らなければ成立しない、崩壊する、という点では同じです。大袈裟なように聞こえますが、本当です。例えば、A君だけ授業に10分遅刻しても出席扱いとする、ということを認めたらどうなるでしょう。次のような問題点が噴出し、学校は崩壊します。なぜ、A君だけ良いのか! 15分遅刻でも良いのか! 終業1分前に教室に入り、着席しなくても出席扱いになるのか! したがって、学校は厳格なルールを作り、それを全員にあてはめます。曖昧な点ができたら速やかに改正します。元気な中学生を相手にしている先生は、毎日新しい問題点を見つけ、小さなほころびを直したり解決したりする必要があるのです。

6 校則をめぐる攻防は永遠に続く
 先生は校則を守らせようとし、生徒は破ろうとします。この世に学校がある限り、永遠に続くでしょう。続く理由は2つです。1つは、学校はたくさんの生徒が集った集団ですが、彼らは大人と同じように自己中心的です。1人ひとり違う個性を持ち、違う欲望を持っています。全員が100%同じである可能性は0です。もう1つの理由は、生徒どうしで校則が作れないからです。したがって、学校の先生は、生徒自身で『自分が所属する社会のルール』を作れるように教育します。

7 常識だけで生活できる社会をつくる
 生徒1人ひとりが独立し、互いを尊重しあえる学校なら、常識だけで十分です。すべての校則は、文章になっていません。それが理想です。私は理想を目指して、文章になっている校則を減らすように努力しています。しかし、学校が荒れる危険(大きな問題を抱えた生徒の転入など)は日常的にあるので、生徒手帳に書かれた校則は必要です。部外者から見ても明らかだからです。したがって、生徒手帳に『中学生らしい学校生活をすること』の1文だけを明記し、その他は全て『学校の常識』として、在校生全員と全職員が守っていることが理想です。部外者は、自分だけの都合で社会(学校)を壊す権利はありません。なぜなら、その学校で生活している人全員の合意によって、校則が作られ守られているからです。自分の欲望を主張をすることはできますが、それは全員の合意のもとに認められるものです。

note
 常識は文章になってないルールです。ある社会だけに通用するもの、他の社会にでは通用しないルールです。例えば、日本人の常識では、食事のとき茶碗を持ちますが、韓国では持ちません。東南アジアの国を旅する時は、子どもの頭を撫でてはいけません。あなたの行為を見ていた人から袋叩きにされ、追い出させるでしょう。それが常識です。

2011年1月5日

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