このページは『Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第2章 How to 授業

11 黒板の使い方

─ 教室の中心に位置する板 ─

2007 june 5

 教室の正面にある深緑色の板を「黒板」といいます。黒板には、炭酸カルシウムを主成分とした「チョーク」を使って字や図表、絵を書いたり、「黒板消し」を使って何回も書き直すことができます。

 中学校の授業において、黒板は非常に重要な位置にあるだけでなく、授業内容の面からも必要不可欠なものです。

・最近の黒板は、磁石を張り付けることが出来ます。
・また、黒板に字を書くことを板書と言います。


1 板書する内容
(1)本時の題名
(2)要点となる文や語句
(3)要点を解説するもの
(4)図
(5)表やグラフ


2 板書する量
 理想は、1時間で黒板いっぱいになることですが、私は理科室で授業がすることが多いので、教室の場合は、2回ぐらい書きます。
→理科室での黒板の使い方

 なぜ、通常の2倍になるかといいますと、教室での授業は、理科室で行なった個別の実験や観察をまとめる活動になるからです。つまり、「まとめ」や「復習」として、教科書の内容を多角的にとめることが多くなるからです。

 他教科の授業で黒板に2回書くと、「速すぎる」という苦情の声が聞かれますが、私の授業ではほとんど聞かれません。それは、新しい視点を学習するわけですが、要点となるポイントが全て既習事項だからです。また、授業の初めに「今日は黒板に2回書くぞ!」と宣言することで、他の授業と同じペースで書いていては間に合わないことを意識させることも必要絶対条件です。

3 文字の書き方
 私は文字が下手です。生徒からも「先生、もっと上手に書いて下さい」と注意されますが、めげずに下手な字を書きます。上手いに越したことはありませんが、上手ければ良いというものではないからです。私は字が下手でも、たくさんの点に注意して文字を書いています。

文字を書く時の注意点
(1)大きく、はっきりと書く

 できるだけ大きく書くようにします。とても重要で、他に書くことが少ない場合は、黒板の左端から右端まで1行で書くこともあります。生徒は面喰らっていますが、どんなに難しい一文であっても、そこまで巨大に書かれるとインパクトも巨大になり、生徒の心に飛び込んでいきます。

(2)重要語句は空欄にしておく
 そして、重要語句は空欄、その部分に破線を書いて、しばらく時間をとります。その重要語句が簡単な時は私が生徒を指名して応えさせ、難しい時は挙手を求めます。そして、正解を確認してから色チョークで記入します。こうすることで、生徒は重要語句を丸写しすることなく、自分で考えてから書くようになります。

(3)平ぺったく、細長く書く
 書くスペースが少ない時は、文字の形を一定の法則に従って変型させます。つまり、上下の幅が狭い時は、横に引き伸ばして「平ぺったい文字」、左右の幅が狭い時は、縦に引き伸ばして「細長い文字」にします。実際には、横に引き伸ばすことが多く、1時間の授業中で1、2箇所はそのように書きます。新鮮な形なので、生徒の注意をひく効果があります。このように書くのは、最後の時間帯になるので、ちょっとした単純な刺激になります。

(4)重要語句をあえて『乱れ文字』で書く
 読めないほど乱れた字で書きます。その字は教科書に太字である文字なので、「自分で調べなさい」といいます。画数が多い複雑な文字の場合は、効果的です。このようにすると、何人かの生徒は、自主的にアンダーラインをひいたり、前後の文章を読みます。

(5)色チョークを使う
 
(別ページ『色チョークの使い方』をご覧下さい)

(6)音と立てて書く
 カンカンカン、とんとんとンとンとンと音を立てて書きます。リズミカルな音で、緩慢にノートを写している生徒に刺激を与えます。


4 ルビを打つ
 難しい漢字には、必ずルビ(読みがな)を書きます。その色は、青や緑や赤など目立たない色を使います。


5 消すタイミング
 黒板に2回書く場合、理論的には、授業は「前半」と「後半」に分かれます。したがって、途中で全て消すか、あるいは、黒板を左右に2分割して消すのが効率的といえます。しかし、私は、常に徐々に消ていきます。黒板にはたくさんの内容を書きますが、重要なことは消さずに残し、それに付属することをさっさと消していきます。遅い生徒は、付属する部分を書き損ねることがありますが、気にしません。気にしないのは、生徒も私もです。

 なぜなら、授業中、私はたくさん話をしますが、生徒は私の言葉の99%を聞き流しています。私が普通教室で授業をする場合、教科書に書かれていない興味深い話や、とても重要な内容、あるいは大学で学ぶような高度な内容を話しますが、生徒はほどんと聞き流します。したがって、私が黒板に書いたからといって、全てを書き写す必要はないのです。

 先生が板書したことが全てではない、ということを理解させる上でも、私は重要ポイント以外はさっさと消します。重要語句にまつわる内容をどのように捉え、理解し、イメージするかは、その生徒の経験や個性による部分が多いと考えるからです。

 重要なこと以外を消し去ることには、もう1つ意味があります。それは、次の学習内容との関連を明らかにするというねらいです。一般に、1時間で黒板に1回だけ書く場合、授業のまとめとして『板書した内容を初めから振返る』という手法がありますが、それに相当します。つまり、重要語句だけが残されているので、生徒は、それしか見ることができません。つまり、授業の要点が一目瞭然になっているのです。この手法は、1時間に1回だけにも応用できるので、是非ご利用下さい。かなり効果的です。

 油絵をかじった人なら分かると思いますが、油絵を書く時は、筆で絵の具を乗せるばかりでは深みがでません。ときには、ペインティングナイフで絵の具を剥ぎ取ることが必要です。そうすることで、下にあった色が出てきたり、複雑な表現ができます。つまり、油絵の初心者と中級者の違いは、絵の具の拭き取ることができるかによって決まり、上級者は「書くこと」と「消すこと」を同等に扱います。

 書いたものをいつまでも残しておかない
 後から復習したいもの以外は、積極的に消します。枝葉末節は消し、幹は残しておくのです。そうすることで、生徒は授業で大切なことだけを繰り返し黒板で見ることになります。


6 その他の黒板の使い方
(1)授業前に用意したものを、磁石で黒板に付着させる。
 ・複雑な図
 ・詳細な写真
 ・重要ポイントまとめた図表
 ・学級全体で確認する小テスト
(2)セロハンテープで、実物を黒板に添付する。
(3)チョーク受けや上部の枠に、実物を置く。

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(C) 2007 Fukuchi Takahiro