このページは『Mr. takaによる若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第2章 How to 授業

15 五月蝿いうるさい生徒を活かす

─大きなエネルギーを皆のために使おう─

1 活力にあふれている生徒
 五月蝿い生徒は、エネルギーがあり余っています。おしゃべりをして授業の邪魔をしたり、友達にに話しかけて迷惑をかけたりするのは、エネルギーがあるからです。この大きなエネルギーを生産的な方向に使えば、その子が授業の中心になる可能性が出てきます。先生の仕事は、このエネルギーを方法転換し、授業のために役立てる工夫をすることです。五月蝿い生徒がもっている、大きな可能性を引き出して下さい。

2 五月蝿い生徒の分類
 エネルギーが余っている生徒は、下のA〜Cに3つに分けられます。このうち、Aは授業を引っぱる原動力になる可能性が高く、Bは先生の工夫次第で授業の活力になります。しかし、Cは専門の先生の治療に任せなければなりません。ただし、実際の子どもは簡単に分類できるものではありませんので、1人ひとりの性格に応じて、先生がよく工夫し努力することが大切です。

A 友達に対して目立ちたい生徒
 学習に対する潜在能力が高い場合が多いので、先生に代わって授業をしてもらうのが1番です。指名すれば、喜んで黒板の前に出てくるでしょう。そして、友達の長所を引き出したり、ギャグを飛ばしながらワンポイント授業をするでしょう。先生は、その生徒の手綱を引いてください。

 また、学力が低い生徒でも、自分の個性を十分に主張し、授業に笑いと健全な脱線を付け加えてくれます。ここでも、先生は野球の監督のようにタイミングよく選手交代をはかって下さい。素晴らしい授業が期待できます。

B 先生にかまって欲しい生徒
 周囲が見えない、自己中心的な生徒です。まるで自分と先生だけで授業をしているように、先生に話しかけます。中学1年生なら、「はい! 黒板消し係@@君、消しにきて下さい」と言えば、嬉々として黒板を消しにきたりします。このタイプの生徒の性格は、他の生徒も理解しているので、先生が授業で行き詰まったときに、「はい! @@さん」と言って指名すると良いでしょう。「えー」と言いながらも、大きな声で何か反応してくれます。ただし、周囲が見えない生徒が1クラスに3、4人いる場合は、他の手段が必要になります。

 さらに、とても幼稚な場合は、他の生徒の反面教師としての役立ちます。つまり、「あそこまでは自己中心になりたくない」「自立したい」「雰囲気を感じ取れるようになりたい」と周りの子どもが思う存在になります。ただし、先生は、この事実を言葉にして言ってはいけません。静かに、その子自身と周りが成長していくのを見守って下さい。

C 神経系に問題がある生徒
 専門の医師から、医学的な診断を受けている生徒です。一斉授業を1人の先生で行うのは困難なので、保護者を含めた援助体制を整えてください。授業妨害となり、学級の生徒や保護者からクレームが出て居場所がなくなる事態にならないよう、最善の防止策を検討してください。
→ 関連ページ『ADHDの生徒』『アスペルガー症候群』

3 エネルギーを皆のために使おう!

(1) 先生のように授業をさせる
 50分全てではありません。先生が範囲を区切って、その中で授業をさせます。他の生徒は、キラキラした目で授業に参加することでしょう。さらに、授業内容に対して、質問させるように促すと、かなり高度な授業になります。もちろん、それを誘導する先生にも高い技術が要求されます。

(2) 黒板を使って、ワンポイント説明を行なわせる
 先生が説明しても難しい内容の場合は、この手法はとても有効です。私は、必ず難しい内容はこの方法を使います。例えば、天文分野で、地動説における地軸の傾き

(3) 大きな声で、教科書を読んでもらう
 数ページにわたって教科書を続けて読む場合は、とくに有効です。はじめに、教科書を@ページから@ページまで読むことを知らせ、読んでくれる生徒を募集します。5人以上の希望者が出たら、ローテンションの順を決めます。そして、ローテンション順に読ませます。かなりスムーズに自主的に楽しく読みすすめられます。希望者の中に、読む力が弱い生徒がいる場合は、範囲が短くなるようにさり気なく先生が「はい、交代!」とローテンションの指示を出します。その呼吸については、他の生徒もよく心得たもので心配する必要はありません。このようにして、長文を5人で読む場合は、2〜3回転させると理想的です。

(4) 誰も答えられないときに、答えてもらう
 「では、困った時の@@さん! 今のところ何だと思いますか。誰も答えがわからないので、ヒントになるものをお願いします。全く違っていても構わないので、今のところの途中の答えをお願いします」、あるいは、「では、今、A君とお喋りをしていたB君、A君が君に話していた考えを皆に紹介して下さい。君の考えじゃなくて、A君の考えですよ」などと言って、切り返しができる生徒を指名します。

(5) 授業が上手く進まない時に、ギャグを言ってもらう
 授業がざわついてしまった時、人気者の@さんに、大型ギャグで締めくくってもらうのも悪くありません。@さんがオオトリを勤めた後は、気持ちが切り替わって次に内容に進むことができるでしょう。

(6) その子が活動するタイミングや『型』を作っておく
 例えば、「@@博士のワンポイント・レッスン」と先生が宣言すると、その子が、自主的に席を立って黒板で説明を始めるというものです。説明できなくても、その子は場を盛り上げてくれると思いますので、先生は「今日の@@博士はお疲れのようでしたね」と言って、ホローしましょう。

4 うるさい、煩い、五月蝿いではなくて・・・
 「うるさい生徒」と思っていると、逆に、生徒から「うるさい先生」と言われるようなります。この悪循環を断ち切るのは先生の仕事です。そもそも、はじめに「うるさい」と感じたのは先生ではありませんか? もしそうなら、十分に反省してください。エネルギー溢れる子どもの個性が光り輝くように、さまざまな工夫を試して下さい。失敗しても大丈夫です。大声で「うるさい!」と怒鳴り続ける先生より、失敗授業でも工夫したり努力したりしている先生が方が魅力的です。

2007年12月28日

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