このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第6章 社会性と育む自然な争い

1 ニワトリの『つつきの順位』

1 ニワトリの『つつきの順位』
 1913年、エッペ(ノルウェー)はニワトリを研究し、集団生活するニワトリには直線的な社会的順位があることを発表しました。簡単な例をあげると、小さな庭でニワトリ10羽を飼う場合、10羽は互いにつつき合って順位を決めます。餌が与えられると、1位のニワトリから順に餌を食べるので、最下位まで餌がまわらずに死ぬこともあります。この順位は、一度決まるとほとんど変わりません。一時的に別々に飼育されていても、また一緒になると混乱することなく前の順位で行動します。

2 狭い庭によるストレス
 庭が狭い場合は、ストレスが生じ、順位の高いニワトリが低いニワトリをつつきます。ニワトリ4羽の場合、1位はすべてを、2位は3位と4位を、3位は4位をつつきます。その結果、最下位のニワトリはぼろぼろになり、死ぬこともあります。それでもストレスが解消されない場合は、3位のニワトリがつつかれます。

3 新しいニワトリを入れると・・・
 新しいニワトリ1羽を入れると、全てのニワトリとつつき合い、順位を決めます。

4 ニホンザルやネズミの社会的順位
 ニホンザルやネズミは、ニワトリとは違う独裁的ボスを中心とした順位をつくります。1位は絶対的な地位にありますが、その他の順位は複雑な関係にあります。順位を決める方法は、形式的な場合もありますが、最終的にはニワトリの『つつき』と同じような『むき出しの攻撃』によって決められます。

5 中学生の学校社会における順位(役割)
 中学生の学校社会における順位は複雑です。学校ではいろいろな活動をするので、それぞれの内容によって力関係や順位が変わるからです。順位を決める方法は、身体への攻撃ではなく、議論や話し合いです。言葉による順位決めは、人間固有の方法であるといえるでしょう。このようにして決められたものは、本能にしがって決める動物行動学的な順位と区別し、『社会的役割』とするべきでしょう。

6 動物的な順位を決めたがる男子
 ごく一部の男子生徒は、殴る蹴るなどのあからさまな身体的攻撃によって順位を決めようとします。とくによく闘争が見られるのは、複数の小学校から新入生が集まった中学1年生の時期です。放課ごとに集まり、お互いにつかみあって遊びます。子犬のじゃれあいようですが、2人とも転んで廊下を転げまわることもよく見られます。興奮して自己コントロールができなくなり、取っ組み合いの喧嘩になることもしばしばです。このようにして順位を決めるのは主に男子ですが、まれに、女子も同じようにして順位を決めることがあります。

7 身体への攻撃を水面下にしないために
 先生は、興奮しすぎないように細心の注意を払って見守ってください。初めから完全にストップさせる先生もいますが、私は賛成しません。なぜなら、動物的な順位決めは人間の本能の1つだからです。本能を必要以上に抑圧することは危険です。ゆがんだ形で噴出したり、隠れた攻撃=陰湿ないじめに変型したりするからです。理想はスポーツで競い合うことですが、現実は違います。最近の『いじめ』が大人の目を盗むようにして行われている現実をみてください。正々堂々としたスポーツで競うことができない生徒がいるのです。また、関連ページ『合唱コンクールは相対評価で』もご覧ください。

8 暴力をはたらく全ての大人は中学生だった
 暴力をはたらく全ての大人は、中学生だった時期があります。大人になっても暴力をふるう原因は、家庭、学校、地域社会、その他全ての社会において適切な教育が行われなかったからです(先天性障害をのぞく)。中学校の先生は、生徒をしっかり見て、今の地点から教育をはじめましょう。ある一定のルールで、みんなが見ている場所で、身体的力を競い合うことが必要な生徒がいます。それは教育の途上、通過地点として必要です。暴力のない社会をつくるため、適切な判断と教育を行ってください。がんばれ先生!

2011年2月25日

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