このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。 |
第5章 笑顔の生活指導
3 美しい身と書いて躾しつけ
1 美しい身体にする
私は、美しいものが好きです。汚いものが嫌いです。これは、「汚れたくない」「腐ったものを食べて死にたくない」「子孫を残すために美しいもの(強いもの)を選びたい」という生物の本能です。すべての人がもっている欲望です。2 美しい身体の3段階
「美しい身」と書いて「躾」といいます。この美しさは3つの段階があり、順にステップアップしていきます。その段階は、(1)生物として、(2)知性をもつヒトとして、(3)社会性をもつ人間として、の身体です。
第1段階:生物として
(1) 太陽とともに起きる
(2) 朝が1番さわやかな気分で、希望に満ち溢れている
(3) 清潔な服を着たい、と願う
(4) 朝食が美味しく食べられる
(5) 良い姿勢で歩き、走ることができる
(6) 昼寝したり、運動したりすると元気になる
(7) 身体を清潔にすること(風呂)が好き
(8) 同性より異性に興味を持つ
(9) 太陽とともに寝るこの段階は、小学校入学前に家庭で行われます。躾が不十分な場合、その後の発育に悪影響が出ます。中学生になっても不完全な場合、家庭での協力なしでは不可能なので、先生は抱え込まないようにましょう。生徒を指導するより、保護者を指導することに重点をおきます。具体的には、家庭訪問や、まめに電話をすることが大切です。
保護者の環境を改善できない場合、教師がどれだけ頑張っても1%程度しか改善しません。それほど根源的なものなので、非常に永い目で指導しましょう。「その子が成人してから、その子自身が10年かけて修正するための下地を作る」ぐらいに構えます。
ここでは『我慢する』という自制心が重要なポイントです。眠たいからといって布団から出てこなかったり、美味しいからといって食べ過ぎたり、面倒臭いからといって何日も同じ下着を着てはいけないのです。生物として美しくあるためには、本能や自分の欲求を抑制する必要があります。野生動物は、自己の欲求を抑えながら生きてます。本能だけで生きていると思ったら大間違いです。
この第1段階の躾ができていない人は、次の段階へ進むのは難しくなります。自己抑制力が不十分だからです。自分で自分をシツケ、欲望をコントロールする力が必要です。親や第3者から、「起きなさい」「着替えなさい」「食べなさい」「風呂に入りなさい」と言われているような子ども(大人も含む)は、自律できていません。他人に依存し、他人に迷惑をかけながら『自分のわがままの世界』に生きていることに気づいていません。
↓第2段階:知性をもつヒトとして
(1) いつもニコニコ笑顔が良く似合う
(2) 友だちと遊ぶことが楽しい
(3) 1人で遊んでいても楽しい
(4) 知らないことを知ることが楽しい
(5) おしゃれが上手で、異性にもてる
(6) 食事は腹八分め
(7) 遊びたくても早寝、眠たくても早起きこの段階は、人間関係の中で躾るようにします。学校の教師と保護者が協力しながら躾ける段階です。学校では、先生がその手本です。笑顔が似合う、良く遊び、良く学び、自制心に溢れた先生になって下さい。
また、ここに分類される躾は大人になってから、とても重要になります。食べたいから食べ、眠いから寝て、異性がいるから遊び、弱い者がいるから金をもらう。そのような人間は美しくありません。躾がなっていません。自分で自分を躾けて下さい。死ぬまで美しくありたいものです。
↓第3段階:社会性をもつ人間として
(1) 朝、人と出会ったら「おはようございます」という
(2) 箸で食事をする(韓国や日本)
(3) 食事は両手ではなく、右手だけでする(インドやシリア)
(4) 米を入れた器は、食台の上に置いたまま食べる(韓国)
(5) 米を入れた器は、左手で持って食べる(日本)この躾は、大人が子どもに教えることによってのみ修得できる美しさです。作法(マナー)と言われることもあります。繰り返しの訓練が必要で、しかも、強い自制心がなければ達成できません。
3 躾の実践例:自分の靴を下駄箱に入れる
中学生になっても「躾け」なければならない事柄はたくさんあります。私は下駄箱先生(実践例1、2007年度)をしていますが、毎朝、毎日注意しても、自分の場所に靴を入れられない子がいます。その子には、「勉強はできなく良いから、靴を自分の場所に入られるようるしなさい」と躾けています。そして、教室まで呼びに行き、自分で直させます。かなり面倒な作業ですが、学校の平和を得るためにも重要であると感じています。
現実の問題として、高校入試をはじめとする様々な試験会場において、指定の靴の置き場に入れられない生徒は不合格でしょう。あなたが試験官ならどうしますか。私なら不合格です。迷いは一切ありません。
常習の生徒から、「靴ぐらい良いじゃないか」「隣の場所が空いているから」と言われた時は、「靴入れぐらいなら、君にもできると思うよ」「空いていると主張するなら、どんなことも理由をつけて君の思い通りになるね」、と答えることもできますが、実際の現場では、「ダメ」としか言いません。それが躾の基本です。
理由はあっても言う必要はありません。美しさに理由はないのです。美しいものは美しい。ダメなものはダメ。私は美しいものが好き。美しい下駄箱が好き。汚い下駄箱は嫌い。それだけです。理由はありません。理由はあっても、言えば言うほど嘘のように聞こえ、言葉の端を突かれるのがオチだからです。
2007 may 28
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