このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第5章 生活指導

30 手ぶらで登校する生徒

1 手ぶらで登校する生徒
 『手ぶら登校』とは、学校で必要な道具を持たずに登校することです。手ぶら登校する生徒は、教科書、ノート、筆記用具を持ってきません。昼食の弁当すら持って来ない生徒もいます。ぺしゃんこの鞄の中に不要物を入れてきても、それは手ぶら登校と同じです。では次に、手ぶら登校をする生徒の背景とその対応について考察してみましょう。

2 教科書、ノート、筆記用具を持ってこない生徒
 教科書やノートが重いから学校に置いく、いわゆる『おきべん生徒』なら可愛いものです。家庭での復習はできなくても、授業に必要な教材はあるからです。おきべん生徒は、忘れ物をしたくない、忘れ物で叱られたくない、減点されたくない、という気持をもっています。授業に対する意欲があります。しかし、手ぶら生徒の中には「家にも学校にもない」「捨てた」いう生徒がいます。彼らには、学校で学習するための道具と心がありません。近くの友達や先生が教科書を見せ、筆記用具を貸し、先生が特別にプリントを用意しても、「そんなものいらん」と言ったり、机に準備された道具を払い落としたりします。

3 他人が学習する自由は奪えない
 彼らにとって、他人が道具を貸してくれても、それは道具がそろっただけです。彼らから見れば、それは大きなお世話です。なぜなら、みんなと違う目的、学習以外の目的を持っているからです。このような目的は、存在そのものが授業妨害です。「迷惑だ!」と、クラスにいる全員(生徒、教師)が同じ思いを抱きます。これは客観的事実です。全員が『みんなで授業をしよう』『友達の学習をする自由を奪わないようにしよう』とすることは、授業以前に準備するものです。

4 弁当を持って来ない生徒
 弁当を持って来ない生徒には、いろいろな理由があります。家庭の経済や複雑な環境によって、準備できない場合もあります(関連ページ『弁当を持って来れない生徒』)。しかし、私がここで問題にしたいのは、わざと弁当を持ってこない生徒です。彼らは他人(もはや友達とはいえない)から脅迫的に弁当の一部を奪ったり、先生に昼食を準備させようと考えています。これは、断じて許される許される行為ではありません。想像してください。自分の弁当の1番美味しいおかずを「コレいい?」と言って、つまんでいく他人がいることを。学校で最も楽しい時間の1つであるランチ・タイムを『恐怖の時間』にすることは、絶対に許されません。

5 心と体と道具が準備できるように援助しよう
 中学校の先生は、生徒自身が学習に必要な『心と体を道具』を準備できるように援助しましょう。ただし、これは幼稚園で修得すべき項目です。先生は保護者と協力し、つまずいた原因を探し、専門機関に相談してください。ここで1つはっきりしていることは、『心と体と道具』はどれも同じように大切なもので、互いに切り離すことができないことです。先生は無理することなく、学校での学習準備ができるように援助してください。食べるもの、着るものの準備です。これは中学校内部ではなく、家庭で行うことです。家庭で準備できるまで、家庭の協力がなければ登校できない、ということです。先生は、保護者と十分に連絡をとるようにしましょう。

6 筆箱を準備させた私の実践例

 私が学級担任をしていたA君(3年生)は、1ヵ月に数回登校する生徒でした。学校に来る時は、水で髪の毛を立ててくるようなつっぱり生徒でしたが、放任家庭なのでしょう。制服はいつも汚れ、タバコの臭いが染みついていました。彼は勉強ができませんでしたが、明るい性格なので人気がありました。授業中も邪魔せず、静かにしていました。ぼーっとしたり、寝たり、たまに興味が出ると勉強していました。

 教科書や参考書などは『おきべん』、プリントや紙は先生が準備しますが、鉛筆がありません。友達に借りることになります。A君はおおらかで元気な性格ですが、自分から「筆記用具を貸して!」という勇気はありせん。勉強に自信がないからでしょう。結局、私が近くの友達に声をかけるのですが、ある日、私は「これではいけない」と思い、A君のお母さんに電話しました。

 「筆箱、シャープペンシル2本、消しゴム、赤ペンを買ってあげてください」

 翌日、A君はその筆記用具を持ってきました。筆箱のジッパーを開けると、私がお願いしたものが入っていました。A君は表情を変えませんでしたが、それを使って毎日勉強するようになりました。1週間ほどしか続きませんでしたが、それでも連日登校し、ほとんど分らない授業を受けたのです。A君は、私のことは忘れても、お毋さんが中学3年に買ってくれた筆箱は覚えている、のではないかと思います。私は20年以上経った今でも、その筆箱を開けた瞬間の感動を覚えています。

7 資料:幼稚園教育要領 
幼稚園教育要領
人間関係
 他の人々と親しみ,支え合って生活するために,自立心を育て,人とかかわる力を養う。

1 ねらい
 (1) 幼稚園生活を楽しみ,自分の力で行動することの充実感を味わう。
 (2) 進んで身近な人とかかわり,愛情や信頼感をもつ。
 (3) 社会生活における望ましい習慣や態度を身に付ける。
2 内 容
 (1) 先生や友達と共に過ごすことの喜びを味わう。

 (2) 自分で考え,自分で行動する。
 (3) 自分でできることは自分でする。

2011年1月14日

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