このページは『Mr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン』です。

第8章 学校教育を超えた少年犯罪

13 生徒に脅迫されたら

1 生徒からの脅迫
 生徒からの脅迫は、先生に詰め寄り「お前、叩くぞ!」「殴るぞ!」「そんなこと言っとると蹴られるぞ!」「ぶっ殺すぞ!」など、身体を傷つけることを予告することです。「お前が言うことを聞かないならガラスを割るぞ!」「学校をつぶすぞ」などの破壊、「秘密をブログに書くぞ!」と名誉侵害を予告することも脅迫です。これは『脅迫の罪』として、刑法で裁かれる犯罪です。

2 生徒が先生を脅迫する理由 
 脅迫する生徒の目的は、暴力的な圧力によって自分の欲望を満たすことです。「なんでボタンをシメなかんのだって!」「隣の教室に入って、どこが悪いんだ」「誰がそんな校則決めたんだ」「そんな常識知らんて」「今さら言っても遅いだろう」「お前の言い方が悪いから俺が切れたんだろう」など、自分勝手な考えを強く主張し、校則や常識にもとづいたあなた指導を拒否したり正当性を主張したりすることです。

3 脅迫から逃げる勇気
 先生は、毅然とした態度で臨みましょう。「その言葉は絶対に許されない!」「殴ると言った言葉を撤回せよ!」と指導しましょう。しかし、自分よりも身体が大きな生徒、殺気に満ちた生徒に詰め寄られた場合は、自分の身体を大切にしましょう。尋常でない脅迫に対して、無理に立ち向かうことはやめましょう。殴られたり蹴られたりする前に、逃げることも考えてください。私は、本当に逃げたことがあります。その時の生徒は、「お前、逃げるのか!」と言って私を追い掛け、職員室玄関の植木鉢を2つ投げましたが、興奮しているので、植木鉢は思いもよらないところへ飛んでいきました。それから玄関を出たところの階段で、生徒は足を踏み外して走れなくなりました。足をひどく捻ったのです。先生は状況に応じて逃げてください。異常に興奮している生徒から暴行を受け、身体が傷つき、生徒もそれ相応の処罰を受けるよりベターです。

4 正当防衛は、最後の非常手段
 生徒から脅迫を受けた時点で、先生は正当防衛を行うこともできます。しかし、私は賛成しません。教師の仕事は教育です。どれほど適切な正当防衛であっても、生徒は『先生から暴力を受けた』と考えます。「先生、教えてくれてありがとう」と思うような生徒は、初めから先生を脅迫したり暴行したりしません。したがって、正当防衛を考えるレベルに達したら、病院や警察など専門の機関にバトンタッチするべきです。

5 日常的に脅迫している生徒
 先生を脅迫する生徒は、友達との遊びの中で同じような言葉を使っています。そして、自分より立場の弱い他人を殴ったり蹴ったりしています。学校生活の中で、生徒が『脅迫』している現場を見つけたら、ただちに「その言葉はいけない」と厳しく指導してください。本人や友達(あるいは他人)は「遊び」のつもりでも、一般社会では通用しません。脅迫が癖になっている生徒は、義務教育を終えるまでに完全に直す必要があります。

6 大人に対する不信感
 暴言を超え、人を脅迫するレベルにある生徒の多くは、親や先生を含めた全ての大人に不信感をもっています。すべての規則に対して、無意識に反発しようとします。子どもに暴言を言われたことがない親であっても、近い将来、詰め寄られることになるでしょう。警察に補導された経験が何度かあり、「警察なんか怖くない」と思っている生徒も多くいます。先生が脅迫されたら、ただちに保護者へ連絡してください。そして、先生と保護者と生徒が話し合う場をもうけましょう。

7 脅迫してしまった生徒の話を聞こう!
 話し合いの目的は、生徒が幸せな生活をすることです。その目的を達成するための第1目標は『先生に謝罪すること』、第2目標は『先生と保護者が一緒に、生徒の言い分を聞くこと』です。生徒は脅迫という罪を犯しましたが、罪を犯さなければいけなかった背景があるはずです。少なくとも30分は黙って聞きましょう。説教、大人の意見や言い分をはさんではいけません。もし、生徒からの話を数回に分けて数時間にわたって聞くことができるなら、その生徒の大人に対する不信感は劇的に減少するでしょう。次のステップ、暴力に進む前に最大限の努力をしましょう。このページで紹介した脅迫は、別ページ『対教師暴力には勇気をもって!』へ進む前段階です。

2011年1月27日

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