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生物の分類 生物(生命)とは何か? あなたはこれが永遠に答えることができない問いであることを知っていましたか。任意の基準で分類することはできても、生物(生命)がで何あるかは規定できません。しかし、これから生物学の世界に踏み込もうとする中学生のために生物の範囲を規定すること、また、自然科学の新発見によって今も揺れ動いている分類基準を簡素化し、中学生とって分かりやすいものにすることは重要です。私は、表1のように考えました。これまでの分類基準と大きく違う点は、単細胞生物(プランクトンではない)と菌類・細菌類をその他にしたことです。いい加減な感じがしますが、これは次のような配慮の結果です。1:原核生物(DNAを持たない生物)をその他とする、2:原生生物(単体、群体)をその他とする、3:菌界(従属栄養の多細胞、真核生物)をその他とする。とくに、3、従来の学習指導要領では菌界を植物に分類していましたが、世界的な流れから日本だけ完全に取り残されているのが現状です。私の1999年6月の実践のように生物を動物と植物に2分し、菌類・細菌類を植物のなかまに入れるのは不適切です。
表1 taka先生による中学生のための生物の分類 分類名 細胞数 生態系での役割 生物例、備考 動 物 多細胞 消費者 ・脊椎動物(クジラ、カエル)、無脊椎動物(タコ、昆虫)、ミミズ、ウニ、サンゴ 植 物 生産者
光合成を行う・種子植物(桜、イチョウ)、シダ、コケ その他 単細胞
(群体も含む)分解者が多い ・キノコ、乳酸菌
・ゾウリムシ、ミドリムシ注意1:微生物という語句は曖昧なので、できるだけ使わないようにして下さい。微生物とは肉眼で見えないほど小さな生物という意味で、動物界、植物界、菌界、細菌界、その他分類不能な生物も含みます。もちろん、単細胞生物だけでなく、肉眼で見えなければ多細胞生物も含まれます。
注意2:菌類、細菌(類)という語句も使わないで下さい。それらに該当する生物が出てきた場合は、具体的な生物の例としてその他に分類して下さい。
注意3:細菌(類)とウィルスの違いについては生物(生命)とは何か?を御覧下さい。表2は、表1にもとづいて中学校で学習したほうが良いと思われる生物例や語句を折り込んだものです。中学校を卒業するまでに、これだけのことを学習するよう提案します。
表2 taka先生による中学生のための生物分類と例 細胞数 生態系 生物例、備考 動
物
多 細 胞 消
費
者
無セキツイ動物
背骨がない節足動物 1 昆虫類
2 クモ類
3 多足類
4 甲殻類
5 その他の節足動物(カブトガニなど)軟体動物 1 頭足類(イカ、タコ)
2 腹足類 (カタツムリ、ナメクジ)
3 おの足類(二枚貝の仲間)
4 その他の軟体動物(ヒザラガイなど) その他の無セキツイ動物(ミミズ、ウニ、サンゴ)セキツイ動物
背骨がある 1 ほ乳類(クジラ)
2 鳥 類
3 は虫類
4 両生類(カエル)
5 魚 類植
物
生
産
者
種子植物 被子植物 双子葉植物 合弁花類 タンポポ、菊、アサガオ、ツツジ 離弁花類 エンドウ、桜、ハコベ 単子葉植物 チューリップ、稲、アヤメ、ススキ 裸子植物松、イチョウ、ソテツ、杉 花が咲かない
胞子で増える
胚珠がない維管束あり シダ植物 ワラビ、ゼンマイ、スギナ 維管束なし コケ植物 スギゴケ、ゼニゴケ 藻 類 ワカメ、コンブ その他 単細胞 分解者が多い
1菌糸でできている
2光合成しない(葉緑体なし)
3単細胞生物
4非生物?1 椎茸、松茸、アオカビ、ミズカビ
2 乳酸菌、納豆菌、大腸菌、ビフィズス菌
3 ミカヅキモ、アオミドロ、ミドリムシ
4 風邪ウィルス、エイズウィルス、太陽、地球
さて、最近の生物学では、生物を「動物界」「植物界」「菌界」「原生生物界」「モネラ界」の5界に分ける(五界説)のが一般的になっています(表3)。しかし、この他も6界説、7界説、8界説、さらには、動物界と植物界を同一ものとして括ってしまおうというドメイン説も登場しています。とにかく、生物(生命)を厳密に定義することができないのですから、生物の分類方法も永遠に定まることはありません。
表3 5界説による生物の分類 ホイッタカー(Whittaker、1969) 分類名 核 細胞数 エネルギー 生活場所 備 考 動物界 真核細胞 多細胞 従属栄養 移動 菌 界 定住 ・かび、きのこ、酵母など 植物界 独立栄養
(光合成)原生生物界 単・群体(多細胞) 独・従属栄養 移動・定住 ・ゾウリムシ、ボルボックスなど モネラ界 原核細胞 単細胞 ・6界説は、モネラ界を細菌界と古菌界に分類する。
・大腸菌ということで、表1に示した分類方法は、中学生にとって有効な方法であると思います。また、動物界内、および、植物界内の分類は、これまでの伝統的な方法で構いません。詳細はそれぞれの授業記録を御覧下さい。
伝統的な分類法方に使われる術語
1 界
2 門・亜門
3 綱・亜綱
4 上目・目・亜目・下目・小目
5 上科・科・亜科
6 属・亜属
7 種
補足1:種しゅとは
・ 自然状態で交雑している、あるいは、交雑可能な集団
・ 古生物は検証できないので、本当のことは何ともいえない(姿形が似ているだけかも知れないし、全然違うようなものと交雑可能かも知れない)参考2:1999年6月の実践を訂正する
1999年6月の実践では、理科便覧にしたがって表4のように植物を分類しました。そこでは光合成をしない菌類や細菌類を植物として扱っていますが、現代生物学では動物界・植物界と同じように独立した菌界として分類するのが主流です。これに準じて、中学校でも菌界を紹介することも可能ですが、そうすると上で紹介した原生動物界やモネラ界(細菌界と古菌界)も説明する必要が生じます。したがって、私は表4のように分類することを提案します。なお、表5は表1の植物界を詳しくしたものです。
表4 1999年6月に実践した植物の分類
植 物 花が咲く
種子で増える
種子植物被子植物
子は胚珠の意味双子葉植物
網状脈合弁花類 タンポポ、菊、アサガオ、ツツジ 離弁花類 エンドウ、桜、ハコベ 単子葉植物
平行脈チューリップ、稲、アヤメ、ススキ 裸子植物 松、イチョウ、ソテツ、杉 花が咲かない
胞子で増える
胚珠がない維管束あり シダ植物 ワラビ、ゼンマイ、スギナ 維管束なし コケ植物 スギゴケ、ゼニゴケ 車軸藻類 シャジクモ 藻 類
水中で生活ミカヅキモ、ワカメ、コンブ、アオミドロ、ミドリムシ 地衣植物 リトマスゴケ 光合成しない(葉緑体なし)
菌糸でできている菌 類 椎茸、松茸、アオカビ、ミズカビ 細菌類 乳酸菌、納豆菌、大腸菌、ビフィズス菌
表5 中学生のための生物の分類
植 物 花が咲く
種子で増える
種子植物被子植物
子は胚珠の意味双子葉植物
網状脈合弁花類 タンポポ、菊、アサガオ、ツツジ 離弁花類 エンドウ、桜、ハコベ 単子葉植物
平行脈チューリップ、稲、アヤメ、ススキ 裸子植物 松、イチョウ、ソテツ、杉 花が咲かない
胞子で増える
胚珠がない維管束あり シダ植物 ワラビ、ゼンマイ、スギナ 維管束なし コケ植物 スギゴケ、ゼニゴケ 藻 類水中生活 ワカメ、コンブ そ
の
他・光合成しない(葉緑体なし)
・菌糸でできている
・単細胞生物椎茸、松茸、アオカビ、ミズカビ 、乳酸菌、納豆菌、大腸菌、ビフィズス菌、風邪ウィルス、ミカヅキモ、アオミドロ、ミドリムシ 動
物 省 略 省 略