このページは、Mr.Taka による中学校理科の授業記録 物理学 です。 |
ニュートン力学 ―ガリレイの相対性理論― → ニュートンの運動の法則(3つ) 根 幹
ニュートン力学の根幹は万有引力です。図1を見て下さい。万物は引き合っています。地球とリンゴ、地球と月、太陽とほかの恒星など、すべての物体は互いに引き合っています。これを万有引力の法則と言います。どうして、と言ってはいけまんせん。実際に引き合っているのですから仕方ありません。反発することなく、無視することもなく、万物は絶対に引き合います。もし、とても精密に測定できる道具があるなら、あなたと私が引き合っていることを数値で証明するでしょう。その大きさは、あなたと私の重さ(正確には質量。もっと正確にいうなら重力質量)と距離によって決まります。
図1 物体AとB、物体BとC、物体AとCは万有引力によって引き合っています
慣性系
さて、ニュートン力学を正しく理解する上でのポイントは慣性系の変換です。しかし、言葉の意味がさっぱり分らない人のために、次の手順で説明します。はじめに慣性ついて、次に系について、そして最後に変換についてです。ではさっそく、「慣性の法則」といわれるニュートンの運動の第1法則を復習しましょう。慣性の法則
物体に対して外から力を加えない限り、
(1)静止している物体はいつまでも静止し続けようとし、
(2)運動している物体はいつまでも等速直線運動をし続けようとする。これは「当たり前の法則」です。日常生活から簡単に理解できます。つまり、止まっているものはいつまでも止まっている性質(慣性)があり、動いているものはいつまでも動こうとする性質(慣性)があるということです。慣性はその状態に「慣れてしまう性質」と考えても良いでしょう。 次に、系という語句を辞書で調べます。
系 広辞苑第4版から抜粋
(1)いとすじ。1つづきにつながったもの。
(2)系統だった分類。
(3)system 一定の相互作用または相互関連を持つ物体の集合。この中で1番ぴったりなのは(3)システムです。これを採用すると、慣性系とは「物体の慣性が成り立つシステム」、もっと簡単に表現すると「同じ運動をしているものたち」になります。例えば、「地面に立っている人たち」「時速20kmの電車に乗っている人たち」「時速100kmの電車に乗っている人たち」です。これらの空間にいる人たちはそれぞれ独自の、互いに異なる慣性系にいます(図2)。ここで注意しておくことは、加速している場合を含まないことです。つまり、「加速する電車の中にいる人たち」「ブレーキをかける電車の中にいる人たち」は慣性系の中にいません。
図2 加速していなければ「誰もが止まっている」と感じる次に、図2を見て下さい。人は誰でも自分が静止していると考えています。地面に立っている人は自分を基準にして「時速20kmで走っている電車は時速20km、時速100kmの電車は時速100km」と決めます。しかし一方、時速20kmの電車に窓がなければ、電車に乗っている人は自分の速度を忘れてしまうでしょう。手に持っているリンゴが時速20kmで飛んできたり、急ブレーキをかけていないのに電車の壁へ押し付けられることはありません。
このように、地面に立っている(静止ししている)人は当然ですが、同じ運動をしている人も自分が止まっているように感じます。よく考えてみれば、本当に静止している人が誰なのか、誰も決めることはできません。地球もぐるぐる回っていることを思い出して下さい。全ては相対的な関係にあるのです。
慣性系の変換
いよいよ本番です。慣性系を変換しますので、図3を見て下さい。これは時速20Kmで進む電車に乗っている人を基準にした図です。図中の「さようなら」「じそく80Kmですすんでいます」の意味がわかる人は合格です。慣性系の変換の意味を理解できたので自信を持って下さい。もし、理解できないなら、あるいは、日本語の説明が好きなら枠内の説明文を読んで下さい。
図3 時速20Kmで進む電車を基準にした図図3の説明
では始めましょう。この図は時速20kmの電車を基準にしているので、この電車の速度を0にします。基準にするとは「0にすること」です。納得できない人は、次のように想像してみましょう。あたなは時速20kmの電車に乗っていて、リンゴを持っています。リンゴは動きません。手の中でじっとしています。つまり、時速20kmの慣性系のリンゴは速度0です。窓の外を見なければ全てが止まっています。スピード計がなければ、時速何Kmで走っているかわかりません。次は小学2年生の計算です。気持ちを楽にすることが大切です。
あなたは基準でした。窓の外の景色はどんどん変わっていきます。動いていないのは電車の中だけです。乗り物酔いする人は遠くを眺めると良いそうですが、振動や音がなければ窓の外を見る必要はありません。何も動くものはないのです。あなたは基準です。速度0です。
さあ、電車の中でじっとしていても面白くないので、窓の外のスピードを測ってみましょう。電車の速度計は関係ありません。警察官が使うネズミ捕りの機械を使います。特殊な光線を使って、「地面に立っている人」と「遠くを走る電車」の速さを直接測定しましょう。
その結果、地面に立っている人が遠ざかる速さは時速20Km、同じ方向に走っている電車の速さは時速80Kmでした。さすがに警察の機械は素晴らしいのですね。しかし、直接測定しているのでは変換になりませんので、足し算引き算をして確認しましょう。そのための条件として、3人にそれぞれの速度計を使って速さを調べてもらう必要があります。あなたは時速20Kmを測定して下さい。
3人がそれぞれ自分の速度計で調べた結果
あなた:(地面に対して)時速20Km
地面にいる人:(地面に対して)0Km
遠くの電車に乗っている人:(地面に対して)100Km次に、あなたを基準にして、地面いる人と遠くの電車の人を変換します。
地面にいる人の慣性系(変換)→ あなたの慣性系
0Km− 20Km= −20Km(答:後向き時速20Km)
電車に乗っている人の慣性系(変換)→ あなたの慣性系
100Km− 20Km= 80Km(答:前向き時速80Km)このように、慣性系どうしは簡単な計算で変換できます。基準さえはっきり決めれば、どようにでも変換できます。
ガリレイの相対性理論
上で調べたように、慣性系どおしの変換なら、リンゴの速度は簡単な足し算・引き算で求められることが分りました。この慣性系どおしの変換をガリレイ変換と言います。また、全てが相対的な関係として考えられるので「ガリレイの相対性理論」とも言います。地面さえも絶対的な基準にならないことは先にお話した通りです。なお、相対性理論というと、ついついアインシュタインの相対性理論を思い浮かべますが、これはアインシュタインの「特殊相対性理論」や「一般相対性理論」とは全く違います。どれほど違うか、とりあえず「ガリレイ」「特殊相対性理論」を表1で確認して下さい。なお、アインシュタインの相対性理論は別ページで解説しますので、ここではニュートン力学だけに着目して下さい(一般相対性理論は、特殊相対性理論より難解です)。
表1 ニュートン力学とアインシュタインの特殊相対性理論の比較
比較する項目 ニュートン力学 特殊相対性理論 初期条件 重 力 あ る
万有引力の法則考えていない 時 間 どこでも同じ 同時性がない 空間の位置 絶対的 時間と切り離せない 真 空 エーテルという物質で満たされている 何もない 物体の速度 とても小さい とても大きい 光の速度
(電磁波の速度)考えていない 光速度一定の原理
(30万Km/秒)成立するもの 天体の運動
万有引力(重力、加速度)電磁気学 ガリレイの相対性理論
ガリレイ変換小さな速度のときに成立する 成立しないもの 電磁気学 万有引力(重力、加速度) 物体の運動によって変わるもの な い 観測者の時間と空間 運動している物体 時 間 変化なし 遅くなる 距 離 進行方向に短くなる
(ローレンツ収縮)質 量 大きくなる エネルギー 変化なし
E=1/2× 質量× 速度×速度
(E=1/2mvv)大きくなる
E=(大きくなる)質量× 光速度×光速度
(E=mcc)運動方程式 力=質量×加速度
(F=ma)表1の補足(1)
根 幹(初期条件)
ニュートン力学:万有引力の法則
特殊相対性理論:光速度一定の原理表1の補足(2)
アインシュタインの特殊相対性理論は、重力(加速度)を無視しました。アインシュタインとしても、重力を考慮したかったと思いますが、この段階では考えることができなかったのです。さまざまな考えを巡らした結果、「ガリレオ変換」ではなく「ローレンツ変換」という数学的手法を使って光速度一定の原理を成立させることができました。これについては別ページをご覧下さい。