私の日記
1997 08 01(金)晴れ
ブゴンドウ村の一日
==◎今日の日程=======================
終日:ブゴンドウ村散策
ブゴンドウ泊
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6時半起床。
外に出て、日記を書く。
空が曇っているためか、まだ暗い。
こうして書いていても隣に変なおじさんが座って自由に書けない。
私は、ずいぶん珍しい存在なのだ。
舟付き場では、喧嘩が始まった。女と男が言い合っている。この村
ではいつもの光景なだろう。日本では、見かけなくなった風景である。
まだ暗い中、数隻の舟が朝の漁に出かけた。
「明るくなってきたなあ。」
と思っていたら、すぐに、明るくなった。漁から帰ってきた舟には、
たくさんの魚。それに女達が集まってきて、大きなざるの中に入れて
持っていく。
(写真上:大きなザルいっぱいの魚で2500Ush(300円)。
これが全部売れると4〜5000Ushになる。)
ところで、村にはたくさんのトンボがいる。トンボは肉食なので、
小魚の残りを食べているのだろうか。また、お陰で、蚊がほとんど
いない。
(写真上:網の上で魚を乾かす。小魚なら1日、少し大きめ
のものなら2日かかる。)
スティーブが来た。右手に歯ブラシ、左手に政府からの手紙を持っ
ている。そして、その手紙を読み上げた。
『8月からの税金のこと。25万Ushを払えということ。』
私は関わってはいけないと思い、無関心の振りをした。
それから、スティーブと第2の港へ行った。そこには、20〜30
cm位の魚がいっぱいある。彼は、
「今晩の夕食はこの魚にしよう。」
と言うので、私は1000Ushを渡した。そして、美味しそうな魚3
匹を手に入れた。
そして、朝食。芋と茶。
「とても、まずい。」
芋も茶も100Ush。彼の5歳の病気の子供のために『芋と茶』のお
土産を買った。合計500Ushである。
(写真上:小さなレストランでの朝食。こんな簡単な食事で
も、彼等にとってはご馳走なのだろうか?)
それから、スティーブの家で、彼の従妹に洗面器いっぱいの水を貰
う。顔を洗った。それから、古い新聞を読んでいると、レビが私を訪
ねてきた。レビは、昨日トラックの荷台の中で出会った宣教師で、今
日は背広を着ている。自転車も持っている。彼は、貧しい人を助ける
仕事をしているので、とても裕福だ。神は不思議な職業を作ったもの
だ。
私は日記を書きたかったが、彼の話に30分付き合った。話の後、
私は病気の子供に薬を2錠やり、寝た。
午後1時。
一人で昼食。スティーブと一緒だと自由がないので、久しぶりに解
放感を味わった。
<メニュー> ・ チャパティー(薄いパンケーキ)
・ チャイ (紅茶。砂糖をたっぷり入れる。)
・ さつまいも
・ 鶏のスープ
※ どれでも、一つ100Ush。
鶏のスープは、300Ush。
それから、村長の家を訪ねた。そこでは、7人の人が集まって会議
を開いている。おそらく、今朝、スティーブが読み上げていた政府か
らの手紙についてであろう。
私は、許可を得てからビデオを回した。とても厳粛、かつ、活発な
討論だった。
午後3時。
ジュースを買って、村の外へと歩く。適当な木の下に座った。
ゆっくり日記を書くつもりが、知らないうちに、大勢の子供に囲ま
れている。彼等はだんだん近づいてきて、今にも私に触れそうである。
背負われた赤ちゃんは、私を見て泣き出した。
私が彼等を見て、
『うんうん。』
を頷くと、彼等も真似して頷く。
向こうから、細身の女が来た。彼女は何か注意をして去った。
『邪魔しないように。』
とでも言ったのだろうか。子供達は数m下がった。
でも、すぐに彼等と私の距離は縮まった。
私はビデオを取り出した。すると、子供達が踊り出した。
「凄い。」
鳥肌が立つ。
(写真上:竹の棒に糸を張るり、棒の一端を空のタンクに付
ける。これで、ドラムのでき上がりだ。)
今晩の夕食はスティーブと一緒の予定。本当は一人でゆっくりしたい
が、彼にはただ飯の絶好チャンスである。
また、彼は地酒『ミレット』を予約注文した。
私は、スティーブとの付き合いに疲れてきていた。彼は、少しずつ私
からお金をくすめようとしているのである。お金だけではない。例えば、
夜の準備をしているところに来て、
「ろうそくを1本くれ。」
とか。その『せこさ』に疲れるのである。
そんな彼も、昔はいい男だったのだろう。
2人で飲んでいると、彼の妻が来た。現在、彼女はスティーブと別居
中。喧嘩をして数キロ離れたところの住んでいる。しかし、彼女は生ま
れながらの唖で、この夜もスティーブと手話で話し合っていた。これに
は驚いた。
(写真左:月明りの中で、ミレットを飲む。左から、私、スティーブと妻。)
※ ミレットとは、度数5〜10の発砲性アルコール。3P位の素焼きの壷に、細いストローを差し込んで飲む。半分ほど飲んでから、ぬるま湯をつぎ足す。
私が、彼女に『ミレット』を勧めると、本当に嬉しそうに飲んだ。私も嬉しかった。でも、彼女が本当に嬉しいのは、スティーブに逢えたからだろう。
『キョウガ湖の村を行く』 2 Aug 1997 |