このページは旅行記『イスラエル旅行記2008春』 2008 mar. 22 - apr. 1  です。

私の日記 5日目

2008年3月26日(水曜日)         時折薄日が差す曇り

◎ エンゲディでしっかり遊ぶ ===============
早朝:死海周辺散策
日中:エンゲディ自然保護区ハイキング
   ・ダビデの滝
   ・エンゲディの泉
   ・古代のシナゴーグ
   ・ワジ・アルゴットの『隠された滝』
   ・とても難しい登山ルートを登って『エンゲディ見晴らし台』へ
夕方:死海で浮遊してから天然温泉に入る
              エンゲディーのユースホステル泊(2/2)
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5:55 起床
 昨夜は夕食後すぐに寝たので、10時間眠った計算になる。私はパソコンを片手に、ロビー横の広いテラスへ移動した。/ 爽やかな風と小鳥の鳴き声が私を迎えてくれた。世界でもっとも低い場所にある死海(標高ー400m)は鈍いモスグリーンの水をたたえているが、その音は聞こえない。反対の山側を見渡すと、アフリカ東部から地球の大陸を切り裂く巨大断層が続いている。

 私は自販機で買ったばかりの缶コーラを開けた。ぐびぐびぐび、ああ幸せだ。今日は暑くなる前にあの断層へ登り、午後から塩湖で泳ごう。

 6時半になると、灰色の分厚い水蒸気の奥に太陽の位置を確認できるようになった。マサダの山に登って、そこからご来光を拝むツアーもあるらしいが、今日の天気では全く無理だ。一般的に、水蒸気が多ければそれだけ美しい朝焼けが期待できるが、この灰色の水蒸気には、赤光さえ遮られしまいそうだ。実際、太陽の眩しさを感じるようになってきたが、暖かさはない。やがて水蒸気が吹き飛ばされてしまうと、太陽から直接の赤外線によって身体と大地が暖められるだろう。

 私はパソコンを部屋に置き、その代わりにカメラを持った。

 死海に近づくと硫黄の匂いがした。すぐ側に温泉プール(水着で入る)があるから、じっくり探せば無料の天然温泉を見つけることができるかも知れない。温泉好きの私の心は、死海の浮遊体験よりも露天温泉探し移っていた。

左:温泉が吹き出しているポイント発見。水温は30度Cぐらいで、鉄分を多く含んでいるようだ。これを溜めれば立派な温泉になるのだが、、、

 後ろに写っているのが、飽和食塩水の湖である『死海』。その後ろにうっすらと写っているのはヨルダン国。ぷかぷか浮かんでいるうちにヨルダンまで流されてしまった人もいるらしいが、イスラエルとヨルダンは敵対しているので大変な事になる。


上:最近はめっきり少なくなったと言われる塩の塊を発見! 喜び勇んで写真を撮りまくる。


上:温泉がなくても大丈夫なまでに御満悦。


左上:もの凄い泥の層だ。この写真に写っているのは数mぐらいだが、死海の底の底まで同じような泥が堆積しているのだろう。これらは全て鉱物(ミネラル)だけど、成分の詳細はわからない。とりあえず、おフランスの超一流エステの必需品らしい。一塊で数万円は下らない。

 ついに温泉発見。水たまりか、底なし沼か、湖水が溜まっているだけか詳細はわからないが、下の左の写真のものは枯木が置いてあり、私より先に誰かがチャレンジしたようだ。底がなくても掴まっていられるように工夫したのだろう。水温は低めの35度Cぐらい。よく見るとぶくっ、ぶくっと泡が出ているから、底からも温泉が吹き出しているようだ。硫黄の匂いもきついから、有毒ガスにも注意しなければいけない。


左上:横2m、縦4m、深さ不明。

右上:縦横4m、深さ不明。これに入ったら死んじゃうかも。

 これで、今日1日のスケジュールが決まった。朝食を食べたらエンゲディ国立公園をハイキングして、午後はハイキングの汗を死海で流しながら浮遊体験、最後はこの無人温泉で締めよう。有料の高級スパ(温泉施設)に行く必要は全くないし、興味もない。

 そう決めると、野草の写真撮影もそこそこにホステルの食堂へ向かった。

8:00 朝食
 昨日とほとんど同じものでも心は浮き浮き、早く出発したい。


上:かなり急いで盛り付けた。

 部屋に戻ると誰もいなかった。早朝の死海で遊び過ぎたらしい。

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10:00 エンゲディ自然保護区
 公園の入り口は、徒歩5分の距離にある。開場時間は朝9時だったが、私は入念に準備したので、ゲートを通ったのは10時だった。入園料がは公園入り口に、欲しいものはほぼなんでも揃う店があったからだ。


上:さっそくが山羊さんが出迎えてくれた。ここまで慣れてくると野生動物とは言えない。


上:まずは、ダビデの滝を目指して歩き始めた。良く整備された国立公園で気分爽快。


上:次に出てきたのはハイラックス。岩場に住む草食動物。

 1時間ほど予定したのに、15分も歩かなうちに滝が見えてきた。

左上:これはダビデの滝ではありません。その下にある名もない水浴場です。ここで汗を流すのも良いけれど、お邪魔したくないな。
右上:ここでも遊んでいます。一番上に見えるのがダビデの滝。
左上:ダビデの滝。
右上:この滝で泳ぐことはできません。記念撮影して、次なるポイント『エンゲディの泉』へ出発。


上:左端にダビデの滝。立派な地層が観察できる。


上:斜面を登る小学生達。良く見ると、私が宿泊したユースホステルにいた子ども達だ。彼らは国立公園には入らず、無料の山岳ルートを歩いているようだ。ダビデの滝は見れないが、広大な自然は十分に楽しめるだろう。日焼け対策も必要だと思うけれど、子どもだから気にしないかな。


上:右端にユースホステル、中央の緑がある施設はエンゲディ・フィールドスクール。


右上:エンゲディーの泉の近くにある『ローマ時代の遺跡』。


上:この辺りの岩石を観察すると、たくさんのチャートがあった。それらを割って、大昔の人々が利用した鋭利な石包丁、ヤジリのようなものを作ってみた。


上:風化が進み、危険な場所も多い。

11:30 エンゲディーの泉
 エンゲディーの泉は改修工事中だった。最近の自然環境の急激な変化に対応するためかも知れない。さて、ダビデの滝からここまでは僅か数10分の道のりだったが、数人の人に出会っただけだった。実際、多くの人々は大型観光バスでダビデの滝を見学した後、再び同じ道を戻ってバスに乗り、数キロm離れたワジ・アルゴットをハイキングするようだ。実際、ワジ・アルゴットの方が面白く、その終点となる『隠された滝』は水浴もできるので体力がある人にはお勧めだ。

 なお、エンゲディーの泉の写真はない。なぜなら、泉で顔を洗っから顔をあげると、私のリュックの側に1人の男がしゃがんでいたからだ。「私はガイドだ」といったが、リュックのファスナーが開いていたから何かを盗もうとしたのだろう。残念なことに水と僅かな食料しかないので、彼の収穫はゼロだったが、彼の顔は突然の出来事に当惑していた。まだ初心者に近いようだけど、一度美味しい思いをしたのだろう。私が何か言ったところで改心するのは難しいだろう。教育者としての私の経験からして、初めて万引きをして捕まった子どもがその時に反省できなかった場合、常習者となるケースがほとんどだからだ。ここには、日本よりも厳しい環境があるから、せめて他人の身体は傷つけないようにしておくれ。

12:00 古代のシナゴーグ
 詳細は分からないが、ユダヤ教徒の集会所だったところで、現在も発掘作業が続いている。


上:テントの下には立派なモザイクがあった。


上:モザイク。


上:修復作業をする女性。携帯電話で話をしているけれど、頑張っていると思います。

12:40 ワジ・アルゴット
 ワジは『枯れ川』の意味であるが、ところどろこ水が流れていたり、雨期は本当の川のようになる。エンゲディ国立公園は『ダビデの滝』が有名であるが、このワジ・アルゴットの景観やこの上流にある『隠された滝』の方がお勧めだ。


上:ワジ・アルゴットの景観


左上:子ども達の笑い声が聞こえてきた。女子中学校の生徒達が、制服のまま水の中に入っていた。行列の先には、天然の滑り台がある。


上:私も水着になって水浴した。パンとジャム、ジュースの簡単な昼食も済ませた。

 ここのワジはたくさんの児童や歩いている。彼らはゆっくり進むので、私もゆっくり進むことになる。途中で道が分からなくなり、川の中を歩くことになった。思わぬとこで、沢歩きになってしまった。私は革靴を履いていたので水が入らないようにしていたが、とうとう諦めた。

14:00 隠された滝
 たくさん歩いた後なので、小さな滝なのにテンションは高い。途中で一緒に歩いた中学生達とも合流して楽しい時間を過ごした。


上:隠された滝にて記念撮影。



上:とても15歳の中学生とは思えない。一言断っておくと、彼女達から一緒に記念写真を撮りたいと申し出た。

 私は、さらに滝の上流を歩きたかったが、午後2時以降は侵入することができなかった。分岐点に係員が座っているのだから仕方ない。私は同じ道を戻ることにしたが、5分歩いたところで、断崖を登るルートを見つけた。地図を見ると、『とっても大変なトレイル』と書いてあるが、私の脚なら何とかなるだろう。下山は難しいが、登りだから頑張るだけだ。


上:海抜0m地点で撮影した。遠くに見える死海は海抜-400m、断崖上部は海抜+200m。


上:猛禽類が上昇気流に乗って飛んでいる。私も翼が欲しい。呼吸が荒くなってきた。


上:うーん、見晴らし台に到着したけれど、ぱっとしない。しかし、これから断崖の縁を歩くから、たくさんのビュー・ポイントがあるだろう。


上:死海を眼下にしてハイキング。

左上:陸貝の貝殻。
右上:火山弾。溶岩が吹き出す火山爆発もあったようだ。 


上:死海沿い、中央右にエンゲディー・スパ(温泉)があるはずだが、よく分からない。


上:死海の手前にある水たまりが気になるが、実際は大きすぎて入る気にはならないだろう。

 断崖沿いのハイキングも終わり、急斜面を降り始めた。


上:ローマ時代の神殿が見えてきた。後ろには船も見える。


上:飛行機も飛んでいる。背景の山はヨルダン領。


上:山羊も登場。

 さあ、世界で一番低い位置にある湖『死海』まで降りてきた。いよいよ、人生初めての浮遊体験である。


上:すでに夕焼けが始まりつつある。


上:御愁傷様のような記念写真になってしまった。何しろ、この水は激辛以上の恐ろしい液体で、絶対になめることができない代物で、もしも目に1滴入ったら浮遊体験終了となるからである。私は1滴舐めてみたが、「痛い」を通り越し、「低電圧の高電流」を流されているようだった。飲むなんてことは絶対にできないし、危険。また、上の写真は片手を目一杯上げて撮影したが、真水なら上半身は大きく沈んでしまうだろう。

 感想は、「浮く、浮く、浮く」「うおっ、本当に浮く」「浮くじゃないか」「おー、浮いてしまっている」「あー、よい感じ」「いい気持ち」である。


上:脚もこれだけ浮く。もちとん、バタ脚もしていないし、水しぶきを上げることは厳禁。

 これは知人からの情報だけれど、20分以上浮遊しているとお尻が大変なことになるらしいので、私は10分程度で切り上げた。ただし、短時間でも気づくと岸から100m以上流されていたので、腕だけのカエル泳ぎで戻ってきた。脚は全く沈まないので役に立たない。また、泳ぐ必要はないけれど、もともと泳げない人だったら軽いパニックになったと思う。

 さて、次は、いよいよ泥パック付き、無人の天然温泉だ。お肌すべすべになるかも知れない。


上:注目して欲しいのは、泥がいくつもの色で分けられた層になっていること。それぞれ、美味しいそうなミネラルが入っている。これを一人占めできて、しかも、日本の温泉のように楽しめるんだから最高。ワイルドな私は、水着を着た観光客達と、青にペイントされた天然温泉プールに入ることに興味がない。

19:30 ユースホステルに戻る
 部屋に戻ると、自分のベッドがなかった。どうやら、私の予約は1日分だけだったらしい。ここは人気のユースホステルだからピンチかも知れない。レセプションで確認すると、やっぱり私のベッドはない。しかも満室だと言う。ロビーで寝かせて欲しい、他のホテルを紹介して下さい、と頼んだ。その結果、15分以上待たされたけれど新しいドミトリーを1つ解放してくれることになった。空いているなら初めから開けてくれれば良いのに、というのは虫の良い客の考えかも知れないが、良かった良かった。しかも一部屋独占できるなんて幸せだ。シャワーもゆっくり浴びられる。

19:50 夕食
 昨日と同じようにユースホステルの食堂でバイキング。食べ過ぎてしまったのは、自然の中で危険な体験をしたからだろう。食べられる時に満腹にしようとする本能が働いたのかも知れない。


上:メインディッシュはチキンのから揚げ。でもそれよりジャガイモの方が美味しい。

20:30 消灯
 食事の後は、すぐに寝てしまった。

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 ダビデの滝は、全く急いでいないのに20分足らずで到着してしまった。私の足なら最後まで十分登れたし、所用時間はガイドブックの3/2で計算できる。また、ダビデの滝より、もう1つの渓谷『ワジ・アルゴット』の方が圧倒的に楽しい。靴がびたびたになることを覚悟の上で、是非とも滝まで歩いてほしい。途中から道がなくなるけれど、たぶんたくさんの人が歩いているから分かると思う。迷ったら、下へ下へと歩けば入り口に戻る。ただし、地図を読めない人や山歩きに慣れていない人は危険なので、単独行動は自粛すること。

 春休みなると、毎年2泊3日の修学旅行があって、私が遭遇したのはテルアビブの女学校の15歳半の少女達だった。彼女達の名前は忘れてしまったけれど、どうもご免なさい。楽しい思い出だけを頂いてしまいました。

 一番きつい斜面は35分だった。分岐点をスタートしたのは、14時50分。最後のゲートを潜ったのは、17時20分で、午後4時閉門から大きく遅れたので係員に叱られた。すみません。

カメラと水中カメラを持った。水着に着替え、裸足になって靴を履いた。

 宿から死海までの直線距離は300m。私は泳げるポイントを確かめながら、ゆっくりと近づいていった。ここは遊泳禁止の場所も近いので、できるだけ安全そうなところで、しかも、宿や国道を走る車から見えないポイントを探さなければいけない。

 死海は硫黄の匂いがした。近くには、水着で入れる温水の温泉プールがあるから、じっくり探せば無料の天然温泉を見つけることができるかも知れない。温泉好きの私の心は、すでに死海の浮遊体験よりも露天温泉に移っていた。

 それから温泉に入った。死海体験は本当に体が浮いたので嬉しかった。当たり前のように感じたけれど、それは事前学習のおかげだと思う。実際は、かなりびっくりした。それから、水は飲めたものではない。これを200ml飲んだら、死ぬと思われる。だから、死海と言うのかも知れない。お尻の穴はひりひりしなかった。ひりひりするのはその部分が痛んでいる人だけだろう。

 温泉はすばらしい体験だった。温泉の後は、死ぬほど寒かった。帰り道の寒さは嫌だけれど、また入りたい。もちろん、明日も入る。

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3月27日

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