クロッキー F 美術館

第2章 本物そっくりのデッサン
イーゼルを立てる方法

1 場所を決める3つの条件
 描く前の『場所決め』はとても重要です。モデルのポーズが決まったら、その周りを1周しましょう。その時、モデルとの距離も変えて下さい。近づいたり遠くしたりするのです。しかし、これだけで満足してはいけません。位置を決めるのに欠かせない条件が1つ残されています。それは、あなたの目の高さです。床や椅子に座るか、それとも、立って描くかを決めて下さい。モデルとの上下関係によって、身体の見える部分が変わります。以上をまとめると、あなたの場所は次の3点のよって決まります。

(1)モデルを中心にぐるりと回ってみた時の位置
(2)モデルとの距離
(3)あなたの目の高さ(上下関係)
※(2)の詳細は『モデルとの距離』、(3)の詳細は『目の高さを決める』をご覧下さい。右図:モデルの膝とカメラの距離は30cm。写真としては面白いのですが、鉛筆で描くと不自然になります。

右図:イーゼルの上にベニヤ板を載せ、この上に自分の好きな紙を載せる。紙はクリップで挟んだり、画鋲やテープでとめる。

2 4つめの条件としての『光』
 デッサンは、光がつくる陰影を正確に描くことが最重要課題の1つです。曲面がつくるグラデーション、2つの面がつくるコントラストは、立体的な表現に欠かすことができません。しかし、実際の現場は、写真のようにカーテンを閉めて蛍光灯をつけることが多く、光の条件を考えることは至難の技です。光の条件を整えることができるなら、初心者は正面斜上から柔らかい光を当て、モデルが自然な状態に見えるようにして下さい。光をコントロールできない場合は、あなたの頭の中でモデルが自然に見えるように調節することになります。蛍光灯の光を無視したり、強調したりすることがあります。それをしないデッサンは、室内の全ての蛍光灯や壁や床の反射光を感じるデッサンになります。 関連ページ『モデルを光源として見る


上図:モデルをぐるりと囲むようにして行うクロッキー。クロッキーの場合は、モデルが正面を順に変えるので、どこで描いても大差はでない。(
2007may 15 会場写真から)

3 上手く描ける位置は決まっている
 ここまで読めばお分かりになると思いますが、実は、最終的に上手く描ける位置や条件は決まっています。その位置を見抜くことは、すなわちデッサンすることなのです。「デッサンが上手な人はどこからでも描ける」と思っているのは初心者です。1、2で説明した4つのポイントに注意して、モデルが自然見える位置を探して下さい。場所決めに何時間使っても構いません。それぐらい重要なことです。

 どんなに上手な人でも、モデルとの距離が50cm以下なら、不自然な見え方になります。巨大な等身大の紙を使っても同じです。デッサンの達人が描いたものは、「広角レンズで撮影した写真みたいに上手!」と誉められることになります。

右写真:17mmの広角レンズを使い、モデルの膝との距離30cmで撮影したもの。

4 最高のポイントは1つしかない
 モデルがあるポーズを決めた時、最高に美しく見えるポイントは1つしかありません。したがって、大勢の画家がモデルをぐるりと囲んで描くデッサンは、最高のものを描くことが出来ません。最高のポイントを自分で選ぶことができるなら、デッサンは作品レベルになります。さもなければ、絵画の基礎を学ぶための訓練として頑張って下さい。

5 モデルがもっとも自然に見える目安
 モデルの身長やポーズによって変わりますが、モデルとの距離は半身像なら2m〜3m、全身像なら3m〜5mぐらいでしょう。目の高さは、画面の中心よりやや上になるようにします。以上がおよその目安ですが、とにかくモデルの周りを前後左右上下、あらゆる方向・角度から見て下さい。そして、もっとも自然に見える位置(点、ポイント)を探します。この位置はピンポイントで、「1つのポーズに対して1つしかない」と思って探して下さい。位置が決まったら、光を当てて完成です。

6 あなたの目の高さが消失点になる
 消失点については、別ページ『消失点を調べる』をご覧下さい。


上:イーゼルを使ってモデルを描く

イーゼルを使う時の基本
1 モデルと画面(イーゼル)が同時に見えること
2 目だけを動かして、モデルと画面を見るること
 (首を動かさない)
3 腕を軽く曲げた状態で描けること
 (近すぎても遠すぎてもいけない)

7 デッサンを作品にするための条件
 デッサンは本物そっくり描くことですから、出来上がったものはモデルそっくりになります。したがって、モデル選びはデッサンの作品作りの重要な要素です。

8 まとめ
 『場所取り』の遠慮は、遠慮して描くことと同じです。場所選びからベストを尽し、後悔しないようにしましょう! また、『肉眼で見た時に自然に見える位置』と『絵画で自然に見える位置』は、違います。後者の詳細については、別ページ『人体を描くための身体上ポイント』をご覧下さい。

2010年4月4日公開

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