クロッキー F 美術館

第2章 本物そっくりのデッサン
デッサンでよく使われる語句

 デッサンでよく使われる言葉をまとめてみました。参考にして下さい。

 光は、人間の網膜にある細胞を刺激するものです。自然光は3つの特性『色相』、『彩度』、『明度』に分けられますが、単色デッサンに必要なのは『明度』だけです。明度は明るさを表しますが、人体は光を発する光源ではなく、外からの光を反射するだけの物体です。したがって、光の当て方によって、全く違うように見えます(参考ページ『モデルを光源として見る』)

 『色相』は光の波長の長さによって分類される『電磁波』です。波長の長い方から順に、電波、赤外線(熱)、(可視光線オレンジ、図1)、紫外線、X線、ガンマ線に分類されます。人間の目は可視光線しか見えませんが、皮膚は赤外線を『熱』として感じることができます。ただし、これは光源(光を発する太陽や電球)を考えたものなので、反射光(光源の光を反射することによって見ることができる絵画や彫刻)について、完全に当てはめることができません。そして、『彩度』は色の鮮やかさです。

図1 プリズムで分解した太陽光線(この勉強をしたい人は『実験6太陽で虹を作ろう』、大人の勉強をしたい人は『光と音に関するノート』をご覧下さい)

 光の3原色
 
レッドグリーンブルー
.
 色の3原色
 マゼンタイエローシアン

反射光
 反射した光を『反射光』と言います。対義語は『光源』で、その意味は光を出すもの、その例として太陽(自然光)、テレビ、ロウソクなどがあります。
 さて、身の回りのものをよく見ると、大部分は光を出していません。石膏像、ヒト、鉛筆などが見えるのは、光源の光を反射しているからです。したがってそれらを描く時、私たちはすべて『反射光』描いていることになります。しかし、デッサンでこの言葉を使うのは、近くのあるものが互いに反射しあう場合です。よく観察して下さい。近くに何かあれば、必ず明るくなります。あなたの両方の手の平を向かい合わせるようにして近付けると、その内側が明るくなることが分かるでしょう。なお、もっとも基本的な反射光は、白い床に置いた物体が、床からの光を受け、床に近いほど明るくなる現象です。

トーン
(調 子)
 トーンの意味は『程度(度合)』です。したがって、単色デッサンのトーンは『明るさ』だけですが、自然光には3つのトーンがあります。光は、3つの属性『色相』『彩度』『明度』を持つからです。
 さらにトーンの語源を調べると、音楽の分野で生まれたことが分かっています。トーンは、音階(ドレミファソラシド)、音量(大きい音小さい音)、音色(綺麗な音濁った音、ピアノの音やバイオリンの音など)の3要素を複合したものです。
グラデーション
(連 続)
 明度、色相、彩度などが、連続的に変わることをグラデーションと言います。
 モノトーン(白黒の調子)の場合、そのグラデーションは『白〜灰〜黒』です。白と黒はそれぞれ1つだけですが、灰は無限の調子(トーン)があります。したがって、灰の調子の幅の広いほど、一般的に美しい作品となります。灰色の部分=トーン、と考えることもできます。
中間色  デッサンはすべて中間色(灰)からできている、と考えることができます。中間色は同じように見えても(異なるように見えても)、隣の中間色との関係で明度が変わって見えます。いわゆる目の錯覚です。そして、最も明るいところ(白)と最も暗いところ(黒)は、それぞれ1ヶ所だけです。
ヴァルール
バルール

(色 価)
 画面における色(デッサンでは明暗)の配置やバランスをヴァルールと言います。「この絵のヴァルールは良い」「この部分のヴァルールは目を見張るものがある」というように使われます。色彩感覚、色の使い方、色の組み合わせ方、と置き換えても良いでしょう。
マッス
(塊、量塊)
 1つのかたまり(重さや立体感を感じる塊)感です。1つであることを強調したい時に使う言葉です。
ヴォリューム
ボリューム

(量 感)
 重さ分量がある感じをヴォリュームを言います。
 よく考えると、重さは見ただけではわからないものなので、これは私たちの経験を描いていることになります。同じように、密度、温度などについてもヴォリューム(量感)という言葉を使うことがあります。
テクスチャー
(質感、素材感)
 色、光沢、匂い、物体を触ってみたときの感触、叩いてみた時の音、鋭さ、透明感、生きている感じなど、モチーフのいろいろな特性をテクスチャーと言います。
 なお、テクスチャーとヴォリュームの使い分けは曖昧で、多くの人が混乱しています。
モデリング  彫刻で、粘土を心棒につけていく『肉付け』作業です。したがって、彫刻家のデッサンを批評するときに「モデリング」という語句が多用されます。ジャコメッティーのように、初めにある素材をそぎ落としていく作業を主体にする作家は、その逆です。
ムーブマン
(動勢、動き)
 ムーブマンは、作品を見る鑑賞者の眼の動きによって生まれるものです。それを作るもっとも簡単な方法は矢印ですが、デッサンでは『明暗(色彩)の変化』と『細かい線を集積』を大切にします。細かい線の集積は、細かい面の集積になります。

りょうせん
稜 線
 2つの面の境界線を稜線と言います。山の稜線を思い出せば、すぐに分るでしょう。この稜線は、『ムーブマンがある細かい線』を無数に重ねることで作りますが、1本1本の線には無限のトーン(明暗の調子)があります。
 稜線はたくさんあるほど明暗のグラデーション(連続)が増えますが、全体のバランスができていないとヴァルール(明暗の配置)が悪い、と言われます。正しく出来ている場合は、ヴォリューム(量感)やテクスチャー(質感、素材感)を感じる『マッス(1つの塊)』だ、と評価されます。
構 図  画面全体の配置のことを構図と言います。構図を決めるポイントとして、次のようなものがあります。対称性、バランス(均衡)、プロポーション(比例)、ハーモニー(調和)、リズム(律動)、二等分・黄金比・ルート、などです。
石膏像  デッサンの学習をするために作られた像。
木炭紙  木炭を使ってデッサンするための用紙。大きさは500×650。石膏像の一部分をはみ出すように大きく描きます。その場合、切り取った部分が、容易に想像できる範囲にすることが肝要です。

2010年4月7日公開

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