このページは、1年理科『化学』1999/takaの授業記録 です

  実験8 蒸 留
            
 1999 11 04(木)

 無色透明の液体『水』と『エタノール』を混ぜる

 この混合液を分ける方法は?
 また、初めに沸騰するのはどちらか?
 (答:後述)

(右:Aさんのプリント)
本時の実験装置 


  <本時のねらい>
   水とエタノールの沸点の違いを利用して、その混合液を分ける

  <授業の流れ>
  1 前時までの復習→ 沸点について
   ・ 融点=凝固点
   ・ 純粋な物質が状態変化をしている時、温度が一定
   ・ 沸騰している間は温度(沸点)が一定
   ・ 水の沸点= 
100度C
   ・ エタノールの沸点= 
78度C

  2 問題提起から実験手順の確認まで
   1) 問題提起
    ・ 100mlのビーカーにエタノール30mlを入れる
    ・ 100mlのビーカーに水70mlを入れる
    ・ 生徒の前で混ぜる
    ・ これを、元の2つに分けるにはどうしたらよいか発問する


<説明の例> 2005年3月追記
 この説明では、水とエタノールを、それぞれ100mlずつ混合します。できた混合液200mlは、そのまま生徒実験の試料として利用します。

 「A君、この200mlビーカーに水100mlを入れて下さい。」
 「はい、どうもありがとうございます。」
 「B君、もう1つの200mlビーカーにエタノール100ml入れて下さい。」
 「はい、どうもありがとう。」

「この2つの液体は、両方とも同じ無色透明なので、見た目だけでは区別がつきませんね。試しに、先生が2つのビーカーをグルグルッと回すと、・・・ほら、どちらが水でどちららエタノールか分からなくなったでしょ。誰か区別できる人はいますか?」

 「そうですね。匂いを嗅げば分かります。」

 「他にも区別する方法がありますが、分かる人?」
 「そうですね。手につけて、すっとする方がエタノールです。」

 「まだまだ他にも方法がありますが、ここで難しい問題を皆さんに差し上げます。これら2つの液体を混ぜます。・・・ほら、できました。一緒になってしまいました。見ただけでは、ただの水にしか見えませんが、半分、50%はエタノールです。さて、これから問題ですが、今、先生が混ぜてしまった混合液を、もう1度2つの水溶液にわける方法を考えて下さい。これは、前回学習した物質の性質を使えばできます。分かった人?」

 「よくわかりましたね。加熱するだけでオッケーです。混合液を加熱すると、エタノールは78度Cで気体のエタノールに状態変化しますが、水は、100度Cで水蒸気に変わります。ですから、初めに気体に変わるのは・・・エタノールなので、まず、エタノールだけを取り出すことができます。このように物質の沸点の違いを利用して、純粋な物質を取り出すことを蒸留と言います。」

 「さあ、理論が分かったところで、実際に、みなさんにエタノールと水を取り出してもらいましょう。」

   2) 話し合い
    ・ 沸点の違いを利用すればいいことに気付かせる
    ・ 水とエタノール、どちらが先に沸騰するか発問する
    ・ エタノールの沸点が78度Cであるこことを確認する
   3) プリントに器具・材料をまとめる
    ・ 実験装置を組み立て、演示しながら記入させる

  3 生徒実験
   1) 下図のように装置を組んで蒸留する
    
    <ポイント>
     ・ 混合液は10mlぐらい
     ・ 沸騰石を入れると安全、かつ、スムーズ
     ・ ガスバーナーは弱火(78度Cで沸騰)
     ・ ゴム管など熱くなるので火傷に注意
     ・ 試験管を取り替えるときも注意
     ・ 1本の量は1cm以下

   2) 5つの試験管の液を調べる。その観点は次の通り
    ・ 手触り
    ・ 燃えるか
    ・ ストローを入れたとき浮くか沈むか
     


(上:ストローで調べる)
左は沈んでいる(エタノール)
右は浮いている(水)
これは密度の違いから説明できる


(上:燃焼性を調べる)
 脱脂綿は燃えていない

<ポイント>
・ 純粋なエタノールなら、一瞬で点火する。しかし、水の含有量が多くなってくると、なかなか点火しない。生徒は、エタノールが燃えると「成功だ!」と言って大喜びする。また、脱脂綿はくり返し利用するので、燃やさないように注意すると良い。(
→ 上右の写真参照

・ ストローは、大きすぎると試験管の中程で引っかかってしまう。また、ストローに気泡が付いていて沈まない場合、トントンと試験管の底を叩くと気泡が取れる。こうして準備した5つの試験管を並べれば、順に浮いていくことが一目瞭然となる。今回の3つ検証方法の中で、もっとも科学的・定量的である。

・ ひんやりした感じで区別する手触りは、実際問題として分からない。気分の方が大きい。

4 本時のまとめ
・ 燃えるか燃えないか
・ ストローが浮くか沈むか
・ 手につけたときの感触


<<授業を終えて>>
 予想以上に、操作が分からない。試験管を交換する意味が分からないのだ。原因はいくつかあるが、沸点の違いによって分離できることは理解できても、水とエタノールが混合している割り合いが視覚的に確認できないことが1番の原因であると思う。また、実際の実験では、完璧に分離することはないので、できるだけ少量ずつ試験管に分けた方が成功しやすいのだけれど、無色透明のままなので、非常に分かりにくい。1年生のイメージ力では難しいと思う。

 授業では、班毎に巡視説明して回わったので、理解できたようだ。

 次時は、自宅からアルコール度数の高いウイスキー、焼酎などの酒、料理に使うみりんを持参するように指示した。「飲まないように」などと注意すると、かえって飲む生徒がいるので「試験管1/4の量」とだけ指示する。

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(C) 1999-2005 Fukuchi Takahiro