細胞内呼吸の説明例

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 終了のチャイム10分前から、次のような説明をすることはともて有効です。ただし、話のスタートを間違えると、とても残酷な話になったり、悲しい思いをする生徒が出るので十分な配慮をしてから説明を始めて下さい。

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 これから、ある実験をします。

 ヒトを使って実験をする必要はないのですが、犬やネコを使うより人間自身を使って実験した方が良いと思いますので、今日は思いきってヒトを使います。

 そのヒトは交通事故に遭ってしまいました。

 両手両足を大きく損傷したので、切断するしかありませんでした。しかも、顔面を激しく打ちつけたので、喋ることも、匂いを嗅ぐことも、見ることもできなくなりました。結果として、唇を鼻を縫い付け、目も閉じたままになってしまいました。さらに不幸なことには、オシッコをするところも損傷してしまったのです。つまり、食べることも出すこともできなくなってしまったのです。さあ、このヒトは生きていけれるでしょうか。


図1 ある実験

 医者は点滴を打ちました。直接、栄養分を血液中に入れるのです。栄養分の代表としてブドウ糖がありますが、みなさんも元気がなくなったときにはブドウ糖の点滴をすると思います。これで食べなくても大丈夫です。じゃあ、酸素と二酸化炭素はどうしましょうか。これも心臓を手術する時に使う人工心肺装置、つまり、人工的に血液を循環させ、酸素と二酸化炭素を交換する装置を使えば大丈夫です。オシッコはどうしましょう。これも、同じように考えれば何とかなりそうです肝臓と腎臓のところで人工透析の話をします)。しかし、このヒトは生きているのでしょうか。

 肺も心臓も動かないのです。

 さらに、脳も破壊されていたらどうしましょう。そして、可哀想なことに、だんだん体が弱ってしまい、どんどん体の部分を切断するしか方法がなくなったら・・・胴体が半分になったら、顔も半分になったら、脳みそも半分になったら、心臓も半分になったら・・・

 よく考えて下さい。動きの止まった心臓でも、ひとつひとつの細胞レベルなら、シャーレや試験管の中でしばらくの間、生かしておくことができます。液体窒素で瞬間的に凍結させたなら何百年かのちに細胞レベルで生き返らせることができます。今の科学技術で十分です。

 でも、これは生きていると言えるのでしょうか。この問題について、先生は答えを出しませんが、細胞レベルの活動、つまり、細胞内呼吸については理解できたと思います。

 私達が食事をしたり呼吸をするのは、究極的には細胞レベルで有機物を酸化してエネルギーを得ることなのです。これを細胞内呼吸といって、肺で行う酸素と二酸化炭素のガス交換と区別します。

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(C) 2005 Fukuchi Takahiro