このページは中学校2年理科『生物』/takaの授業記録2000です

内呼吸と外呼吸
                 2000 7

 このページは2005年夏、手許に残された1枚の授業記録(図1)によって書き起こしたものです。したがって、指導内容と手順はほぼ正確に記録されていますが、生徒の声や当時の授業の雰囲気を伝えることができないことをお断りしておきます。

 また、2003年度の観察12肺と2つの呼吸も参考にして下さい。

 ※ すべてのクラスで行ったと思われる内呼吸の説明例

 


図1 Aさんの学習プリント


授業の流れ
1 導 入

・ 学習プリントプリントを配付する
・ 学習プリントには、図1の右上にあるような人型を印刷しておく
・ 本時の学習内容を知らせる

2 自分の呼吸数を測定する
 30秒間の自分の呼吸数を測定します。本時の導入として、生徒の問題意識を高める効果も期待できます。さて、心拍数は自分でコントールできないのですが、呼吸数はとても大きく変化しますし、意識的に止めることもできます。この実践では、図2のように30秒間の呼吸数を3回測定させましたが、この他にもいろいろな測定方法が工夫できます。1:1分間にする、2:安静時と軽い運度をしてからを比較する、3:運動後の30秒毎の変化を調べる、4:呼吸を止めている時間を測定する、などです。

図2 Aさんの呼吸数

3 外呼吸を図示する
 学習プリントに
三角フラスコのような形をした肺を書かせます。そして、鼻から酸素を取り入れ、口から二酸化炭素を出している様子を図示させます(図3の上半分)。注意:実際の肺の形は全然違います。教科書や理科便覧の図や写真を使って説明して下さい。2003年度の観察12肺と2つの呼吸では、私の胸部レントゲン写真を紹介しました。

4 酸素の行方を考える
 図3のように体内を模式的に表すと、肺が酸素と二酸化炭素を交換する器官に過ぎないことが分かります。しかし、取り込んだ酸素がどこで使われるのか、どこに行くのかはとても不思議です。取り込んだ酸素はどこへ行くのでしょう。また、どのような方法で移動するのでしょう。


図3 ヒトの外呼吸

4の答は図3の下半分に示されています。酸素は、体中のひとつひとつの細胞で利用されます。もちろん、肺を構成している小さな細胞達も利用しています。酸素を運搬しているのは血管の中を流れる赤血球ですが、赤血球については次時に学習しますので、ここでは、1本の太い血管で表します(図3)。

5 内呼吸を図示する
 図3の下半分に書いた通りです。なお、教科書では内呼吸という言葉を使っていませんが、私は肺による単純なガス交換と区別するために、外呼吸と内呼吸という語句を使用しています。内呼吸の内は、細胞内という意味です。

6 肺の内部をスケッチする
 呼吸器官としての肺内部をスケッチします。小さな肺胞と毛細血管があること。毛細血管によって酸素と二酸化炭素が交換されていることを示せば十分でしょう(図4の右下)。時間があれば、肺内部のつくりについて説明ましょう。ただし、講議のように先生が一方的に話すのはダメです。また、一部の生徒がうなずいているからといって調子に乗ってもいけません。生徒の脳内酸素量が減少しはじめる前に次の話題に進みましょう。


図4 ヒトの内呼吸

7 外呼吸と内呼吸のまとめ
 図5のように簡単にまとめれば良いでしょう。


図5 2種類の呼吸

8 なぜ呼吸をするのか?
 あまりにも当然の質問なので、何人かの生徒からは「死なないため」という答えが返ってくるでしょう。そこで、もう1歩進んだ質問をします。肺で呼吸をしなくても、血液中の酸素と二酸化炭素を交換できるなら生きていられるのか?答えはイエスです。前の7で学習したように、呼吸は体を構成している小さな細胞を生かすためにしているのですから。実際の授業では、図6のように呼吸する理由を1:血液を使ってからだの隅々まで酸素を運ぶため、2:酸素を使って養分を燃やして生活に必要なエネルギーを得るため、としました。


図6 呼吸をする理由

9 本時のまとめ
 いよいよ本時のまとめです。図7のように、生物(動物と植物)が呼吸する理由をまとめました。これは私がとくに重点をおいて指導している内容です。これまでの学習内容を振り返ってみると、
(1年生物学)実験2植物の呼吸で植物も呼吸していること、(1年化学)実験2有機物を熱するで食物としての有機物について、そして、(1年生物学)実験1光合成で光合成について学習しています。これらを総合すると、内呼吸と光合成の関係が浮き彫りになってきます。太陽エネルギーが形をかえ、有機物という物質内の化学エネルギーになり、それが酸素によって酸化(内呼吸)されて生物の活動エネルギーに移り変わるダイナミックな自然の営みに触れて欲しいと考えるからです。


図7 光合成と内呼吸の関係


B組における授業記録
 この枠内は、B組での実践記録の一部分です。細かい部分の説明方法が生徒の反応によって変わることが分かります。図8では、肺から細胞へ酸素を運ぶ手段として血管を記入していますが、逆に、細胞から肺へ二酸化炭素を運ぶ手段としても血管を書いています。

図8 外呼吸と細胞内呼吸の関係

 B組では、内呼吸に使われる有機物をブドウ糖に限定しようと試みています(図9)。

図9 細胞内呼吸のまとめ

 そして、図10で示したように、細胞内呼吸のまとめではブドウ糖を用いることによって光合成との関連を深めようとしていることが分かります。古い式は光合成を表していますが、新しい式も光合成を表しています。

図10 光合成から細胞内呼吸を導き出す

 余談として、腹式呼吸を紹介しています。腹式呼吸は横隔膜を上下させることで呼吸するのですが、図11には内臓を下げることで呼吸するように書かれています。これは違います。内臓は動かせません。横隔膜の筋肉を動かした結果として、内臓が下がり腹が出たような状態になります。

図11 腹式呼吸の模式図

C組における授業記録


光合成と内呼吸の関係について
 図7で示した光合成と内呼吸の関係は、私の理科教育の原点です。エネルギー循環を含んだ生命の営み(代謝)を、さまざまな視点から生徒に見つめさせたいです。この関係に感動するためには、たくさん勉強しなければなりませんが、努力して知的な興味を持続させることによって、この関係式はさらに新しい感動を呼び起こすと信じています。少なくとも来年になったら、化学分野で化学式を学習します。そのときには、この反応式を化学反応式として見直します。今は数人の生徒しか感動できないけれど、中学3年になったらさらに5、6人追加されると信じています。地道な学習によって得られる感動は他人に伝えることは難しいけれど、それができなければ学校の教師をしている意味がないと思います。
2005年盛夏

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(C) 2005 Fukuchi Takahiro