このページは中学校2年理科『生物』/takaの授業記録2003です

観察12 肺と2つの呼吸
              
                   2003 12 8(月)
                   各教室

 呼吸とは何でしょう?

 一般には酸素を吸って二酸化炭素を吐き出すこと(外呼吸)です。つまり、肺の中にある無数の肺胞の毛細血管で酸素と二酸化炭素のガス交換を行われているわけです。しかし、もう1歩進めて、何のために酸素を取り入れているのか考えて下さい。血液中に取り込まれた酸素は何をしているのでしょう。また、二酸化炭素はどこで発生しているのしょう。今日は、私たちの体をつくっている小さな細胞が栄養分を酸化しエネルギーを取り出し、いらなくなった二酸化炭素を排出していること(内呼吸)を学習します。


授業の流れ
1 横隔膜と肺の動き
(腹式呼吸)

(1) 演示実験を見る
 図1のように、市販の実験装置を使って説明して下さい。横隔膜に相当する白いゴムを引っ張ると、肺が膨らみます。全体に説明した後、座席順に回しても良いですが、強く動かすとゴムが外れてしまうので、丁寧に扱うよう注意します。また、私の学校でもそうしたが、理科室に長期保存されてたものは横隔膜に相当するゴムが劣化・破損している場合が多いので、、市販のゴム風船を半分にして利用してすると良いでしょう。付属のゴムも役に立たないことがほとんどです。なお、生徒の目の前で横隔膜に相当するゴムをはめることは、生徒の感心を高める結果になるのでお勧めです。

図1 市販の横隔膜と肺の関係を説明する実験装置



(2) 自分の身体の心臓、肺、横隔膜を確かめる
 説明の例
 「では、自分の横隔膜を調べてみましょう。身体の真ん中にあります。全員で、一斉に調べますよ。まず、ろっ骨の下を触って下さい。ちょうどこの辺りに横隔膜があります。その上には心臓と肺しかありません。心臓の位置も確かめましょう。心臓はもう少し上で、ろっ骨が左右に別れるところがありますね。そこより2、3センチメートル上にあります。身体の中心にあると考えて良いですが、ほんの少しだけ左にあります。大きさは、ゲンコツぐらいです。形はハートみたいなものです。そして、肺は、とても大きくて、ろっ骨の下から鎖骨の上まであります。吃驚するくらい大きくて、体積は4リットルぐらいあります。」
 「ここで、先生が学生のときに撮ったレントゲン写真(図2)を紹介するので、これで確かめて下さい。」


図2 私のレントゲン写真クリックすると拡大します

(3) 学習プリントにまとめる
 図3のように、単純化してまとめても良いでしょう。なお、この人型は前回使ったものと同じです。


図3 横隔膜と肺の関係

2 肺胞と毛細血管

肺と肺胞の説明例
 「次に、肺の中では空気中にある何かと何かを交換しているのですが、それらは何と何ですか?・・・そうですね。酸素と二酸化炭素です。それでは、口・鼻のところに赤い丸青い丸を書きます。イメージカラーととして赤を酸素青を二酸化炭素にしましょう。もちろん、自分のイメージがある人は何色でも構いません。」
 「次に、気管を通って肺の中に入った空気から酸素を取り出すようすを書くために、肺の一部を拡大します。理科便覧40ページに詳しく書いてあるので、それを参考すると良いです。ポイントは葡萄の房のような形をした肺胞です。その周りには毛細血管がありますが、肺胞までスケッチしたら止めて下さい。先生が毛細血管を説明した後に、書き加えます。」


図4 肺胞と毛細血管についてまとめたA君の学習プリント

肺胞を取り巻く毛細血管の説明例
 「ここまで書けましたか。じゃあ、次に、どうやって酸素は心臓まで行くのでしょう?」
 「B君!」
 「そうですね。血の中に入って流れていきます。実際の肺胞の周りには、たくさんの毛細血管が取り囲んでいますが、本物のようにスケッチすると分からなくなるので、黒板には1本の毛細血管だけを取り出して説明します。おっと、まだ皆さんは書いてはいけません。説明を聞いてから、書いて下さい。まず、血管を書きます。黒板では薄く赤を塗りましたが、皆さんは塗らない方が良いです。さあ、ここから本番です。肺胞の中に、赤い丸青い丸を書きます。すると、、どちらかの丸が血管の中にすすすっと入り込んでしまうのですが、どちらでしょう? 全員に聞きます。だと思う人。それだけですか?」
 「正解! 赤は酸素を表わしていますね。矢印を書きましょう。」
 「次の質問は、ちょっとだけ難しいです。血液がこちらから流れてきたとすると、その血液には赤丸青丸のどちらが多いでしょう。これも全員に答えてもらいます。赤丸が多いと思う人?」
 「・・・」
 「青丸が多いと思う人?」
 「正解! 身体の細胞が酸素を使ったので二酸化炭素が多い血液になっています。ここまでを模式的に書くと、毛細血管には青丸がたくさん流れてきて、それが肺胞のところで、1つ、2つ、3つと取り出されていき、逆に、酸素が1つ、2つ、3つと増えていき、心臓に向かうときには赤丸で一杯になります。では、ここまでスケッチして下さい。」

図4 肺胞と毛細血管についてまとめたBさんの学習プリント

3 2つの呼吸
(1) 表にしてまとめる
(2) 実験:息を何秒止められるか?

方 法
1 全員起立させた後、教室の時計を見ながら一斉に息を止める
2 手で、鼻を押さえさせる
3 息をした人から着席

外呼吸 内呼吸
肺で、酸素と二酸化炭素を交換 1つひとつの細胞内で、酸素と二酸化炭素を交換
自分の記録を記入する
本校の最高記録1分25秒でした
2〜3時間が限界
. 酸素+ 養分→ 二酸化炭素+ 水+ エネルギー

(3) 内呼吸について説明を聞く
 ここからの今日の授業のメインです。先生がんばって下さい。

止血・人工呼吸の話(内呼吸)
 「さて、これから恐ろしい話をしますが、もし、指が1本、完全に切り落とされてしまったらどうしますか。気を失わないように指を拾い、病院に行きますが、落ちた指は、できれば冷やたまま持っていきましょう。腐らないようするのです。1、2時間なら上手く引っ付きます。しかし、それ以上になると細胞が死んで腐ってしまい、どんなに上手な医者でも不可能です。また、手首から先が落ちたらどうしましょう。これも同じようにして病院に運びますが、手首からたくさん出血しているので、それを止めなければなりません。止血、つまり、血を完全に止めます。具体的には、こんな風に、近くにある紐を使って腕をぐるぐる縛り、さらに、棒切れを差し込んで締め付けます。これ出血多量で死ぬ可能性は減りましたが、そのまま他っておくと、縛ったところから先が腐って死にます。その限界の時間を知らせる為に、紐に、止血した時間を記入します。必要に応じて、紐を緩めて血液を流します。細胞は血液中の栄養と酸素を使って生きているのです。また、血液がなくても生きていられる時間は細胞の種類によって違いますが、脳細胞は5分間血液が来ないと、ほとんど死んでしまうので、倒れている人を助ける場合は、まず、呼吸を調べます。停まっていたら、すぐに息を吹き込んであげましょう。まず、酸素です。みなさんの吐いた息には十分な酸素が含まれているので、とにかく吹き込んで、倒れている人の血液に酸素を入れます。そして、心臓も停止しているなら心臓を押しましょう。きちんとできれば何時間も生きていられます。食事はなくても大丈夫。とにかく、血液中に酸素を吹き込んで下さい。脳細胞に酸素を与える必要があるのです。脳細胞はまっ先に死ぬので、身体が生きていても脳が死んでしまった植物人間にならないよう、冷静に息を吹き込みましょう。」

(4) 内呼吸をまとめる
酸素+ ブドウ糖→ 二酸化炭素+ 水+ エネルギー
→ 内呼吸の反応式は、1年生のときから連続して定期テストに出題しているので、正解率は8割を超えています。ただし、でんぷん養分などの答えは、血液中を移動できるブドウ糖に変更しました。

(5) 2つの呼吸(外呼吸と内呼吸)についてまとめる
 図5のように比較対照するようにしてまとめると良いでしょう。

図5 2つの呼吸についてまとめたCさんの学習プリント

4 本時のまとめ
 生徒に自由な感想などと書かせて下さい(図6、図7)。

図6 Dさんの感想

図7 Eさんの感想


◎ A君の学習プリント


評価基準
1 自然事象への関心・意欲・態度
 A 息を止める実験を、家庭で2回以上繰り返すことができる
 B 肺のつくりと働きを正確、かつ、丁寧にまとめることができる

2 科学的な思考
 B 肺胞で、酸素や二酸化炭素が交換されるようすをイメージすることができる

3 実験・観察の技能・表現
 A 長く息を止めていられる方法を考えながら、実験することができる
 B 肺胞でのガス交換を正しくスケッチすることができる

4 自然事象についての知識・理解
 A 内呼吸の反応式を正しく理解し、記述することができる
 B 外呼吸と内呼吸の違いを正しく説明することができる


授業を終えて
 前回の人型を使ったので、「先生、また?」と声が聞かれた。2日目の反応としては悪くないが、マンネリにならないよう気をつけよう。今日はこの人型のどの部分だろう、と興味を持たせるように指導せねば・・・

 酸素が赤血球のヘモグロビンによって運搬されることは、2時間後の『観察14血液』で学習する予定。

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