このページは中学校2年理科『生物』/takaの授業記録2003です

観察11 吸 収
        
                   2003 12 5(金)
                   各教室

 消化はテスト前に学習しましたが、すっかり忘れてしまった生徒も多いので、今日は狭い範囲をきっちり学習することにしました。テーマは小腸、消化と吸収の主人公です。しかし、いくら丁寧に進めても30分ほどの内容なので、その後は進路の話をしながら学習意欲を高めることにしました。

 また、本時から数時間連続して、図1のような人型を学習プリントに印刷しました。同じ人型をくり返し使うことによって、体内における器官の位置を系統的に理解できるだろうと考えたからです。

 
 図1 学習プリントに印刷した人型


授業の流れ
導入(消化管の復習)

小腸内部(柔毛)の構造(毛細血管とリンパ管)

柔毛のはたらき(消化された物質を吸収する)

肝臓のはたらき(吸収された物質を貯蔵する


1 導 入
(消化器官の復習)
 テスト後で、エンジンがかかっていない生徒が多いので、テスト前の復習から始めましょう。教科書を開け、学習プリントに1本の消化管を記入します(図2)。そして、この消化管のうち、本時は小腸内部の柔毛を詳しく学習します。授業後半には、柔毛で吸収した物質を貯えておく肝臓について簡単に触れます。

説明の例

 「プリントには消化器官が印刷してありますが、復習から始めます。黒板の絵を見て下さい。『口』から入ってきた食物は、『食道』を通り、『胃』で消化・分解され、『小腸』でさらに分解されながら体内に吸収されます。その後、『大腸』で水分を吸収され、『肛門』から糞として出て終了ですが、今日は、『小腸の吸収について』だけ学習します。教科書は1ページだけです。96ページを開けなさい。」
 「開けましたか?」
 「準備は良いですね。教科書を見ると、本文の下に図がありますが、授業の後半でスケッチしますので、そのスペースを確保しながらプリントにまとめましょう。ではでは、教科書を読みます。読んでくれる人?!」
 「はい、A君お願いします。」
 「はい、ありがとうございました。では、さっそくプリントにまとめてみます。1番初めのポイントは柔毛です。」


図2 A君が書いた消化管



2 小腸内部(柔毛
じゅうもう)の構造
 テスト前に柔毛という言葉は学習しています。ここでは吸収するための表面積を増やすための工夫を具体的に説明します。また、消化酵素によって分解され、柔毛で吸収できるように4つの物質(ブドウ糖、アミノ酸、脂肪酸、グリセリン)について復習することも忘れないようにしましょう。学習プリントには、図3のように、長い小腸内部がさらにぐにゃぐにゃに曲がった無数の柔毛があるように記入させます。

指導のポイント
 もう少し丁寧に説明すると、小腸の内側に螺旋状のひだがあり、ひだの表面に無数の柔毛があります。しかし、ひだについて説明すると、生徒の多くは柔毛まで行き着かなくいので、ひだの説明は省略する方が無難です。

柔毛の面積の説明例
 
柔毛は吸収する面積を広くするてためにテニスコート1面分あります。イメージが膨らむように具体的に説明して下さい。
1 6メートルのゴムホースをイメージさせる
2 それを折り畳んでお腹にしまうと、小腸になる
 → 生徒は驚きの声を上げるでしょう
3 江戸時代の切腹の話をする
4 くり返し、柔毛を平らにすると教室の3倍以上の面積になることをイメージさせる


図3 柔毛についてまとめたB君の学習プリント

3 柔毛内部の構造
 
図3、4、5のように、はじめに書いたスケッチから連続して拡大図を書かせるようにすると良いでしょう。小腸内部をいろいろな物質が消化されながら、そして、吸収されながら移動していくことがイメージできるようにします。

説明の例
「次に、小腸の一部を拡大して柔毛をスケッチします。一部を四角に切り取って拡大すると、内側にたくさんの柔毛があって、さらに柔毛の1つを拡大すると、その中に毛細血管あります。まず、ここまで書きなさい。」


図4 小腸、そして、柔毛内部を拡大したC君

 説明の続き
 「栄養素が吸収される様子を説明しますよ。まず、鉛筆を置いて黒板を見なさい。」
 「リンゴを食べると、噛み砕かれたり、だ液の消化酵素によって、どんどん小さくなっていき、最後は・・・になります。・・・が分かる人はいますか?」
 「はい、ではD君!」
 「なるほど、ビタミンになりますが、今日学習したものから選ぶと何でしょう。」
 「はい、Eさん!」
 「そうですね。ブドウ糖になります。リンゴのままでは吸収できないので、小さく分解された『ブドウ糖』になって吸収されます。ブドウ糖は、とっても小さな物質なので、柔毛の中にある毛細血管へ、じわじわじわーっと入り込むことができます。リンゴは血管の中に入れませんが、どんどん小さくしていったブドウ糖なら、じわじわっと吸収されます。イメージして下さい。とても小さなブドウ糖が、毛のように細い毛細血管へしみ込んでいきます。」
 「イメージできましたね。それから、ブドウ糖の他にアミノ酸も毛細血管にしみ込みできますが、脂肪酸とグリセリンはできません。では、どうやって吸収するかと言うと、もう1つ細い管があります。何菅か、分かりますか?」
 「F君!」
 「その通り。リンパ管です。血管の他に、リンパ管という管が体中に走っています。皆さんは、リンパ腺と言う言葉を聞いたことがありますか?ちょっと首ところ、この辺を触って下さい。ぐりぐりありますが、これがリンパ管が集まった『リンパ腺』です。柔毛から吸収された脂肪酸とグリセリンは、リンパ管の中で脂肪になり、首のところまでやってきてから全身に運ばれます。他には、脇の下、脚の付け根部分にもリンパ腺があります。」
 「では、色鉛筆を2色用意しなさい。毛細血管に入るものを赤、リンパ管に吸収されるものを黄色で色分けします。あっ、黄色が分かりにくい人は、自分の好きな色で良いですよ。」

図5 
小腸、そして、柔毛内部を拡大したD君

4 肝 臓
 次に、小腸で吸収した物質を貯蔵する肝臓について学習します。図6には、ブドウ糖やアミノ酸をグリコーゲンという物質に変えて貯蔵する肝臓のはたらきをまとめています。


図6 肝臓のはたらき

ポイント
・ 吸収されたブドウ糖やアミノ酸はどうなるのか? これをきっちり押さえること
・ それらは血管を通って肝臓に運ばれ、グリコーゲンとして貯蔵される
・ 肝臓にはその他にも重要な働きがありますが、今日はここまで
(その他のはたらきは腎臓のところで学習)


  ◎ Aさんの学習プリント


評価基準
1 自然事象への関心・意欲・態度
 B 吸収のしくみについて、正確かつ丁寧にまとめることができる

2 科学的な思考
 B 小さくなった栄養素が毛細血管の中に吸収されていくようすとイメージすることができる

3 実験・観察の技能・表現
 B 小腸内部の柔毛のつくりとしくみと正しくスケッチすることができる

4 自然事象についての知識・理解
 B 消化吸収のしくみについて正しく理解することができる


授業を終えて
 教科書1ページだけ、という導入が良かったのだろう。生徒は学習意欲をもって授業に取り組んだ。何を学習すればお終いなのか、そのゴールが明確なのはとても大切なことだと痛感した。/ 毛細血管はこれまでに学習しているので、生徒はイメージしやすいようだ。しかし、リンパ管については初めて聞く名称なので、次の(3)のように丁寧に説明する必要がある。期末テスト前に説明したつもりだったが、くり返しリンパ管という単語を聞かせるだけでも学習効果がある。

note
※ 前回の確認も含む
1 3学期に入ってから化学分野に入ればよい
2 2学期いっぱいで生物学分野を終了する
3 今日からの主な内容は、表1のとおり

表1 2学期終業式までのスケジュール

−4時
消化器官
・ 消化管と消化器官
・ なぜ食べるのか(エネルギーを得るため、内呼吸には触れない)

−3時
食物と消化酵素
・ 有機物(炭水化物、タンパク質、脂肪)の分解・消化
・ 消化酵素(食物を加水分解する、働く物質が決まっている、繰り返し働く、生体内で反応、37度Cでよく働く)

−2時
実験1だ液の働き
・ デンプンとブドウ糖の関係
・ だ液(アミラーゼ)の働き

−1時
消化酵素のまとめ
・ 消化器官と消化酵素、および、消化酵素と食物の関係
・ 胃から分泌される消化酵素ぺプシンはPH2で働く
・ 小腸の柔毛(毛細血管、リンパ管)

第0時
(本時)
1 柔毛のはたらき(消化された物質を吸収する)
2 肝臓のはたらき(吸収された物質を貯蔵する)

第1時
肺と2つの呼吸
1 横隔膜と肺の動き(腹式呼吸)
2 肺胞と毛細血管
3 2つの呼吸(外呼吸と内呼吸)

第2時
心臓と2つの循環
1 体循環と肺循環
2 動脈血と静脈血
3 心臓のつくり
4 血管の種類

第3時
血管と血液
1 心臓と4つの血管
2 血液の成分
3 心拍数を測定する

第4時
腎臓と肝臓
1 尿について
2 腎臓や膀胱などの位置
3 腎臓の内部構造とはたらき
4 肝臓のついて

第5時
動物の分類1(生殖)




第6時
動物の分類2(無脊椎動物)




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