このページは中学校2年理科『生物』/takaの授業記録2003です

実験1 だ液のはたらき
                   2003 11
                   第2理科室

 本時は、人体の学習にとって最も重要な実験の1つでしょう。食物の消化吸収の学習は、消化器官の名称・そこから出される消化酵素名・酵素が作用する物質名など暗記するものが多いので、是非ともだ液とデンプン・ブドウ糖の関係だけは印象的に記憶させたいです。写真1はヨウ素液とベネジクト液を使った実験結果ですが、ほどんどの生徒がこのように美しい実験結果を得ることができます。


写真1 ヨウ素とベネジクトの反応

準備するもの

生徒(班)

先 生
試験管4本
試験管立て
50mlビーカー
デンプン水溶液
ヨウ素液(スポイトたくさん)
ベネジクト液(スポイトたくさん)
ガスバーナー


授業の流れ
1 導入とだ液の採取方法(7分)

(1) 授業プリントをもらう
(2) 本時のねらいを知る
 自分のだ液を採取することがもっとも重要です。きちんと準備できれば、その後の実験がスムーズに進だけでなく、実験から得られた良好な結果に満足するでしょう。授業が始まってから数分間が勝負です。だ液は汚いものでないこと、臭いはないこと、そして、実験結果がとても美しいことを紹介して下さい。次に、だ液に対する抵抗感をなくし、自分のだ液を採取したくなるような話し方の例を紹介します。また、事前にだ液の実験を行うことを紹介しておくことも良いでしょう。その場合は、もちろん前時に話をします。また、いくつかのクラスを受け持っている場合は、友だちから意欲をそそるような会話が出るように配慮することも大切です。


イメージが良くなるだ液の採取方法

 今日の実験は面白いですよ。た・だ・し・、だ液を使わなければなりません。それで、だ液っていうとみなさんは汚いイメージを持ちますが、口の中にあるときは全然汚くありません。だって、みなさんの口の中にずっと24時間あるわけですし、病気でなければ口の中が臭いこともないし、それによく考えください。この教室にだ液はありますか? ないでしょ。口の中にある新鮮なだ液は、とっても新鮮で、しかも綺麗なんです。臭いも、当然ありません。確かに、道路でだ液をぺっ、とやると臭くなりますが、あれはだ液が腐ったからです。マナーの悪い人のだ液は臭い、からではありません。何でも腐ったもの臭くなります。肉でも野菜でも、どんなに美味しいフルーツでも腐ったらダメです。だ液はフルーツよりも上質な消化酵素を含んでいるから、腐りやすいだけです。だけど、今日はフレッシュなだ液を使うので絶対に臭くありません。実験に使う時間も20分までです。

 さて、だ液の取り方はいろいろありますが、1番簡単で自然な方法を紹介しますので、良く聞いて下さい。まず、口を濯ぎます。いつものようにビーカーを使いますが、今日はかわいく50(ml)を使いましょう。

 ビーカーを良く洗って水を入れ、口の中を何回か漱ぎます。この時、いかにも手軽にやっている感じで、ささっと行うことが大切です。また、事前に理科準備室で歯磨きしておくことは言うまでもありません。さらに、口から水を出す場合は、必ず、片手で口元をおおうようにしましょう。とても大切なマナーです。私のマナーはここまでですが、普段からきちんとされている先生は、ビーカーの水を口に入れる時も、さり気なく片手で口元をおおうことも有効だと思います。ほんの小さな動作や、普段見ることのない先生の仕種によって、大きなやる気を引き出すことができます。

 さあ、これで口の中がきれいになりましたので、もう大丈夫です。準備オッケーです。いよいよだ液を採取しますが、ぺっ、とはやりません。それでも実験はできますが・、口の中にしばらく水を含んで自然に出てきてものを使います。そうすれば、だ液が自然に水に溶けていますので、実験に使った時も良い結果が得られます。水は少しだけにします。ビーカーに半分、25mlで十分です。口の中に含んでいる時間は30秒。教室の時計を見てはかりましょう。ちょっと先生が採取してみますので、見ていて下さい。おもむろにビーカーに水を入れ、生徒全員の前で水の量が半分であることを確認します。ちょうど半分ですね。では、失礼。そして、ビーカーの水を一気に含みます。そして、背中を向けて30秒待ちます。30秒経ったら黙って生徒の方に体を戻し、にこっとうなずきます。そして、両手でビーカー全体を包み込み、同時に口元も見えないようにして、口の中の水をビーカーに戻します。ここで、すぐに見せてはいけません。一言付け加えます。

 できました。だ液をふくんだ水です。先生の手の中にある水には、デンプンを分解する消化酵素が含まれています。デンプンを何に分解するかは、昨日学習しましたね。・・・そうです。ブドウ糖に分解します。この水を使うと、デンプンがブドウ糖に分解します。消化酵素の名前は覚える必要はありませんが、専門書を調べるとアミラーゼ、と紹介されています。アミラーゼを見てみましょう! ほら、これです。ここで、小さく手を開けて下さい。いかにも貴重な水溶液であるように演出することが大切です。綺麗ですね。無色透明でさっぱり分かりませんが、この中にアミラーゼと言う消化酵素が含まれています。

ワンポイント
 うっそー、いやだーなどの発言が飛び出して場合は、間髪を入れず「えっ、@@君のだ液は臭いの?(汚いの?)」と逆に質問しましょう。そんなことはない、と大きな声が返ってくるはずです。

2 デンプンとブドウ糖の関係(7分)
 デンプンが分解されるとブドウ糖になることを知らせます。デンプンについては、実物を見せながら紹介すると良いでしょう。水に溶けないけれど、熱湯には簡単に溶けること。また、クラスの人気者に登場してもらい、デンプンを舐めさせることも非常に効果的です。口の中に入れた時はぱさぱさして何の味もしませんが、やがて、甘くなってきます。だ液に含まれるアミラーゼによってブドウ糖に分解されたからです。とても効果的なので、元気のよい生徒がそろっているクラスは同時に何人も登場してもらい、雰囲気を一気に高めて下さい。図2には、デンプンとブドウ糖関係を示しました。また、図3のように実物を添付するのも効果的です。


図2 デンプンとブドウ糖の関係

 いくつものブドウ糖がつながったものをデンプンと言います。逆に、消化酵素を使ってデンプンを分解するとブドウ糖になります。なお、消化酵素ではなく、熱で分解すると水、二酸化炭素、炭になってしまいますが、ここでは触れない方が無難でしょう。授業最後のまとめの時間に、何人かの生徒が自主的に気づくか、あるいは、気づくように促すようにとどめるほうが不必要な混乱を防げます。


図3 添付された実物 2000年度の実践より

デンプン水溶液の作り方
1 熱湯を用意する
(湯沸かし器を最大にして出てきた熱湯で十分です。少なくとも60度Cは必要だと思いますが、正確な温度は知りません。悪しからず・・・)
2 500mlビーカーに500mlの熱湯を入れる
3 2に、10g程度のデンプンを入れる
(少ない量で十分に反応します)
4 良くかき混ぜる
5 冷ます
(熱湯にだ液を加えると、アミラーゼが破壊されます)
6 体温(37度C前後)になったら出来上がり

3 指示薬の確認(7分)
 本時は2種類の指示薬を使います。図4のように、色の変化を中心にしてまとめると分かりやすいと思います。そして、実際に指示薬の反応を演示して下さい。


図4 指示薬の反応

ヨウ素の反応
デンプン水溶液+ ヨウ素→ 
青紫色
ブドウ糖水溶液+ ヨウ素→ 変化なし
※ ヨウ素液の原液は焦茶色に見えるので、水で薄めて黄色にして下さい

ベネジクト液の反応
デンプン水溶液+ ベネジクト液→ 変化なし(過熱する)→ 変化なし
ブドウ糖水溶液+ ベネジクト液→ 変化なし(過熱する)→ 
赤褐色
※ 過熱しなければなりません

4 実験手順の確認(7分)

 手順がやや複雑なので、あらかじめ図5のように印刷したプリントを配付します。

手順の説明例
1 左端に試験管にデンプン水溶液を入れて下さい。量は試験管の半分ぐらいです。

2 次に、この試験管を半分に分けて下さい。つまり、まん中の試験管2本に1/4ずつにします。そして、上の試験管にはだ液を、下の試験管には水を入れます。下の試験管は上の試験管と比較するために大切です。それぞれ、試験管の半分までくるようにだ液、あるいは、水を入れて下さい。

3 そして、それぞれの試験管に対して、ヨウ素液とベネジクト液を加えて反応を調べます。ヨウ素に反応すればデンプンが、ベネジクト液に反応すれがブドウ糖があることが分かります。

※ 図6はここまでの流れ図です。


図5 あらかじめ印刷された学習プリントの一部


図6 実験手順を示した流れ図

5 生徒実験
(1) デンプン水溶液の配付(先生が準備しておいたものを、各生徒が適量ずつもっていきます)
(2) 試験管の準備
(3) だ液の準備(班の代表者になることが多いのですが、できるだけ1人1実験になるように動機付けして下さい)
(4) 温度計の準備(体温と同じくらいの温度になるようにします)
(5) 図6に示したように4本の試験管をセットする(だ液をまぜた試験管は、親指で上部を押さえて強く振ることによって完全に混合させて下さい)
(6) 図7のように3分間放置する(意外に短い時間でデンプンは分解されます)
(7) ヨウ素液、ベネジクト液の配付(6)までの完了した班から先生が配付します。4本の試験管の中身と、指示薬の使い方を確認しながら配付すると良いでしょう。また、ベネジクト液は過熱しなければなりませんが、班ごとにガスバーナーを準備させても煩雑になるだけなので、教師用実験台に1つだけ準備すれば十分でしょう。安全も確保できます。)
(8) 結果をまとめる
 
 図7 試験管を体温に保つ2000年度の実践から

6 本時のまとめ
 試験管の色の変化をまとめるだけで、精一杯のようです。時間があればオリジナルな発見を考察できると思うのですが、、、写真8は、授業後の理科室で撮影したものです。背景の黒板には指示薬の反応がまとまめらています。試験管立ての後ろ左にはヨウ素液、後ろ右にはベネジクト液が入ったビーカーがあります。それぞれのビーカーには何本かのプラスチック製スポイトが入っていますが、スポイトに指示薬を半分ぐらい入れた状態で配付すると良いでしょう。また、試験管立てに並んでる試験管は左から、デンプン+だ液+ヨウ素液、デンプン+だ液+ベネジクト液、デンプン+水+ヨウ素液、デンプン+水+ベネジクト液です。

写真8 授業後の理科室


図9 A君がまとめた実験結果

 図9にはA君がまとめた実験結果を示しました。また、図10は2000年度の実践でのまとめです。


2000年度の本時のまとめ

試験管A 試験管B 試験管C 試験管D
デンプン デンプン デンプン デンプン
だ液 だ液
ヨウ素液 ヨウ素液 ベネジクト液 ベネジクト液

青 紫

変化なし
(黄)

変化なし
(水色)

赤褐色

 


授業を終えて
 大変忙しい授業でしたが、90%以上の生徒が満足できる結果を残します。お陰で、授業中の記録写真を撮っている時間がないのですが、とにかく実践しなければならない実験です。先生方、敬遠することなく積極的に取り組んで下さい。また、スクールランチの業者の方にお願いして、1食分いただいてきてもよいでしょう(写真8)。大量のデンプンが白飯に含まれているのは当然ですが、実際にヨウ素液を加えたの色の変化には目を見張ります。また、クラスの人気者に登場してもらい、白飯を1分間以上かんでもらい、砂糖のように甘くなる実験をすることも動機付けには有効です。実際のランチメニューにはたくさんの食材の含まれているので、それらのどれにデンプンが含まれているか確かめるだけでも盛り上がりますし、されに、だ液に含まれるアミラーゼの作用を付け加えるなら多彩な実験になることは間違いありません。タンパク質や脂肪、その他の消化酵素にまで話が膨らむことでしょう。ただし、50分の授業ではまったく余裕がありません。もし、わずかな放課の時間や、補欠授業の時間をいただけるなら10分でも有効に使えます。生徒も熱心に実験したり結果をまとめることでしょう。選択理科の授業や本時の応用として余分に1時間確保する方法もあります。


写真8 本日のスクールランチ(ヨウ素液に反応する食材は?)

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