このページは、中2地学/takaの授業記録2001 です

実験2 雨(雪)を作ろう
                   2001 2 9(金)

 とある本を読んでいたら、ビーカーにドライアイスを入れてじっとしていれば、周りの空気の温度が冷えて水蒸気(気体)が雨(液体)になり、やがて、雪(固体)になるとあった。嘘のようだけど、本当のような気もするのでやってみることにした。

(上:Aさんの学習プリントから)

(上:雪を観察する生徒)


◎ 授業の流れ

1 雲が発生し、雨や雪が降る原理

(1) 地表付近で水蒸気を含んだ空気のかたまりができる
 → 原因はいろいろある
 → その1つは、大陽エネルギーで温められた海や湖から発生した水蒸気

(2) (1)の空気が上昇する
 → 一般的に水蒸気を含んだ空気は温かい
 → 上昇気流が発生する

(3) (1)の空気が冷やされる
 → 100メートルにつき0.6度C温度が下がる

(4) 露点になり、水蒸気が水なる
 → 露点とは、空気中の水蒸気が水になるときの温度
 → 露点に達した空気の湿度は100%である

(5) (4)が発達して雲になる

(6) (4)がさらに上昇すると、氷の雲(雪)になる

(7) やがて、上昇気流が押し上げようとする力より重力の方が大きくなる

(8) 雨や雪が降る

(9) 落下しながら、雨や雪が成長する

(10) 雨や雪が地表に達する
 → この時の雨や雪は等速直線運動となる


  (上:Aさんの学習プリント)

2 教科書にある実験
<方 法>
1 びんの中に水蒸気を含んだ空気を入れる。
 (湿度100%に近いほどよい)
2 線香の煙り(雨の核となるもの)を入れる 
 この説明として、ビールの泡は汚いコップや、割り箸の木屑をきっかけとして発生することを話してやるよい。

3 ゴム栓、ゴム管、ピストンをセットする
4 ピストンを引く

(上:Bさんの学習プリント)

<結 果>
・ ビンの中に雲ができる。
・ また、ピストンを押すと、雲が消える。
・ 温度を測定できる場合は、0.3度C前後の変化が確かめられる。
  
<考 察>
・ ピストンと引くと雲ができたのは、温度が下がって『露点』に達したからである。
・ 逆に、ピストンを押すと空気が圧縮され温度が上がり、雲が消える。

<私の感想>
 断熱膨張につていは、難しいので理論だけにとどめる。必要なら、実験演示だけで十分だろう。

===

2 ドライアイスで雲(雪)を作ろう
 「先生、雪が降ってきた」
 「うっそー。」
  大体、私自身、期待していないのだから、降るかどうか半々だから、生徒が「降ったよー」と言ってくれて、私の方が大喜びなのである。

「雪が降った班?」
ほぼ半数の生徒が手を上げた。ここまで、来れば成功である。

ビーカーの底に結晶ができ始めている。よくよく見れば、六角形をしているはずだ。

 やかんの口から出てくるゆげは何でしょうか。みなさんも考えて下さい。水、それとも、水蒸気。二者択一です。ほどんどの生徒は水蒸気と答えます。

 正解は(雲)です。水蒸気は目に見えない状態だからです。今、あなたがいる部屋にもたくさんの水蒸気があるけど、見えないでしょ。コンピューターの画面とあなたの間には、たくさんの水蒸気(気体)が飛び回っているのです。

また、テレビや舞台で出てくる白い煙のようなものは何ですか?

 ドライアイスではありません。

 確かにドライアイスを使って作りますが、ドライアイスでも二酸化炭素でもありません。正解は水(雲)です。これも今日の実験で簡単に確かめることができるでしょう。

 なぜなら、ドライアイスを水に入れた時、二酸化炭素が大量に発生しているはずですが、それは見えません。気体は見えない状態なのです。ですから、あの白い煙は空気中の水蒸気が冷やされて液体になり、目に見えるようになったものであると結論付けられるのです。


   (上:Bさんの学習プリント)

今から思えば、ビーカーの下からまっすぐに降りる白い小さな水滴は「雨」だった。それをもっと、明確に生徒に知らせておけば良かったと思う。また、雪は、その雨の中で成長するわけだが、もしかしらた、ビーカーの底にできた小さな結晶が落ちてきたときに、できたように見えただけかもしれない。その辺りは明確になっていないが、だいたい、雪なんてものは、水の固体が美しく結晶したものと考えればよいとすれば、今日の実験は十分に成功だったと言える。

また、実験が終ってから、各班に少しずつドライアイスを残してやり、自由に遊ばせた。その中で面白かったものは、ビーカーの中に息を吹きかけると、雪が発生すること。でも、これは、ドライアイスに付着した「霜(結晶になっていない固体の水)」が吹き飛んでいるだけのような気もする。良く分からない。

 また、机の上に直接置いて、鉛筆でアイスホッケーを楽しんでいるもの。(摩擦がほとんどないので良く滑る)、発生した水蒸気を集めてビーカーにいれ「まあ、一杯どうぞ!」と宴会の雰囲気で一気飲みをする生徒。私も1杯ご馳走になったが、二酸化炭素も沢山含まれているので、喉が酸性になってひりひりするというか、酸っぱいような感覚になる。

雪のできる条件は、ドライアイスよって冷えた空気、氷点下から0度までの範囲である。

<ドライアイスの保存・使用方法>
1 小さなものより大きなものが良い。

 今回購入したもの
 ・ 15cm×30cm×1.5cm
 ・ 12個(3時間分×4個)
 ・ 100円/個

  
2 まず何回か新聞紙で包んでから、発砲スチルロール(ケーキ)の容器や冷凍庫に入れる。ただし、大量のドライアイスを保管した場合、気体になった二酸化炭素によって、冷凍庫の蓋が開いてしまうかどうかは不明。
今回は朝9時に購入した。午後の授業までに消えてしまうのではないかと心配していたが、ほどんど昇華していなかった。

3 生徒の班に配付する時は、新聞紙の上から金槌で叩いて割り、それをバットに入れて配布すると良い。ただし、ドライアイスの低温によりバットが曲がることも多々ある。

4 生徒には、
熱湯よりも危険であることを知らせる。
・ 皮膚との温度差は、熱湯の場合70度C(=100-体温)
・ ドライアイスの場合100度C(=77-体温)

5 ビーカーに水が入って入ると、その水を冷やすために沢山のドライアイスを使ってしまうだけでなく、できた氷がドライアイスを覆ってしまう(下の写真2枚)ので、必ず乾いたビーカーを使う。

(上と左: ビーカーの一番底にドライアイス。白く見えているのは水が凍った。)



  次時に向けて

雑 談
 5時間目の授業は、はっきり言って命懸けだった。つまり、湿度を上げるために、実験室の窓を締め切って、全てのガスバーナーで湯を作り始めたのであるが、目が痛いのである。どこかの班で、あんぽんが何かを燃やしたのであろう。有毒ガスが発生したんだと思う。頭が痛いという生徒も出てきた。それでも、頑張って、(がんばっちゃいけないんだけど)湿度を上げつづけた。このクラスは、この有毒ガスが『核』となって雪が良く降ったけど、命賭けの実験であったことは否めない。

note1

雨を降らす、というタイルでも良かったと思う。

note2
A 温度が同じでも水蒸気量が増えるから
B 気圧が下がることにより温度が下がるから(断熱膨張)

・ 水分子の運動量から説明する
・ 練習問題
・ 『湿度100%の状態』 → 湿度100%の状態(水蒸気→液体、あるいは、固体)
・ 雲の温度は、気温と同じなので(マイナス70〜50度C)
・ いずれも『露点』に達することによる

それらの温度はいろいろである(30度Cの液体と20度Cの水蒸気)
・ 温度が下がって水になる(冷蔵庫)
・ 密度が高くなって水になる(やかんの湯気)

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(C) 2001 Fukuchi Takahiro