このページは、中3地学/takaの授業記録2001 です

隆起と沈降 ―リアス式海岸と砂浜―
                     2001 秋

 このページは2005年夏、4年前の記憶によって書かれたものです。また、画像資料として利用したのはCさんの学習プリントと教科書です。

授業前に考えたこと
・ 今日から土地の変化を学習する。
・ 社会科の先生と相談したところ、「扇状地やリアス式海岸など珍しい地形は学んでいるが、その原因については学習していないので、理科で学習して下さい。」とのこと。ただし、難しい内容ではないので2時間で完了したい。
・ 土地の変化を系統的に思考するためのポイント隆起と沈降、および、侵食と堆積は、私自身がくり返し授業の中で言葉を重ねたい。


授業の流れ
1 学習プリントの配付
(1分)
 教科書(新版中学校理科2分野下、大日本図書、2002年)に掲載されている日本列島の土地の上下の変化(図1左)と神奈川県三浦市付近の地形(図1右)を3枚コピーしたもの印刷しました。
図1 本日のCさんの学習プリント

2 土地の隆起と沈降(3分)
 土地が上下することはにわかに信じがたいけれど、1年間に数mm程度なら「そんなもんかなあ」と納得できる範囲です。「むしろ変わらない方がおかしい。」と説明しても良いでしょう。この隆起・沈降はごく簡単な説明にとどめて下さい(図2)。さもないと、誰も簡単に説明することができない原因について質問されることになるでしょう。


図2 隆起と沈降をまとめたCさんの学習プリント

3 名古屋の土地の上下の変化(13分)
 教科書の資料(図3)とても効果的です。いろいろな場所が、めまぐるしく上下しているからです。ここでは、私達の学区が今後どうなるかを調べるための準備として、学習プリントにコピーした図に色分け作業をします。

 さて、ここで生徒の実態を紹介しましょう。日本地図の上に、自分の住んでいる場所を指差せない生徒が数人(40人学級)います。中学3年生でも自分の位置すら分からないのですから、地図が読めない可能性も十分あります。なので、土地の上下の変動量を読み取れない生徒もたくさんいるのです。私の授業では、教科書をコピーして色塗り作業をさせていますが、たったそれだけでも非常の大きな発見をしている生徒が30%近くいるでしょう。


図3 日本列島の土地の上下の変化(1895-1965の年間平均)

4 名古屋の未来(10分)
 名古屋が年間4mmの割り合いで沈降していることが分かったところで、将来、どれだけ沈んでしまうのか計算してみましょう。イメージできる最大の時間として「自分達が死ぬまで」、次に千年後と1万年後を計算します。計算結果は、図4のようになります。

図4 名古屋の未来

 ここでの生徒の反応は残念そうです。沈降するより隆起する方が良いですからね。さて、次に自分が死ぬまでを計算すると、28cmも沈降していることが分かります。これは相当に深刻な問題です。実際は同じ速さではなく、遅くなったり速くなったり、さらには、沈降していたものが隆起したりするのですが、ここでは同じペースで沈降しているものとして考えます。さらに、1万年後には、私達の千鳥丘中学校は海に沈んでしまっているようです。まるで竜宮城です。ここで、教室の窓を開けて千鳥中学区を見渡してみましょう。すると、小高い丘陵地がたくさんあります。中学校は小高い場所にあるのですが、比較的遅くまで陸地でいられるようです。また、給水塔や幼稚園がある場所も陸地として残るでしょう。

千鳥丘中学校の海抜高度
 たまたま本校の生徒手帳には、海抜高度が書いてあります。きっと、理科に関心のある先生が掲載しておいてくれたのでしょう。調査年が分からないは残念ですが、これを生徒に調べさせると37メートルでした。そうすると、先に述べたように千鳥丘中学校はぎりぎり海に沈みます。生徒の中は、自分の家から魚釣りができると言って喜んだり、海の家を作ろうかなと計画したりする人もでてきます。

5 水準点(3分)
 教科書の写真を見ながら、土地の高さの基準として水準点があることを紹介します。これは海水面を基準にしているのですが、先程、生徒手帳で中学校の海抜高度を調べたのでスムーズに分かります。また、水準点は主な道路の脇に約2kmごとに設置してあるので、学区の中にもあると思うのですが、私の不勉強で位置が分かりませんでした。生徒にも尋ねたのですが、何人かの生徒がそれらしい場所を教えてくれたのですが、確認できませんでした。

6 神奈川県三浦市付近の地形(15分)
 図5は教科書のコピーにCさんが着色したものです。この付近の地形はリアス式海岸です。これから、この付近の土地が隆起した場合を考えますが、図5の海底には10メートルごとに等圧線が引いてあるので、10メートル隆起した場合と20メートル隆起した場合の地形を調べてみましょう。

図5 神奈川県三浦市付近の地形

隆起したときの地形を調べる手順
(1) 現在の陸地を着色します(図6下)
(2) 海底10メートルの等高線にまでを陸地の色で塗ります(図6中央)
(3) 海底20メートルの等高線にまでを陸地の色で塗ります(図6上)
(4) (1)→(2)→(3)の海岸線の変化を調べます。
(5) 沈降した場合(3)→(2)→(1)の海岸線の変化を調べます。

7 本時のまとめ(2分)
・ 大地は隆起・沈降をくり返している
・ 海岸付近が隆起すると砂浜になる
・ 海岸付近が沈降するとリアス式海岸になる

8 本時の感想、疑問、発見(3分)


授業を終えて
 生徒手帳に書いてある中学校の海抜高度が効果的だった。「えっ、手帳にそんなことが書いていあるの!」という意外性が、生徒の動機を大きく高める結果になった。これは自分の住んでいる土地の高さについて興味関心を高める大きな動機になったし、その後、この地域に水が侵入してきたとき、最後まで陸地として残っているかイメージさせるときにも役立った。

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(C) 2001-2005 Fukuchi Takahiro