このページは中学校1年理科『地学』/takaの授業記録2002です |
実習2 私の岩石標本
2002 12 18(水)
第2理科室、校庭理科の先生に怒られないか心配であったが、バラバラになった岩石標本をハンマーで叩き割ってプリントに張り付けることにした。全部で18種類。注意:私も理科の先生です。
(上:教師用実験台に並べられた岩石)
授業の流れ
ただ張り付けるだけでは能がないので、初めに岩石の分類を復習した。1 火成岩と堆積岩
<生徒への問いかけ>
「岩石は大きく分けると何種類になりますか?」
「6種類ではありません、火成岩と堆積岩の2種類です。」
「では、火成岩のところに書いて下さい。」
「火山をつくる岩石・マグマがひえ固まったもの」
「溶岩はマグマがそのまま固まったものなので、プリントの表には入りません。」
「次に、堆積岩のところに買いて下さい。」
「**をつくる岩石・いろいろな成分の粒が海底で固まったもの」
「**は何ですか?」
「そうですね、地層です。」
火成岩 堆積岩 火山をつくる岩石
マグマが冷え固まったもの地層をつくる岩石
いろいろな成分の粒が海底で固まったもの
2 火成岩の分類
<生徒への問いかけ>
「火成岩はいくつに分類されますか?」
「そうです、6種類です。」
「では、正しい位置に岩石名を入れて下さい。」
「色や組織によって決まっていましたね。」
火成岩 白 ← 灰 → 黒 800度C ← 1000度C → 1200度C (大) ← 粘度(中) → (小) 火山の形、および、噴火のようすはスケッチ 火山岩
斑状組織
(石基、斑晶)りゅうもん
流紋岩あんざん
安山岩げんぶ
玄武岩深成岩
等粒状組織かこう
花崗岩せんりょく
閃緑岩はん
斑れい岩
「よくできました。」
「ところで、今日注意して欲しいのは岩石と岩石の間が点線になっていることです。」
「実際にはこれらの中間の岩石があります。」
「半深成岩とうような説明が書いてあるので良く見て分類・添付して下さい。」
(上:この汚い字は誰だろう?)3 堆積岩の分類
<生徒への問いかけ>
「授業では6種類学習しましたが、覚えていますか?」
「まず、砂岩。砂粒の大きさは何ミリから何ミリでしたか?」
「0.06から2ミリメートルでしたね。」
「それより小さいもの、大きいものを何と言いますか?」
「また、その他3種類の堆積岩を書きなさい。」
でいがん
泥 岩
0.06mm以下さがん
砂 岩
0.06 - 2 mmれきがん
礫 岩
2 mm以上その他の堆積岩 チャート
生物(ケイソウ)の死骸石灰岩
生物(貝殻、サンゴ)の死骸ぎょうかいがん
凝灰岩
火山灰・軽石が固まったものその他の堆積岩 4 岩石の添付
順序よく並べておくこともできたが、無作為においた。結果は、『宝探し』をしているように楽しんでいた。早い生徒は10分で正確に並べ添付することができた。遅くても15分でほぼ完成していた。
(上:流紋岩を割ったら中が空洞になっていた。)
(上:各自のテーブルで岩石を分類する生徒)
(上:半深成岩は2種類だった)
実物を並べると、色や組織の違いが良く分かる。予め準備した15種類全てを分類・添付できた生徒には、校庭から岩石を採取するように指示した。いろいろな岩石を拾っていたが、1番人気はチャートだった。
(上:大人気のチャート。いろいろな色がある。)
生徒はチャートが好きである。名前が覚えやすいからであろう。ただし、「チャートって何?」と質問したら正確に答えれるかどうか疑わしい。しかししかし、今日の時点で、任意の石から、あるいは校庭からチャートを間違いなく拾い出せる生徒の割り合いは50%以上に達している。これが名南中学校の生徒の誇るべき才能である。他校なら数%かも知れない。次時は、校外で実習しようと考えている。
(上:校庭に軽石が落ちていた)
(上:火成岩6種類の覚え方が書いてある)
『リカちゃん焦ってゲロ吐いた』
『流紋岩、花崗岩、安山岩、閃緑岩、玄武岩、斑れい岩』◎ 生徒の学習プリント
(上:↑クリックすると拡大します)
評価基準
1 自然事象への関心・意欲・態度
A 校庭から数種類の岩石を採取し、添付することができる
B 15種類の岩石をていねいに分類・添付することができる
2 科学的な思考
B 岩石を成分や組織から判断し、分類することができる
3 実験・観察の技能・表現
A 校庭から岩石を採取し、正しく分類・添付することができる
A 校庭から数種類のチャートを探し出し、ハンマーで適当な大きさにして添付できる
A 2種類の半深成岩(火成岩)正しく分類・添付することができる
B 準備された15種類の岩石を正しく分類・添付することができる
B ハンマーを使って安全に、かつ、適当な大きさに岩石を割ることができる
4 自然事象についての知識・理解
A 火成岩は6種類に大別されるが、その中間に位置するものがあることを理解できる
A 火成岩6つの分類方法を正しく理解することができる
B 花崗岩と安山岩を正しく理解することができる
B 堆積岩6種類を正しく理解することができる
授業を終えて
すばらしい岩石のまとめの授業となった。数万円分をクラッシュさせたが、その価値は絶対にある。将来の岩石博士にならずとも、岩石に高い関心を示す人間が何人か輩出されたことは間違いない。上の評価基準では、たくさんの『A項目』を用意したが、すべてクリヤーすることも不可能ではなかった。冬休み明けの授業では、これを片手に学校近くの公園で岩石採集をしたい。尚、岩石を砕く作業は『理科の選択授業』の生徒に行わせた。これだけの量を教師1人で準備した場合、私のように不慣れな人なら5時間以上必要だろう。
岩石を割る時の注意点
・ 全力で叩かないこと
・ 指を叩かないこと
・ 他人を叩かないこと
・ 飛び散った破片を目に入れないこと(メガネをかける)
・ 岩石には割れやすい方向があるので、いろいろな角度にして叩くこと
・ 破片が小さくなったら、小さな力で叩くこと(小さな力で割れる)
・ 岩石の下に、いらない紙を置いて叩くこと(紙はすぐにぼろぼろになる)
・ 教室でやらないこと
・ 校庭のセメント上で行うこと
・ 適当な大きさになったら、こまめに小さな箱に移すこと
(そのまま他の岩石を叩くと、せっかく作った小さな破片が飛散する)
・ 終わったら、理科係を中心に掃き掃除すること
・ 同質のハンマーを二つ合わせると、ハンマーが割れる→弾ける→ 危険チャートについて読者I氏から頂いた情報 2003.10.28
・ 日本にあるほとんどのチャートは『放散虫』からできている
・ 熱変成を受けていないチャートは、放散虫を実体顕微鏡で確認できる
「住居に近いので足尾山地のチャート層に特に興味があり、ときどき歩き回っています。チャートは、一見して古いものか 新しいものかが(まだ私の知見では)見分けられないので、その年代決定に放散虫の形を参考にしようとしているところです。日本列島は、古太平洋(パンサラッサ海)以来の海底が沈み込まずに畳み込まれ陸地化したものですから、デボン紀からジュラ紀、白亜紀など結構新しいところまであるとされています。ペルム紀と三畳紀の間のPT境界という部分は見事に真っ黒の泥の層になっていますね。KT境界事件は小惑星の衝突だというのが有力視されていますが、PT境界事件についてはパンゲアの分裂とテーチス海の消滅という動きのせいだろうなど諸説ありますよね。PT事件の証拠調べには、どう考えても太平洋の海底のかなりの部分が流れ着いている日本列島こそ絶好のフィールドであるといえそうです。足尾山地にも、ペルム紀の石灰岩体の上に黒い硫黄臭い泥岩をはさみチャートが発達する構造があります。おそらく本州中にあるはずですし、実際10数ヶ所が報告されているようです。そのPT境界事件は、海中の酸欠を招いたので、放散虫の種類を減らしたのでした。ですから、顕微鏡でみれば、事件前ペルム紀と事件後ジュラ紀の放散虫は相当に違い区別できそうです。丸いのがたくさん見えるのはPT以後と考えていいかもしれません。
チャートはきれいな破面を10倍程度のルーペでみても個体を識別できますが、岩体が破砕されて平行に割れているその岩石劈開面の風化したような部分を数十倍の実体鏡で注意深く観察すると、立体的なケイ酸による無色透明なネット構造をもつ個体を見いだすことができます。フッ化水素等の強酸で溶かす必要はありません。是非ごらんになることをお勧めします。」
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