このページは中学校1年理科『物理』/takaの授業記録2002です

 実験7 凸レンズの焦点距離
              
                   2003 1  31(金)
                   第2理科室、校庭

  小学校で「虫メガネを使って紙を燃やす実験」をやっていないらしい。安全上の
  理由だと思うが、単純で明解な自然現象を体験させることが最も大切なので、た
  っぷり時間をかけて遊ばせることにした。中学生でも遅くはないと思う。

  (上:太陽の光を集めて紙をもやす。何色が早く燃えるだろう。)


 <授業の流れ>
 1 太陽の光で紙を燃やす

  「小学校で、虫メガネを使って紙を燃やしたことはありますか。」
  「えっ、ないんですか!」
  「それなら、まず紙を燃やしてみましょう。」
  「とても簡単です。」
  「まず、プリントの右端を黒く塗ります。」
  「これは熱を吸収させやすくするためです。」
  「そして、太陽の当るところで光を集めると数秒で燃えます。」
  → あっという間に煙りが出るので、生徒から歓声が上がる
  「ほら、もう燃えました。」
 
  (上:天井の蛍光灯を写して焦点を合せる練習。)
   ただし、これはレンズの焦点距離ではない。蛍光灯の像を写しているだけである。

  「それでは、練習をしてから競争することにしましょう。」
  「直径5mmの穴があいたら持ってきなさい。合格の印と番号を記入します。みなさんの
  中には自宅から虫メガネを持ってきた人がいると思いますが、学校のより小さい人は学校
  のレンズを使って下さい。勝負がかかっていますからね。」
  「この凸レンズの焦点距離は30cmです。焦点とは、焦げる点という意味で、太陽のよう
  な平行光線を1点に集める点です。効率良く集めるためには紙を太陽と垂直にして、その
  間にレンズを入れることです。紙を地面に置いているようでは遅くなります。」

  「では、練習方法を説明します。」
  「太陽ではあっというまに燃えるで、教室の蛍光灯を写します。」
  「紙とレンズの間をある距離にすると、蛍光灯の形がくっきり出ます。」
  「正確には焦点距離と違いますが、これで練習しましょう。」
  「凸レンズは全員分あるので走らないこと。」
  「じゃあ、練習はじめ!」

  「練習やめ。」
  「これから競争しますが、合格の印をもらった人は色画用紙を用意したので何色が燃えや
  すいかなど各自で研究して下さい。」
  「最後に重要な注意ですが、制服にも火がつくし頭にやったら禿げるし太陽を直接見ると
  失明するので絶対にやってはいけません。では、よーいどん!」

  (上:1番目と19番目の生徒のプリント)


 2 焦点距離測定用凸レンズ
  「次に、凸レンズの模型を使って正しく焦点と焦点距離を求めましょう。」
  「誤差プラスマイナス1mmの人はボーナス得点がもらえます。」
  「焦点距離の測定は班ですが、ボーナスポイントへは個人参加です。」
  
  (上:生徒実験用の凸レンズに2本の赤いレーザー光線を照射)
 焦点距離は4.25cmだったので、4.2と4.3を『ピッタリ賞』、4.1と4.4を『前後賞』とした。

  黒板に次のような表を書いておく。
焦点距離 名 前 . . . .
. . . . . .
. . .. . . .
. . . . . .
. . . . . .
. . . . . .
. . . . . .
. . . . . .
. . . . . .
. . . . . .


  「まず、凸レンズの中心を通る線を書きます。」
  「プリントある4つの点を定規で結びなさい。」
  「次に、1cm間隔の平行線を4本書きなさい。」
  「できた人は、理科便覧の凸レンズのところを開いて予習しなさい。」

  (上:凸レンズに入射する5つの平行光線)

  「正確に実験した人は気づいた思いますが、光は何回屈折しましたか。」
  「1回ですか、2回ですか。」
  「そうですね、2回です。」
  「光がレンズに入る時と空気中に出る時の2回です。」
  「正確に書くと、レンズの中心を通る光は直進しますが、他の光は黒板のように屈折します。」


  (上:Dさんの学習プリント)

  「うまく書けたようですね。」
  「ところで、教科書では何回屈折しているか調べなさい。」
  「レンズの中心で1回屈折しているだけですね。」
  「これは嘘ですが、レンズの問題を考える時に2回屈折させるより1回の屈折で考えた
  方が便利なので、これからの授業では、レンズの中心で1回だけ屈折させることにしま
  す。」
  


  (上:Dさんの学習プリント)

  ◎ Eさんの学習プリント
  ・ レンズの中の光の道筋は間違っているけれど、まあ良いでしょう。
  ・ 凸レンズによって、平行光線が1点に集まることは実験から求めることができた。
  ・ 実験結果の微妙なずれは、彼女が真面目に取り組んだ証拠である。

  ◎ 生徒が持参した虫メガネ
  授業の合間をぬって、虫メガネを持参した生徒にその焦点距離を測定させた。
  「虫メガネを持参した人、手を上げなさい。」
  「その人には、印をあげますので焦点距離を測定しなさい。」
  「レンズの厚さによって距離が変わります。」
  「測定方法は簡単です。」
  「虫メガネで太陽光線を集めて紙を燃やした時の、虫メガネと紙の距離です。」
  「自分のプリントに記録できた人は見せに来なさい。」
  → 約2割の生徒が持参した
                   

                   (上:紙を燃やして名前を書いた)


 <評価基準>
 1 自然事象への関心・意欲・態度
  A 自宅から凸レンズを持参し、焦点距離を求めることができる
  B 学習プリントに、平行光線やレーザー光線をていねいにまとめることができる
  C レーザーポンターを使って安全に実験することができる

 2 科学的な思考
  A 実験誤差を、科学的に究明することができる

 3 実験・観察の技能・表現
  A 凸レンズの焦点距離を、誤差±1mmの範囲で求めることができる
  B 凸レンズの焦点距離を、誤差±2mmの範囲で求めることができる

 4 自然事象についての知識・理解
  A 凸レンズは2回屈折することを正しくプリントにまとめ理解することができる
  B 凸レンズに入った平行光線は、1つの点に集まることをプリントにまとめることができる


  授業を終えて
  授業後、たくさんの生徒が集まってきた。レンズで燃やしたいのだ。思う存分遊ばせ
  てやらないと、勝手にレンズを持ち出し火事になるような遊びに発展する可能性もあ
  る。歩いている蟻(黒色)を燃やしている生徒もいたけれど、あえて注意をしなかっ
  た。本来なら小学生で卒業しなければならない遊びだけど、今なら間に合うかも知れ
  ないし、友達同志の関係で注意をしあえる年令にも達しているからである。

  凸レンズの焦点については、問題なく理解できた。ただし、実際は2回屈折している
  ことについては若干理解度が低かったが、再度、検証実験しなかった。やれば理解で
  きると思うけれど。

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