このページは、Mr.Taka による中学校理科の授業記録:物理学 2年(2003年度)です

 実験9 磁石のまわりの磁界
              
                   2003 9 5(金)
                   第1理科室

  簡単な実験で面白い結果が得られる。しかも、その理論が比較的簡単なので生徒は大喜
  びとなる。
 
  (上:棒磁石の上に紙をおき、鉄粉をふりかける。とっても簡単!)

  参考1: 授業記録実験7 磁 界(2000年度、中2物理)も参考にして下さい。流
  れは同じですが、このページは教師の指導手順を中心に書きました。

  参考2: 
磁力線を立体的に観察する(別ウィンドーで開きます)を用意しました。


 <授業の流れ>
 1 磁力線についてまとめる

  <説明の例>
  「学習プリントに印刷してある磁石に、S極とN極を書き込んで下さい。一般に、N極は
  赤にします。」「書けましたか。今日は、前の時間に紹介したように、磁石に鉄粉をふり
  かけて、その周りの様子を調べます。実験の前に、黒板に書いて予習しましょう。」
  

  「このようにたくさんの線ができますが、これを磁力線と言います。スケッチは、全部書
  くと何が何だか分からなくなるので、必要なものだけを書きます。まず、直線を2本選び
  ましょう。N極S極に真直な線です。さあ、ここで問題です。磁力線の方向は『あ』です
  か、それとも『い』ですか。たぶん、皆さんの勘で当たると思います。」

  (下の図で、読者の皆さんも予想して下さい。)

  

  「『あ』だと思う人、手を挙げて下さい。それだけですか。『あ』だと思う人はしっかり
  手を挙げて下さいよ。」「はい、その人は正解です。では、これをまとめておきましょう。
  
磁界の方向はN極からS極。N極から出た磁力線は、地球をひと回りしてS極に入ると考
  えて下さい。」

  「次に、丸くなっている磁力線のうち2本を選び、他は消します。これとこれ、です。」
  「そして問題です。磁力線の方向は『う』ですか、それとも『え』ですか。難しいですが、
  今度は考えれば解けます。磁力線はN極から出てS極に入るのですよ。」
  
  「では、全員に答えてもらいます。『う』だと思う人、手を挙げて下さい。『え』だと
  思う人、手を挙げて下さい。正解は『う』です。NからSですから、当然『う』です。」

 2 引力と斥力

  1 黒板にまとめる
  2 生徒を前に集めて、演示実験する
  3 以上

  <板書例>
 

  <説明例>
  「磁石にはN極とS極があるので、それらの組み合わせは3つあります。しかし、それら
  の間に働く力は2つに分類されます。1年生の勉強を覚えている人は分かりますが、それ
  らは『引き合う力』と『しりぞけあう力』です。表にしてまとめておきましょう。」

  「次に、鉄粉をまきます。異なる極では『引力』が働くので、こんな感じの磁力線ができ
  ます。しかし、全部スケッチする必要はありません。一体、何本かけば良いと思いますか。
  1番少ない数を答えて下さい。」「はい、そうですね。1本で十分です。カーブしている
  線を書きはじめると無限になってしまいます。」

  「『斥力』はどうでしょうか。N極から真直ぐに出た磁力線は、反対側の磁石と喧嘩をし
  て曲がります。曲がる方向は上と下がありますから、少なくとも4本必要です。『引力』
  と『斥力』では随分違いますね。」

  「それでは、ここまでプリントに写しなさい。できた人から実験手順を説明しますが、最
  前列になる人は、自分の椅子を持って来て下さい。」


(上:異極どおしによる『引力』)


(上:同極どおしによる『斥力』)


  <実験のポイント>
  ・ 鉄粉はできるだけ上からまく(均一に散らばりやすい)
  ・ 多いより、少ない方がよい
  ・ まいたら、机を軽く叩く(磁力線が見やすくなる)
  ・ 磁石の間隔は広すぎても狭すぎてもいけない
   (目安は5〜7cm。実際にやってみて調節する)


(上:N極だけ、または、S極だけ)
『斥力』のみ


(上:上だけ異極)
上がN極の場合、→答


(上:同極を交互に配置する)
→ NとSが逆でも正解


(上:考えて下さい)
→ 答(NとSが逆でも正解)


(上:考えて下さい)
→ 答(NとSが逆でも正解)

 
  下写真のように、磁石全体を観察させると結果が煩雑になる。


  一見すると面白いが、必要最小限度の磁力線を考えると、下の7本になる。
 
  これは磁石2本の場合なので、磁石を4本与えると非常に難しい結果になる。

  <生徒実験の手順>
  1 棒磁石2本、鉄粉、紙2枚を準備する
  2 引力の磁力線を作り、観察・スケッチする
  3 先生から『合格印』をもらう
  4 斥力の磁力線を作り、観察・スケッチする
  5 先生から『合格印』をもらう
  6 棒磁石を1本追加し、オリジナルな実験・観察・スケッチを行い、先生から『合格印』をもらう
  6 さらに棒磁石を1本追加し、同様に活動する


  ◎ Aさんの学習プリント
 

  ◎ Bさんの学習プリント
  




 <評価基準>
 1 自然事象への関心・意欲・態度
  B 学習プリントにきちんとまとめることができる
  B 磁石のN極S極に注意して、片付けることができる

 2 科学的な思考
  A 磁石のまわりに働く力を立体的に捉えることができる
  A 磁石内部に働く力を考察することができる

 3 実験・観察の技能・表現
  A 3つ以上、オリジナルな磁力の関係を調べ『合格印』をもらうことができる。
  B 引力と斥力の磁力線を作り、それを正しく観察・スケッチすることができる。

 4 自然事象についての知識・理解
  B 磁界の力は、N極からS極に働くことを知ることができる
  B 異極どおしは引きあい、同極どおしはしりぞけあうことを理解できる


  授業を終えて
  上の評価基準『自然事象についての知識・理解』は、小学3年生でも到達できる。そんな
  教科書レベルに満足しては教員失格である。高校入試に出題されない3つの力関係まで実
  験・観察させなければ、科学的思考は育たない。この分野は、教師自身も分からない、と
  生徒に頭を下げるような実験方法を工夫できる教材なので、時間があれば徹底的にオリジ
  ナルな実験に取り組ませたい。文部科学省の目標は5分間の机上説明で十分である。それ
  を定着させるのも教師の責任の一部であるが、塾でも家庭でもできない学習をさせなけれ
  ば、**のような教師になり下がる。若い教師のみなさん、頑張って下さい。ここは生徒
  の興味・関心が高まり、持続しやすいところです。

  参考1: 授業記録実験7 磁 界(2000年度、中2物理)
  参考2: 磁力線を立体的に観察する

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