このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2004年度)です

ABO式血液型
              
                   2004 5 13(木)
                   各教室

 血液型を学習する必要はないが、これは形質と遺伝子型について理解を深める絶好の教材である。「私は本当に両親の子どもなのだろうか?」という深刻な問題から、「血液型と性格は関係あるの?」という非科学的な脱線まで本気で盛り上がる。話題を膨らませて話を形質(遺伝)につなげれば理解が深まること間違いなし。学習指導要領から外れても是非とも指導したい逸品である。

 注意: 複雑な家庭環境にある子どももいるので事前によく調べてから授業を展開して下さい。


<授業の流れ>
1 ヒトの血液型について

・ ヒトの血液型にはA、B、AB、Oの4種類がある
・ その他にも、Rh式、MN式などたくさんの分類方法がある
・ 血液型は、父母からそれぞれ遺伝子を1つずつもらった結果である
・ A、B、AB、Oの4種類は、表面に現われた形質である

<血液型による性格診断>
 「このクラスにA型の人は何人いるのでしょう。手を挙げて下さい。」
 「凄いたくさんいます。16人ですね。えっ、性格? 面白そうですね。A型の人はどんな正確なのか調べてみましょう。A型の人は立って下さい。」
 「なるほど、みなさんどうですか? どんな共通点がありますか?」
 → 普段からよく喋る生徒が騒ぎまくるでしょう。「俺はあいつとは違う。」「誰々さんと一緒で嬉しい。」「彼とは絶対に共通点はない。」などなど・・・そして、一段落ついたら教師が次のように結論を述べます。

 「そうですね。バラバラなんです。血液型の性格診断とか占いがありますが、あれは嘘です。血液型と性格はまったく関係ないことが分かったと思います。では次に、B型の人は立って下さい。」

(上:あるクラスの血液型調査の結果)
<参考資料>
・ 血液の分類方法は、現在300種類(ABO式、Rh式、MN式、ケル式、ダフィ式など)ある
・ ABO式は、1901年、K. Landsteinerによりに発見された
・ 本校生徒の血液型分類の割り合いは日本の標準と異なるので、インターネット等で最新情報を入手して下さい

2 形質(表面にあらわれる形や性質)
<説明の例>
 「血液型は血液検査によって調べられますが、実は、同じA型の人でも、とっても濃いA型の『AA』と、半分だけA型の『AO』の人がいます。これについては、このあとすぐ、今日の授業で説明しますが、今は『形質』の意味についてまとめます。形質とは、表面にあらわれる形や性質ですが、血液型の他に、ハゲがあります。ちょっとここで聞いてみましょう。お父さんやお祖父さん親戚に、禿げている人がいる人?」
 「お、結構いますね。ハゲは男だけに遺伝しますが・・・もちろん女でもハゲている人はいますが、それは精神的な原因がほとんどなので治る場合が多いのですが、男のハゲ、とくにピカピカに光り輝くハゲは遺伝です。どうしようもありません。もし、自分の家族や親戚に禿げている人がいたら、男子は気をつけて下さい。気をつけても諦めるしか方法はありませんが、ふさふさの青春時代を楽しんで下さい。」
 「ところで、他にどんな形質が遺伝するか知っていますか?」
 「そうですね。肌の色は遺伝します。もちろん、毎日運動場で部活動をしている人は別ですが、肌の色は遺伝します。私たちは白でも黒でもありませんが、もし、他の色の人と結婚して子どもをつくれば中間の色の子どもができます。」
<その他、教室で確かめれれる形質>
・ 直毛か、巻毛か
・ 頭髪が右巻きか、左巻きか
・ 耳たぶがあるか、ないか
・ 一重まぶたか、二重か

3 形質と遺伝子型
<参考資料>
・ A型の人には、抗原(A)と抗体(抗B)がある
・ B型の人には、抗原(B)と抗体(抗A)がある
・ AB型の人には、抗原(AとB)がある
・ O型の人には、抗体(抗A、抗B)がある
・ 同種の抗原と抗体が結合すると、血液が固まり死亡する

<説明の例>
 「それでは、先ほど残しておいた血液型(形質)と遺伝子の関係を表にまとめましょう。同時に、誰の血液を輸血してもらえるかもまとめます。」
 「1番分かりやすいのは、AB型の人です。両親から、何と何をもらったのですか?」
 「そうですね。AとBを1つずつもらいました。」
 「次に、A型の人です。A型にはAAとAOがあると言いましたが、AAの人は、父親と母親からAをもらった濃いAAになります。しかし、もう1つAOという人もいますが、AOのOは、何もない、と考えて下さい。つまり、父母のどちらか一方から遺伝子Aをもらったけれど、もう一方からは何ももらわなかったと考えます。オーではなく、ゼロと考えても良いでしょう。同じように、B型の人は、BBと何になりますか?」
 「そうですね。BBとBOになります。」
 「では、残ったO型人は、何と何をもらうのでしょう。」
 「その通り! O型の人は何ももらわないのです。実際は、両親からあるモノをもらっているのですが、話がややこしくなるので、中学校ではこんな風に考えましょう。O型の人はお父さんからもお母さんからも、綺麗な血をもらった。それだけです。実際、O型の血液は綺麗なので、O型の人同士はもちろんですが、A、B、AB型全ての人に血をあげることができます。しかし、他の血液型の人から血をもらうと固まって死んでしまいます。そんな綺麗な血液なのです。」

4 どんな子どもができるか
<説明の例>
 「誰か、自分の家庭の血液を紹介してくれる人はいませんか?」
 「じゃあ、N君お願いします。まず、お父さんが?」
 「お母さんが?」
 「そして、何人兄弟ですか?」
 「なるほど、お父さんがB、お母さんがA、そして、君が3人兄弟の長男でO型、弟がAB、妹がBですね。うー、これはなかなか複雑な家庭ですが、血液型の勉強には最適です。じゃあ、順番に書いていきましょう。」

 「まず、N君はO型なので遺伝子はOOです。ということは、両親からそれぞれOをもらわなければならないので、お父さんはBBではなく、BO。お母さんはAOになります。そして、弟はABなので、これは問題ありません。AとBを1つずつもらいました。そして、妹のBは、お父さんのBとお母さんのOをもらったBOになります。よかったですね。いろいろな血液型がありますが、全員血の繋がった家族です。AとBの両親からは、全ての血液型ができるのです。じゃあ、他に、自分の家族について調べて欲しい人はいますか?!」
  
参考資料: メンデルの法則によるまとめ
両親の表現型
(血液型)
両親の遺伝子型 子供の表現型
(血液型)
子供の遺伝子型
A×A AA×AA
AA×AO
AO×AO


A、O
AA
AA、AO
AA、AO、OO
A×B AA×BB
AA×BO
AO×BB
AO×BO
AB
A、AB
B、AB
A、B、AB、O
AB
AB、AO
AB、BO
AB、AO、BO、OO
A×AB AA×AB
AO×AB
A、AB
A、B、AB
AA、AB
AA、AO、BO、AB
A×O AA×OO
AO×OO

A、O
AO
AO、OO
B×AB BB×AB
BO×AB
B、AB
A、B、AB
BB、AB
AO、BO、AB
B×O BB×OO
BO×OO

B、O
BB、BO
BO、OO
AB×AB AB×AB A、AB、B AA、BB、AB
AB×O AB×OO A、B AO、BO
O×O OO×OO OO

※ メンデルの法則に従わない場合もあります
 1本の染色体にA、B両方のの遺伝子っているものを、シスABと言います。この場合、メンデルの法則よると、AB型(AB)とO型(OO)の親からは、A型(AO)とB型(BO)しか生まれませんが、シスAB場合は、AB型(ABO)の子が生まれます。

5 本時のまとめ


◎ 生徒の学習プリント



<評価基準>
1 自然事象への関心・意欲・態度
 A 祖父母や親族の血液型を調べてくることができる
 B 自分の家族の血液型を調べてくることができる

2 科学的な思考
 A さまざまな家庭の血液型と遺伝子型を推測できる

3 実験・観察の技能・表現
 A  さまざまな家庭の血液型と遺伝子型を図示できる

4 自然事象についての知識・理解
 B ある個体の形質は、両親の遺伝子の組み合わせで決まることを理解できる


授業を終えて
 まれに、1本の染色体にAB両方の遺伝子が乗っていることがあるので、一般的にはあり得ない血液型の子どもが産まれることも話しておくことを忘れないように。さもないと1人で悩む子どもができるかも知れませんから。

参考資料: Rh式について
 Rh式ではC・c、D・d、E・eの6つの抗原に分ける。そのうち、DDおよびDdをRh+、ddをRh−とする。日本人におけるRh−の割り合いは200人に1人(AB型では2000人に1人)。

参考資料: 血液型を決める主な遺伝子
第1 染色体 Rh式、ダフィ式、ドンブロック式
第2 染色体 キッド式
第4 染色体 MN式、Ss式
第6 染色体 HLA抗原
第9 染色体 ABO式
第11染色体 ヘモグロビン構造決定
第19染色体 ボンベイ式、ルイス式、ルセラン式
第23染色体(性染色体)ケル式、Xg式

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