このページは、Mr.Taka による中学校理科の授業記録 3年(2004年度)です |
観察5 金星の見え方
2004 9 22(水)
各教室
正直な話、金星ではなく『月の見え方』を教えたいけれど、公務員たるもの学習指導要領に従うより生きる道はない。生徒達も入試に出題される可能性を持っているので学習するしかない。(専門的な立場から言うと、金星の見え方はテスト問題にしやすいので、毎年のようにどこかの高校で出題される。先生も生徒も頑張って下さい。)
(上:Aさんの学習プリント)
◎ 授業の流れ
1 金星の紹介
「みなさんは、ビーナスという言葉を知っていますか? 知っているようですね。どんな意味ですか? そうです。美の女神、と言う意味です。金星はとても明るく美しいので、昔の人はビーナスというあだ名をつけました。今日は、この金色に美しく輝く金星について調べてみましょう。」
<金星について>
・ 見える時間、季節が決まっていない
・ 宵の明星、あるいは、明けの明星とも呼ばれる
・ 宵の明星は『西』、明けの明星は『東』の空に光り輝く
・ 宵の明星は、1番星(空が暗くなってきて1番初めに見える星)とも呼ばれる
・ 金星は自分で輝いているのではなく、太陽の光を反射して輝いている
2 宇宙(天の北極)から見た金星と地球
1 太陽・金星・地球の位置関係
・ 金星は、地球の内側を公転している(内惑星)
・ 地球も太陽を中心に公転しているが、太陽と地球は動かないものとして考える(太陽と金星と地球の位置関係について調べたいので、金星を動かすだけで十分)
2 輝く金星
太陽に面した半分だけ輝く
3 輝く地球
太陽に面した半分だけ輝く
→ よく目にする地球の写真は、青い海と白い雲に覆われた丸い形をしている。しかし、天の北極から見ると、地球も金星と同じように、太陽に面した方だけ輝いている。これを紹介すると、生徒は「あっ、そうか!」と発見の声をあげる。教科書や理科便覧に、月面に昇る地球の写真があると大変効果的である。(右:天の北極から見た太陽・金星・地球)
3 天の北極から見た地球
さて、天の北極から見た場合、地球はどのように自転しているでしょう。これはとても重要なポイントです。一般的には、右図左のように、地球を横から見た図を考えますが、今回は右図右のように、天の北極から見た場合を考えます。中学3年生にとって、同じものを縦横から見ることは難しいことではない(技術家庭科『製図』で学習済み)と思いますが、十分に確認しておく必要があります。実際の授業では、生徒全員に両方の図を書かせました。
(右:この生徒は、地軸の傾きを気にしているが、授業で深追いすると失敗するので、さらさらっと流した方が無難。本時の目標は『金星の見え方』。それを忘れないこと。混乱を避けるため、地軸を傾けずに指導しても良いだろう。) 4 天の北極から見た地球上の時間
<説明の手順>
「地球からの金星の見え方を調べる前に、地球の自転によって時間が変わることを確認しておきましょう。プリントの右側に太陽と地球だけ印刷しておいたので、前と同じように、太陽を書きます。そして、地球の赤道上に、4人のヒトに立ってもらいます。・・・ここまで書けましたか。さて、ここにいる4人の時間を考えてもらいます。まず、昼の12時にあたる人は何処でしょう。そうですね。太陽の真下にいる人です。ですから、夜0時の人も簡単ですね。太陽の正反対、太陽が見えなくて真っ暗ですね。そして、それらの中間にいる2人の人は・・・どちらが朝で、どちらが夕方ですか? ・・・そうですね。地球の自転方向を考えれば簡単ですね。」5 地球から見た金星
<説明の手順>
1 金星に1〜4の番号をつける(右図)
2 1〜4の位置にある金星が、地球からそれぞれどのように見えるか書くためのスペースを準備させる。ここがとても重要です。プリントに書く場所がなくなった生徒は、下のように並べて書くのも良いでしょう。なお、スペースは1辺の長さが2cmぐらい。
3 金星の大きさを考える
「みなさんに質問です。右図の2〜4番の位置にある金星で、1番大きく見える金星はどれでしょう? ・・・そうですね。4番です。理由を説明できる人はいますか? ・・・その通り、地球からの距離によって説明できます。」 → 分からない、と言い張る生徒がいたら、彼に向かって摺り足で近づいて下さい。しかも、できるだけ速く、全速力で。そして、彼の目の前5cmのところで急停止し、優しい声で、分かったかな?と聞いてあげて下さい。120%の確率で、分かった、分かったから、早く向うに戻ってと懇願します。
4 金星の大きさをプリントに書く(下図)
5 金星が、いつ見えるか考える
「次の質問です。2番の位置にある金星は、いつ見えますか。朝昼夕夜の中から選んで答えて下さい。これが分かれば、今日の授業は半分終了です。・・・それでは、皆さんに聞きますよ。・・・朝だと思う人! ・・・正解です。手を挙げなかった人はハズレです。説明をよく聞いて下さいよ。それでは、正解者の中で、誰か説明してくれる人はいませんか。・・・はい、よく説明できましたね。先ほど授業で学習したように、これから太陽が出てくる直前の位置にある時ですから「朝」になります。」「では次に、3番の位置の金星は、いつ見えますか。同じようにして答えて下さい。しっかり手を挙げて下さいね。では、聞きます。・・・朝だと思う人! ・・・正解! 今、手を挙げれなかった人はヤバいです。さっきと同じですよ。さっきより太陽に近づいているいますが、昼でも夕でもないでしょ。同じ位置です。朝です。」「じゃあ、4番は全員正解でお願いします。質問します。4番の位置にある金星は、いつ見えますか? ・・・朝だと思う人! ・・・正解!」「さてと、となると1番の位置にある金星はいつになるでしょう。今度は違いますよ。全員1発で正解にしたいので、周りの人と相談して下さい。 ・・・では聞きます。・・・朝だと思う人! 昼だと思う人! 夕方だと思う人! ・・・正解です。今度は、先程と反対の位置なので夕方になりますね。」6 どの部分が光って見えるか考える
「次の質問です。2〜4番の位置にある金星のうち、満月のように全体が光って見えるのは何番でしょう? ヒントをあげます。3番の位置にある金星は、左半分だけが光って見えます。天の北極から見たときと似ています。・・・ さあ、これだけのヒントで分かりましたか? ・・・では、もう1つヒントをあげます。2番と4番のうち、どちらか一方は満月のように、もう一方は三日月のように左端が光って見えます。・・・ では全員に聞きます。満月のように見えるのは、どれですか?・・・ 2番だと思う人? ・・・ 4番だと思う人?・・・正解です。正解者の中で、理由を説明できる人はいますか?・・・そうですね、太陽からの光を全面に受けているので、満月のように見えるのですね。」
7 1番の位置にある金星の見え方
「では、練習問題として、1番の位置にある金星の見え方をスケッチしなさい。できた人は本日終了です。答は教科書に載っているので、閉じて下さい。自分の考えがまとまった人は、自分で答合わせをして下さい。」6 教科書を読み、本時の復習
金星が真夜中に見えない理由を考える
→ 正解は、金星が内惑星(地球の内側を回っている)だから。しかし、この説明で理解できる生徒は少ないので、次のように補足すると良い。
・ 金星は、地球の夜の方向に来ない
・ 金星は、朝・昼・夕の方向を公転している
◎ Dさんの学習プリント
<評価基準>
1 自然事象への関心・意欲・態度
B 学習プリントを正確、かつ、丁寧にまとめることができる
B 身近な金星を見たことがあるか、思い出そうとすることができる
2 科学的な思考
B 天の北極から見た場合と、地球から見た場合を関連づけて思考することができる
3 実験・観察の技能・表現
B 地球からみた金星を、大きさや光る部分に着目してスケッチすることができる
4 自然事象についての知識・理解
B 金星の見え方を正しく理解できる
授業を終えて
時間に余裕があれば、最後に練習問題を解かせると知識が定着するのですが、今回はできませんでした。中間テストに合わせて、急遽『金星の見え方』を学習したからです。また、次のような手順で指導した方がスムーズに理解できます。
1 天の北極から見た地球の自転
2 天の北極から見た地球上の時間
3 天の北極から見た地球上の東西南北
4 天の北極から見た金星
5 地球から見た金星しかし、本時は詰め込み学習にならないように「天の北極から見た地球上の東西南北」を次時にまわし、以下のような手順で指導しました。
1 天の北極から見た金星と地球
2 天の北極から見た地球の自転
2 天の北極から見た地球上の時間
4 地球から見た金星結果としては、教師の情熱と申しましょうか、教えよう、全員を理解させようとする決死の姿勢が大切です。若手教師の皆さんも、この授業記録を参考にして、悪戦苦闘して下さい。歳をとってくると、さらさらっと簡単に説明できてしまうのですが、ここは重要なんだ(高校入試に出るぞ!という危機感、および、文部科学省に対する指導的精神)という情熱が、生徒の理解度を高めることになります。気合いを入れて頑張って下さい。私自身、一人前に指導できるようになるまで7、8年が必要でした。(まだまだ不十分かな?!)
なお、火星の見え方は、現在の学習指導要領から削除されています。(いつかまた復活するでしょう。)
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ビデオによる復習