このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2004年度)です

記録テープの処理方法
              
                   2004 7 12(月)
                   各教室

 今日は、先日の期末テストで分かった弱点を補うため、記録テープの読み取り方を復習すると同時に、より高度なデータの処理法を学習しました。


(上:特製の記録テープ)

点の間隔は相当工夫しましたが、まだまだ改良の余地はあります。以下に今回の特製データを示します。
<工夫したポイント>
1 B4プリントを縦にしたときに、全長が収まる長さにする
2 冒頭の4つを等加速運動とし、放物線のグラフができるようにする
3 その後の等速運動は少なくとも3区間欲しい
4 その後の減速運動の割り合いは、冒頭の加速より少なくした
5 最後にあまった区間には激しい加速と大きな等速運度を配置し、科学的思考を伸ばそうとした

点の間隔 0-5 5-10 10-15 15-20 20-25 25-30 30-35 35-40 40-45 45-50 50-55 55-60 60-65
太い点 0-1 1-2 2-3 3-4 4-5 5-6 6-7 7-8 8-9 9-10 10-11 11-12 12-13
距 離 5mm 10mm 15mm 20mm 25mm 25mm 25mm 21mm 17mm 14mm 14mm 55mm 55mm
速 さ 加速 加速 加速 加速 等速 等速 等速 減速 減速 等速 等速 加速 等速


◎ 授業の流れ
1 導 入

 「今日は記録テープの処理方法を2つ復習します。具体的には、1本の記録テープから2つのグラフを書いてもらいます。出来た人には合格印がでます。さらに、スペシャル問題が解けた人には3つめの合格印がでますので頑張って下さい。とりあえず、全員1つの合格印が出ることを目標にしていますので、よろしくお願いします。1時間でグラフを1つ書けば良いのですから、とにかく頑張ってみましょう。」

1 記録タイマーについて
 「学習プリントを縦において下さい。記録テープは左になります。」
 「さて、テープには65個の点が打ってあります。そのうち、濃い点になっているものがありますが、それらの間隔はいくつですか?」
 「そうです。5つです。ということは、この記録タイマーは1秒間に何回打点しますか?」
 「そうです。50回です。これまでは名古屋や大阪など1秒間に60回点を打つ記録タイマーを使いましたが、今日の問題では東京や東北など1秒間に50回打点するものを使いました。では、プリントの隅に『1秒間に50回打点する記録タイマー』とメモして下さい。」

2 記録テープに時間を書き込む
 「次に、記録テープの点に番号を書き込みます。1番初めは0です。0から順に書いていきますが、全部書くと混乱するので、5つ毎に記入しましょう。1番上は65になります。」
 → こんな単純作業でも数分間必要です。0を書き忘れたり、単純に数え間違えたりするので、1番上が60や70になる生徒が5、6人出ます。しかし、ここで落ちこぼれを作ることは許されないので、慌てずゆっくり確実に全員書けるまで時間を確保して下さい。

 「次に時間を書きますが、記録テープに書き込む前に、グラフの横軸に時間を書き込みましょう。単位は秒です。それでえ、先生が間違えて1、2、3と印刷してしまったので、1目盛り0.1秒なので、1、2、3の前に0.を付け加えて下さい。1目盛り0.1秒にして下さい。11のところは、間に.を付け加えて1.1にして下さい。」
 「全員書けましたね。今度は記録テープですが、まず、点『0』のところから真横にすうーっと線を引いて下さい。グラフの横軸と一致しますね。」
 → そんな単純なことについて生徒から「おー、凄い!」と感動の声を上げてもらって、同じように単純なMr. takaも感動してしまった。(当然のような素振りをしていたが、)

 「それでは、記録テープにも確認のために時間を記入しましょう。5つめの点は何秒になりますか?・・・ そうですね。0.1秒です。」「10個目の点は何秒になりますか?・・・ そうですね、0.2秒です。」「30個目の点は?・・・ そうですね、0.5秒です。」
 → これも単純作業ですが、できない生徒が数人いるので、期間巡視して確認することが大切です。落ちこぼれるには早過ぎます。


3 『時間と距離の関係』をグラフ化する
 「それでは、時間と距離の関係をグラフにしましょう。これは簡単に出来ます。それぞれの点を位置を、すーっと横に伸ばしたところに点を打ち、それらを滑らかな曲線で結べば出来上がりです。ただし、途中から直線になったり逆向きの曲線になったりするので、そこだけは注意しましょう。また、先生は黄色のチョークで書きますが、皆さんは失敗しても消せるように鉛筆で書いてから好きな色のペンで書き直して下さい。今日は、同じ紙に2本のグラフを書くので色分けしてもらいます。」「では、一緒に書きましょう。」 「まず、0のときは『0』。グラフの原点のところに、ぐるぐるっと点を打って下さい。・・・書けましたか?・・・はい、良いですね。」「次に、0.1秒の時の距離は?・・・5mmですか。確かにそうですが、今回は測って点を打つ必要はありません。記録テープとグラフを揃えてあるので、5つめの点のところから真横に線を引いて、0.1秒の位置と重なった所に点を打てば良いです。・・・こんな感じです。・・・できましたか?・・・はい、できたようですね。」 「0.2秒後も同じように書きます。記録テープの0.2秒の後の点から真横にすうーっと線を引いて、グラフの0.2秒後のところに点を打ちます。」「やり方が分かった人は、全部同じようにやって下さい。」
→ ここで机間巡視をしながら、全員できるようにする。きちんと指導すれば落ちこぼれはできない。所要時間は7、8分。

(上:板書案)

 「さあ、ここからは少し難しいです。記録テープを良く見て下さい。一番初めは加速していますが、それは何秒後までですか?・・・そうですね。0.5秒までです。記録テープの間隔が広がっていますからね。ですから、ここまでのグラフは直線になりますか?それとも、曲線になりますか?・・・直線?! 良く考えて下さいよ。どんどん間隔が広がっているということは直線ではなくて・・・曲線ですね。」 「次に、点の間隔が同じになっている時間があります。それは0.5秒から何秒までですか?・・・そうですね。0.7秒までです。この間は、定規を使って直線にしましょう。等速直線運動をしている時間です。」 「その後は各自で考えて下さい。ヒントを紹介しておくので、できたら1人ずつ持ってきて下さい。合格した人から合格印をあげます。全員合格を目指しているので慌てる必要はありません。ヒントは、点の間隔です。だんだん狭くなっているところは逆向きの曲線になるし、間隔が同じところは定規で直線を引くことになるし、だんだん広くなっていることろは初めと同じような曲線になります。グラフの形は3種類しかないので、そのどれに当てはまるか考えて下さい。形が変わる点は、0.7秒と0.9秒と1.1秒と1.2秒です。それででは、頑張って下さい。」
→ 早い生徒は数分でプリントを持ってくる。合格した生徒に、分からない生徒に教えるように指示すると得意げになって指導する。その結果、授業終了までには全員なんとかなる。



3 『時間と速さの関係』のグラフ
 時間と距離はなんとか分かっても、時間と速さは理解できない生徒が多数でくるが、これは中学校理科教師の責任範囲を越えているので深く突っ込まないこと。ここでは、
時間と距離の関係と、時間を速さの関係を同じグラフ上に書き表わすことで、それらの違いが感覚的に掴めるられるようになること、それができた生徒には『距離を微分すれば速さが得れること』、『さらに速さを微分すれば加速度が得られること』が理解できれば申し分ない。

 「では皆さん一緒に、時間と速さの関係をグラフにしましょう。まず、初めから0.1秒間の平均の速さを求めると、速さは距離÷時間だから、距離が5mm、時間が0.1秒なので、5mm÷0.1秒=5cm/秒ですね。それでは、グラフの0.1秒のところに点をぐるぐるっと打って下さい。違う色が良いですね。」 「同じように、0.1秒から0.2秒までの平均の速さを求めると、距離が10mm、時間が0.1秒なので、10mm÷0.1=10cm/秒になります。」「同じように全ての間の速さを求めて下さい。出来た人は先生に見せに来て下さい。正解者には合格印を出しますが、これはちょっと難しいです。」
→ できる生徒でも5分程度の時間が必要になります。また、0.5秒から0.7秒までは等速運動なので、速さが変わらないことを黒板で紹介することも必要でしょう。最終的に合格できる生徒は、全体の30〜60%です。
4 本時のまとめ
 応用問題として、この台車を転がした斜面の形を考えさせた。初めから0.5秒までは普通の斜面で、そこから0.7秒までは平面、それから先がどうなっているかを考えさせる。考えるポイントは、斜面の傾き、斜面や平面の長さ・高さである。この応用問題についても合格印を出したが、考えがまとまった生徒はのみプリントを提出させた。各自のプリントに実験台(斜面)の形を図示させた。

(上:合格した生徒の解答)

→ 合格した生徒は、各クラス数人だった。

◎ F君の学習プリント

◎ 板書例



<評価基準>
1 自然事象への関心・意欲・態度
 B 学習プリントに正確かつ丁寧にまとめられる

2 科学的な思考
 B 『時間と距離の関係』と『時間と速さの関係』を関連づけて思考できる
 B 記録タイマーに記録された点から、台車の運動を推測できる

3 実験・観察の技能・表現
 B 時間と距離の関係をグラフ化できる
 B 時間と速さの関係をグラフ化できる

4 自然事象についての知識・理解
 B 『時間と距離の関係』と『時間と速さの関係』を理解できる


授業を終えて
 まったく分からない、と感想を持つ生徒でも、グラフは書けるようになるから不思議だ。このような授業をくり返せば、自然に理解できるようになると思う。言葉で理論を説明するより、数値をグラフ化させる作業によって理解を深める方が面白く、自信もつき、科学的な力を養っていると感じる。

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