このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 3年(2004年度)です

仕事の原理
              
                   2004 7 9(金)
                   各教室

 新学習指導要領では『仕事』の概念を学習する必要はないけれど、今日もまた余分な学習をする。そんなときは、壮大なねらいが必要です。

(上:てこを使って象を持ち上げる)

<本時のねらい>
1 平行四辺形を作図することで、斜面を滑り落ちようとする物体に働く重力と垂直抗力の合力を求める方法の復習
2 上記1の作図によって得られた合力の大きさが、計算(仕事の原理)によって得られた理論値と一致することで、自然科学の数学的美しさに感動する
3 仕事の原理を学習することで、幼い時に遊んだシーソーを自然科学探究の道具(体重測定器)として再認識する
4 はさみやペンチなどの道具を、可動距離や力の大きさを考えて使えるようになる


◎ 授業の流れ
1 仕事とは

 皆さんに問題です。
 理科における仕事とは何か? 次の中から選び、番号で答えて下さい。
1) 掃除のとき、自分の机を5m運んだ
2) 掃除のとき、友達の机を5m運んだ
3) 授業中騒いでいた罰として、水の入ったバケツをもって廊下に1時間立たされた
  注意: 今どき、こんな話はありません
4) 友達の代わりに、バケツをもって1時間立っていた


 答は出ましたか? その前に考え方を紹介しましょう。
 理科における仕事量は、次の式で求められます。


 仕事量= 力の大きさ× 距離
 → 授業では混乱を避けるため、仕事量ではなく仕事として説明した

 したがって、どんなに大きな力を出しても、物体が動いていなければ仕事は0になります。ですから、1)と2)が正解です。3)と4)はバケツを動かしていないので、どんなに長時間持っていても結果として仕事量は0です。


2 仕事量を減らすには、斜面を使うべきか? それとも、一気に持ち上げるべきか?

 もう1問、考えて下さい。
 丸い玉(3Kg)を高さ5mまで運ぶ時、下図のAB、BCのうち、どちらの仕事が小さいか?
 
 ABの仕事: 斜面AB(12m)を転がす ただし、摩擦は考えない
 BCの仕事: BC(5m)を真上に持ち上げる

 答は決まりましたか? では、一緒に仕事量を計算しましょう。BC間は簡単ですね。仕事量=力の大きさ×距離なので、3×15=15。しかし、AB間は、力の大きさが分からないので、前の時間に学習したように作図しなければいけませんが、その前に、いきなり答を紹介します。答は『同じ』。斜面や階段などの道具を使うと、力の大きさでは得をしますが、距離で損するので、結果として同じになるのです。これを、仕事の原理と言います。

 <生徒への説明例>
 「答は同じです。斜面を使うと力の大きさは小さくなりますが、距離が長くなるので損します。ですから、力の大きさと距離を掛けると、直接持ち上げたときと同じにリます。ちょっと説明しましょう。今から、先生が机の上に登ってみますが、踏み台として椅子を1つ準備すると、・・・」
 「よっ、よっ。 と簡単に登れますが、踏み台の椅子を外すと・・・」
 「いよっ、 となります。力はたくさん必要ですが1回で登れます。しかし、もう1度踏み台を準備して登ってみると、ほら。 確かに力はいりませんが、2回登らなければなりません。結果として、つまり、仕事の大きさとしては同じになります。これを仕事の原理と言います。」

(上:力の大きさの単位は、
N ニュートンです。)

 「さあ、ここで、斜面を滑り落ちようとする力の大きさを求めましょう。AB間の仕事量=(斜面を滑り落ちようとする力の大きさ)×12=15。単位は省略しましたが、この式を解くと1.25になります。」
 「ということなので、本当に1.25になるか作図で確かめてみましょう。作図方法は前に学習した通りです。」
 → 
前の時間に学習したように作図させ、感動する。

机の上に登る実験
あなたは、踏み台を使いますか? それとも 一気に登りますか?
授業後、生徒に協力してもらいました。

(上:踏み台を使うと、力の大きさは得をするが、距離で損をする)

(上:階段を使わないと、力の大きさでは損をするが、距離で得をする)



3 道具の種類
 「では、階段や斜面の他に、どのような道具があるでしょうか。力では得をするけれど、距離で損するようなものを考えて発表して下さい。」

(上:クラスによって発表される内容は違う。間違っているものもいくつかある。)


 「では、時間が許す限り、発表してもらった道具について調べてみることにしましょう。」
 「1番初めはシーソーです。」

4 シーソー(仕事の原理)
 「シーソーは乗ったことがありますね。公園にあるやつです。じゃあA君、体重はいくらですか?」
 「63キロですね。じゃあ、つり合うためには何Kgの人を載せますか?」
 「そうですね。63Kgです。簡単です。イラストにしましょう。」

 「次に、Bさん、体重はいくらですか?」
 「50Kgですね。さて、ここでもし、体重の重い人と乗ることになったら、相手は何処に乗ってもらいますか。前ですか? それとも、後ろですか?」
 「そうです。大正解です。手前に乗ってもらえばつり合います。では、具体的に体重を100Kgにして、Bさんが乗った位置を中心から4mとした場合、100Kgの人は何mのところに乗れば良いですか?」
 「そうですね。半分の2メートルです。計算方法は必要ないかも知れませんが、Bさんの方は50×4=200の仕事量になるので、100Kgの人の仕事量も200になりますから、200÷100=2で、2mになります。」

(上:他クラスのC君は53Kgだった。)


4 てこ(仕事の原理)
 「次に、てこを使って象を持ち上げてみましょう。Dさんの重さを40Kg、棒の長さを2mとすると、重さ2tの象を持ち上げるためには棒を何cm差し込めば良いでしょうか?」

<計算方法>
1 人の仕事量= 体重×てこの長さ
2 象の仕事量= 象重×てこの長さ
3 1=2


5 はさみ、ペンチ(仕事の原理)
 「下のような2種類のはさみがあります。ぶ厚い紙を切れるハサミはどちらでしょか? この問題はペンチでも同じなので、どちらのペンチの方が太い鉄棒を切れるでしょうか?」


6 滑車(仕事の原理)
 詳しく学習すると面白いけれど、これは1時間では終わらないので、興味を持ったクラスだけに、ちょこっとだけ紹介しました。


・ 体重60Kg人は、60Kgまでの重さの物体なら、紐にぶら下がるだけで持ち上げられる。しかし、61Kgの物体はどんなに力を入れても持ち上げることはできない。協力接着剤で、靴を床にくっつけるなら話は別ですが・・・

7 本時のまとめ・感想・発見



◎ Eさんの学習プリント


<評価基準>
1 自然事象への関心・意欲・態度
 B 身近にある道具から、仕事の原理を導き出せる

2 科学的な思考
 B 何かで得をしても他で損をするという仕事の原理を、自分の人生に当てはめて考察できる

3 実験・観察の技能・表現
 B さまざまな道具の力と距離の関係を正しく図示できる
 B 斜面上にある物体に働く力の大きさを誤差プラスマイナス1mmで求められる

4 自然事象についての知識・理解
 B 仕事量= 力× 距離 を理解できる
 B 仕事の原理を理解できる


授業を終えて
 シーソーについて夢を奪ってしまったかも、と反省している。とくに女子生徒は体重を気にするけれど、過剰反応のような気もするけれど、これは自分がおじさん先生になってしまったからだろうか。いずれにしても、たくさんの感想を生徒が書いてので今日の授業の成果は大きかったと思う。

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