このページは『3年(2011年度)Mr.Taka 中学校理科の授業記録』です

9 いろいろな電解質の電気分解

          2011年10月中旬、第2理科室

 これまでに電気分解したものは塩化銅、塩酸(塩化水素)、水(2年)で、それぞれ、銅と塩素、水素と塩素、水素と酸素に分解しました。いずれも、化学式を2つに分けたような分解で、とても理解しやすいものです。反応式は下の通りです。
塩化銅 
塩化水素
(電気分解) → 銅
(電気分解) → 水素
(電気分解) → 水素
+ 塩素
+ 塩素
+ 酸素

 教科書はこれでお終いです。+−を調べる必要がないならこれで十分ですが、入試では出題されます。そこで化学電池につなげるためにも、いろいろな電解質水溶液の電気分解をすることにしました。


上:いろいろな電解質を準備する生徒達。


授業の流れ
1 いろいろな電解質を電気分解をすることを知らせる(2分)
2 電解質を紹介する(2分)
3 実験結果を紹介する(6分)
4 実権手順を解説する(5分)
5 生徒実験(30分)
6 片づけ(5分)


taka先生のお話
1 いろいろな電解質を電気分解をすることを知らせる(2分)
 「これまでに塩化銅と塩酸を電気分解しましたが、今日は、いろいろな電解質を分解します。とりあえず、6種類用意しましたので、各班の実力に合わせて分解してみてください。速い班は全部分解できると思います。おっと、その前に電解質について復習しておきましょう。電解質とは何か、わかるひと? ・・・はい、その通りですね。水に溶かすと電離してイオンになる物質ですね。ま、前に実験したように、ほとんどの物質は電解質を考えて間違いありません。電解質でないものは、2つ、食塩とエタノールでした。」

2 電解質を紹介する(2分)
 「では、本日分解する電解質を紹介します。(瓶を見ながら、1つずつ板書しながら)まず、塩化ナトリウム。これは食塩ですね。次に、塩化アンモニウム、硫酸カリウムアルミニウム。ところで、硫酸カリウムアルミニウムの、もう1つの簡単な名前を知っている人はいますか。小学校でこの物質の大きな結晶をつくった人もいると思いますが、、、誰も知らないようですね。この名前はミョウバンです。次に、炭酸ナトリウム、塩化カルシウム、炭酸カルシウムです。とりあえず6種類出しておきますが、全部できてしまった班は教えください。まだまだたくさんあるので、準備室から出してきます。」 

上:とあるクラスでの板書

3 実験結果を紹介する(6分)
 「さて、黒板に書いた6種類の電解質を電気分解したときの結果を、先に確認しておきます。第1問、食塩を電気分解すると何と何になると思いますか。わかる人? ・・・ナトリウムと塩素・・・残念でした。塩素はできますが、ナトリウムはできません。ナトリウムはとても反応性が高い金属で、実は、小指ほどの小さなものでも、水と接触させると大爆発を起こします。プールの中に放り込むと水柱を立てて水が吹き飛びます。ということで、ナトリウムではないものができますが、何だと思いますか? ヒントは、+イオンだったものが出てきます。・・・もう1つヒントを出すと、みなさんが電気分解するのは、食塩ではなくて、食塩水、つまり、食塩と水だから、、、・・・ そうですね。水素です。水素イオンは+イオンなので、水素イオンが水素になります。ということで、食塩水の電気分解は、−極に水素、+極に塩素ができます。次に、塩化アンモニウムですが、これも全く同じ結果になります。−極は水素、+極は塩素です。アンモニアは発生しません。次のミョウバンは、化学式『AlKSO4』を見ればわかるように、アルミニウムとカリウムと硫酸イオンがあるのですが、そのどれも出てきません。電気分解でできるのは、水素と酸素です。次の、炭酸ナトリウムも同じです。できるのは、水素と酸素です。水の電気分解と同じ結果で、ミョウバンや炭酸ナトリウムは関係ないのです。つまり、ミョウバンや炭酸ナトリウムは、電気が流れない水に入れて、電気が流れるようにしただけの物質、と考えることができます。2年生でやった水の電気分解では、ミョウバンや炭酸ナトリウムではなくて、ある物質を入れたでしょ。覚えていますか? ・・・はい、そうですね。2年生では水酸化ナトリウムを入れました。これで、水の電気分解で水酸化ナトリウムを入れた理由に対する疑問が、ちょっとだけ解けた人がいると思います。さて、次の塩化カルシウムは電気分解すると、水素と塩素。炭酸カルシウムは水素と酸素になります。こうして、6種類の結果を振返ってみると、日常生活でよくある物質ができることがわかります。水素、塩素、酸素しか出てきません。詳しいことは、2時間後に調べますが、とにかく、簡単な物質しか出てこない、電気分解しているのは水に溶かした物質だから、H2O(水)を構成するH2(水素)とO2(酸素)ができることが多い、ということです。」

4 実験方法を解説する(5分)
 「次に、いくつかの実験ポイントを紹介します。まず、できるだけ濃い水溶液をつくるために、少量の水に溶かしてください。そして、電流がよく流れるように電極の距離を近づけてください。次のポイントは、発生した気体を確かめるためのテクニックですが、水上置換法で集めてみましょう。まず、試験管に水を入れて(演示しながら)、薬包紙を2cm四方ぐらいに小さく千切って、それを上に乗せて、逆さにします。(生徒はえっ、て顔をする)それをビーカーの中に入れれば良いのですが、そのために電極を逆さにしなければいけないので(演示しながら)、クリップでがっつり電極を挟んで、それを直角に曲げて、ビーカーの中に沈めます。(生徒はえっ、て顔をする)そして、逆さになった炭素棒の上に、試験管を薬包紙ごとつっこみます。これで水上置換法装置の完成です。もちろん、実験が終ったらリード線をしっかり洗ってください。みなさんの手も炭素棒も、1回1回洗ってください。実は、今回の実験結果を見ればわかるように、きれいにしていれば、電極は一切汚れません。電極にできるのは、水素と酸素と塩素ですからね。そして、水素を確かめたい人はマッチで爆発、酸素を確かめたい人は線香でぽん、してください。線香のぽん、は忘れてしまった人がいると思うので確認しておきましょう。・・・(中略)・・・それでは、実験始め!」

5 生徒実験の様子(30分)

上:電解質を溶かす生徒。物質が水に溶ける、という当たり前の現象を具体的な原子やイオンとしてイメージしながら操作できるかという点で、自然に対する興味関心がわかる。そのような生徒を育てることが理科教師の本当の仕事である。


上:水を入れた試験管に薬包紙を載せ、試験管を逆さにセットしようとする様子。


上:ビーカー内のクリップ、炭素棒に注目。理科の先生に見つかったら怒られてしまいそうな実験装置。


上:電圧の指定はとくにしていないが、10ボルトから20ボルトぐらいで実験していた。

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上2枚:−極にできた水素を確かめる生徒


上:水中でショートする炭素棒(恐ろしいものを見てしまった)
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上2枚:+極にできた酸素を確かめる生徒


上:中性洗剤『チャーミー』の原液を電気分解する様子。プラスの電極が白い繭のようつつまれた。これは、発生した酸素によってできたものである。


上:Aさんの感想

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