このページは『3年(2011年度)Mr.Taka 中学校理科の授業記録』です

10 純物質を水に溶かしたときの変化3つ

          2011年10月中旬、普通教室

 ここで、化学電池を電気分解の理論やまとめをするのが筋ですが、どうやら、2年生までの学習を忘れているようです。物質とは何か? とくに純物質とは何かをおさえる必要があります。その次に、純物質を水に溶かしたときの様子を3つにまとめることも必要です。3年生で学習することは、純物質を水に溶かしたときに電離するものがあり、それを電解質という、ということです。

 ところで、どの教科でも同じですが、この1時間には復習に対する重要な考え方が含まれています。それは、新しい知見を自分のものにするときは、古い知見を組み建て直すと良い、ということです。この授業は、小学校と中学2年生の復習から始める、ということになっていて、実際に復習するわけですが、今と昔では見えるものが違います。初めて習ったときは限界ぎりぎりでも、発展的内容や直接関係ないことを習んだことで、ゆとりを持って自分のものにできる可能性が大きくなったのです。したがって、ある程度の時間をかけ、ごく簡単な内容を復習する価値はとても大きいのです。とくに、公立学校の普通授業は、さまざまな生活環境にある生徒が集まるので、いろいろな環境で得た経験を発表する授業は面白いものになるでしょう。専門用語や術語を使えば一言で片付いてしまうことを、日常の言葉で説明させるのは楽しいことです。そうすることで、自分の体験にもとづいた事象・知識として脳に刻まれるのです。
※関連ページ『
何年か前のことを復習するMr. takaによる、若手教師のためのワンポイント・レッスン


授業の目標と目標達成の手順

1 純物質の定義を確認する(20分)
 (1) 自由に、純物質の説明をさせる
 (2) 単体について確認し、例をあげさせる
 (3) 化合物について確認し、例をあげさせる
 (4) (2)と(3)を合わせて、純物質をいうことを確認する
 (5) 純物質に対する語として、混合物があることを確認し、例をあげさせる
 (6) 純物質を混合物を合わせて、物質をいうことを確認する

※上記(1)〜(6)は中学2年生までの復習であるが、生徒の様子から、ここまで明確にまとめた経験はないようだった。なお、10日ほど前にはチョークを使って『物質の復習(原子の構造)』、その1時間前に『原子の記号の復習(イオンの周期表(原子番号1番から20番まで))』を終えている。


上:Aさんの学習プリント


上:Bさんの学習プリント


上:Cさんの学習プリント


2 純物質を水に溶かしたときの様子を3つにまとめる(20分)
 (1) ビーカーを3つ、横に並べて書かせる
 (2) それぞれの上に、純物質を5粒ずつ書かせる
 (3) 溶けるもの1つ、溶けないもの2つに分類させる
 (4) 溶けないものは、『沈澱すること』を確認する
 (5) 溶けるとは何か、溶けているときの状態とは何か、発表させる
 (6) 溶けた物質は『見えない=透明』であることを確認する
 (7) 溶けた物質が見えないのは、1粒ずつが小さいからであることを確認する
 (8) 溶けているとき、1粒ずつが運動していることを確認する
 (9) 水分子も1粒ずつが自由に運動していることを確認する
 (10) 運動し、均一に拡散したあとも、1粒ずつが運動していることを確認する
 (11) 透明は、無色と有色があることを確認する
※上記(1)〜(11)は中学1年生までの復習、以下(12)から中学3年生の学習内容『イオン』に入る。さて、電解質の電離に対する理解度は、ここまでの内容をどれだけクリヤーにイメージできるか、にかかっている。つまり、中学3年の内容に専念するより、それ以前に学習に時間をかけ、その内容を総合的に深く理解し直すことで、ごく自然に『水に溶けること』『粒がばらばらになること』『さらに、プラスイオンとマイナスイオンに物質があること』をイメージ、理解できるようになる。

 (12) 水に溶ける物質の分類方法を発表させる
 (13) 水に溶ける物質は、イオンになるものとならないものがあること、
  つまり、非電解質と電解質に分類されることを確認する
 (14) イオンにならない物質(非電解質)の方が珍しいことを確認する
 (15) 非電解質の例は、砂糖とエタノールの2つで良いことを確認する
 (16) 電解質の例は、
フルーツ電池で調べたように非常の多いことを確認する
 (17) 水に溶けない物質(沈澱する物質)も少ないことを確認する
 (18) 沈澱する物質の例は、CaCO
3とBaSO4の2つで良いことを確認する


上:Cさんの学習プリント


3 各生徒による復習、まとめ、感想(10分)
 復習中心の授業は、最後に自分の言葉でまとめる時間をとりましょう。稚拙な表現や言葉でも、自分で書き直すことは重要です。不十分であっても構いません。今後、少しずつ十分になっていきます。今回の授業でわかったように、その時100%理解できなくても、何年か経てば理解できるようになります。100%でなければダメ、という授業はダメです。授業は、丸とバツしかない定期テストとは違います。少しずつ、1歩1歩進んでいうこと、3歩進んで2歩下がるようにすることです。2歩下がることを怖れてはいけません。むしろ、下がることを良しとする姿勢を育てることが大切です。

 なお、全くできない生徒には、優しく微笑んで教科書を写すように指示しましょう。10回ぐらい写させると効果的です。


補 足
・見えなくなることは『小さな粒だから』、という理由で説明できます。しかし、水に溶けるということは大学レベルです。水分子の極性など多様な要因があるので、深入りすることはできません。優秀な生徒は、ここでも疑問を持ちますが、自由研究のテーマに相応しいものとして提案するにとどめましょう。

・水に溶けない物質もありますが、溶けないように見える物質でも僅かに溶けます。正確には、水に対する溶解度の違いから説明するべきですが、中学3年レベルで深入りしてはいけません。

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