このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第17時
実験17:植物がつくるデンプン

     2012 6 4(月)1限 脱履場→ 理科室
     2012 6 4(月)2限 理科室←→ 屋外 
     2012 6 5(火)4、5限 理科室→ 瑞穂公園→ 理科室
     

はじめに
 いろいろな植物のデンプンを確かめます。とはいっても、野草を採取して脱色し、ヨウ素液で青紫になるか調べるだけです。日光の条件を変えると面白くなりますが、梅雨前の季節に安定した晴天は望めません。中途半端な実験は消化不良を起こすので、今日は楽しさ優先です。いろいろな植物のいろいろな部分を使い、色の変化の違いを調べることにしました。子どもは大人より柔軟なので、すごい発見をする可能があります。自由度を高め、私も楽しみたいと思います。

 時間が空けば、ブドウ糖とデンプンの関係、光合成の化学反応をまとめる予定です。

 なお、授業場所は3クラスとも違いました。とくに、6月5日(火)のクラスで2時間使ったのは、3年修学旅行に関係する授業を頂いたからです。瑞穂公園まで散歩し、試料となる植物をゆっくり採取しました。季節変化も観測でき、嬉しい限りです。旬の野草を使った実験は、本当に楽しいものです。


上:ヨウ素反応後のろ紙を窓に貼り付け、乾燥させている様子


本時の目標
1 デンプンのヨウ素反応を確認する
2 脱色方法を確認する
3 いろいろな植物のいろいろな部分のデンプンを調べる
4 色の変化がわかるように標本を整理、まとめる
5 ブドウ糖とデンプンの関係を知る
6 光合成の化学反応式を知る

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • ろ紙 (2/人)
  • 木づち(2/班)
  • エタノール(500ml)
  • バット大小
  • 80度Cの熱湯20l
  • ヨウ素液
  • ヨウ素液を入れるバット4


授業の流れ
(0) 始業前

 理科係を通して、1年脱履場に集合することを伝えます。

(1) 始業のあいさつ、本時の内容紹介
 脱履場で始業の挨拶をします。そして、次のように本時のスケジュールを紹介します。
 「(ろ紙を高く挙げて見せながら)今日は1人2枚ずつろ紙を配ります。まず、このろ紙に挟んでみたい植物を採取してください。目的は、採取した植物にあるデンプンを確かめることです。教科書は、アルミ箔で葉の一部を隠し、日光が当らないようにして、当った部分と比較していますが、私達はそのような実験をしません。そのかわり、同じ植物でよく日光が当っているものとそうでないものを比較したり、茎、あるいは、根を調べてみましょう。茎や根にもデンプンはあります。ジャガイモは地下茎、サツマイモのデンプンは地下の根ですからネ。また、いろいろな植物の葉を調べても良いし、1つの植物で太陽の当たり方が違うものを比較しても良いし、1つの植物のいろいろな部分を調べても良いです。何を調べるかは君たちに任せますので、楽しく採取してください。何を採取するか、それを考えて選ぶことが今日の実験の鍵の1つです。何か質問はありますか。では、解散!」

(2) 生徒実習
 おおまかな説明が終わったら、生徒実習のはじまりです。細かな注意点は、実習しながら示します。内容が多いので、全部は覚えきれないからです。

実習の手順
1) いろいろな植物、試料の採取
2) 植物細胞の叩き出し
3) 植物繊維の除去
4) 葉緑体に含まれる葉緑素の脱色
5) ヨウ素反応を調べる
6) ろ紙を乾燥させる

1) いろいろな植物、試料の採取
 葉を採取する場合は、太陽の方向を確認させます。少なくとも2時間、直射日光が当っていたものが良いでしょう。2時間前の太陽の位置、太陽の動きを確認します。


上:ヨモギの葉を採取する生徒達


上:野草の中から適切なもの探す生徒達
 柔らかく瑞々しい葉や硬い葉など、いろいろ探すと良いでしょう。面白い形のものは、単純に面白いです。葉脈がはっきりしているものや硬い葉は、それが転写されます。

2) 植物細胞の叩き出し
 ろ紙を2つい折り、その間に植物を挟み、木鎚で叩きます。強く叩き過ぎると紙が破れます。必要以上に叩くと、不要な植物繊維がろ紙に絡んで、結果が分かりにくくなります。こんなに軽くても大丈夫? 何も取れていないのでは? と心配になるぐらいでも、綺麗な青紫に染まることがあります。いろいろ試してみることが大切です。また、自分の指や手を叩かないように一言注意してください。


上:床の上で、ろ紙に挟んだ植物を叩く生徒
 机より床の方がクッション性が高く、上手くできます。


上:様子を確認しながら、たたき出す生徒

3) 植物繊維の除去
 ろ紙に張り付いた、不要な植物繊維を取り除きます。指や爪で十分ですが、必要に応じてピンセットを使います。


上:理想的に叩き出せたと思われるもの

4) 葉緑体に含まれる葉緑素の脱色
 植物が緑色をしているのは、細胞の中にある葉緑体に含まれる葉緑素が原因です。それを脱色してから、ヨウ素液でデンプンの有無を調べます。脱色する方法はいろいろありますが、私は今回、初めて100%エタノールを使いました。無色透明が緑色透明に変化する様子は、感動的でした。ただし、エタノールに敏感に反応する生徒がいるので、換気には十分注意してください。


上:無水エタノールで脱色している様子
 高温の湯でエタノールを加熱します。写真上のように、大小2つのバットを組み合わせ、下に湯を入れてください。エタノールは熱いほどよく脱色します。エタノールの沸点は78度Cなので、それ以上の温度にはなりません。エタノールが蒸発し、バット近くの作業員は酔っぱらい状態になります。何クラスか連続して実験する場合は、先生も気をつけてください。

 なお、これぐらいのサイズのバットの場合、1クラスで300ml〜400mlのエタノールが気化、消費されます。もちろん、1クラスに1つのバットです。混雑しますが、順序良く作業させてください。50枚以上同時に入れても構いません。先生が脱色の様子を見て、できたものは次々に取り出していきます。湯はすぐに冷えてしまうので、1時間で2回程度熱いものと変えてください。


上:エタノールを使った脱色の様子
 バットの中のエタノールの色を見てください。美しい緑色です。また、ろ紙は、どれだけ長時間エタノールの中に入れておいても柔らかくなることはありません。これは大変良いことです。水を含んでいないことが原因なので、水が混ざらないようにしましょう。市販の漂白剤でも脱色できますが、長時間入れておくとろ紙が溶けてしまいます。


上:湯を入れている様子

5) ヨウ素反応を調べる
 いろいろな濃さのヨウ素液を入れたバットを用意します。生徒は、自分の好みの濃さに入れ、ろ紙にデンプンが転写されたか調べます。デンプンがあれば、その部分は青紫色になります。濃い青紫は、黒く見えます。


上:窓際に用意したバット(ヨウ素液入り)で染色する生徒


上:ヨウ素液につけられたろ紙
 長時間つけておくと、ろ紙が破れてしまうので注意しましょう。

6) ろ紙を乾燥させる
 ヨウ素反応を調べたら、ろ紙を乾燥させます。濡れたまま窓ガラスに張り付けておけば、ろ紙をまっすぐに乾かすことができます。


上:窓ガラスにろ紙を張り付けている様子


上:ヨウ素反応で青紫になったもの(右)


上:A君の学習プリント


上:斑(ふ)についての板書


上:手順とヨウ素反応の確認
 ヨウ素液の反応のまとめ方に着目してください。反応前と反応後の色を、長い矢印で結びます。そして、矢印の上に操作方法を記します。その他の指示薬も同じようにまとめることができます。


上:植物がつくるデンプン(右下)と葉緑体のはたらき(左上)の板書
 これは2時間連続クラスで行いました。初めに『植物がつくるデンプン』、次に『葉緑体のはたらき』を知らせました。合計5分使いました。ブドウ糖とデンプンの違い『甘いとまずい』は、生徒から出されたものです。


上:教科書を見て、実験内容を確認する生徒
※脱履場ではなく、教室で授業を始める場合は、教科書を一瞥させると効果的です。最終ゴールが見えるからです。


授業を終えて
 校庭で最後まで採取していた生徒につきあってから、理科室へ向う時の話です。脱履場に来ると、工事現場のような音がしました。どんどんどん、かなりの騒音です。もしや! と思う間もなく階段を駆け昇りましたが、爆音の発生源は理科室でした。理科室は3階にあります。迷惑度120%といったところでしょうか。私は即座に作業を中止させ、床で叩くように指示しました。理科室の床はクッション性があり、音も小さく、叩き出しにも好都合です。幸いにして、廊下に恐い顔をしている先生はいませんでしたが、驚異の爆音でした。中学1年生にもストレスが溜まるのかな。

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上2枚:終業10分前の授業風景
左はヨウ素液で染色する生徒達、右はたたき出したり(手前)脱色(右奥)したりする生徒達。自主的にいろいろな場所で活動している様子をスナップしました。

関連ページ
 実験1 ヨウ素反応(でんぷんの合成) 1年(2002年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の生物学
第2章 細胞の構造とはたらき 雑草の葉からでんぷんを取り出す実験 p.34〜p.35

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観察16 光合成,ブドウ糖からのつくり変え

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実験18 植物の呼吸

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