このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録> 1年(2012年度)です |
第68時
実験20 浮力の大きさ(アルキメデスの原理)2013 1 8(火)、10(木)
理科室はじめに
水中にある物体の浮力は、とても簡単です。体積=浮力(1cm3 = 1g重)、だからです。これを発見した人は古代ギリシャのアルキメデスで、彼の名前にちなんでアルキメデスの原理、といいます。なお、アルキメデスの原理は水だけでなく、食塩水やエタノールなどの液体、空気や酸素などの気体でも成り立ちます。液体と気体を合わせて流体といいます。浮力は『固体を流体(液体や気体)に中にいれたときに発生する』と考えることもできます。
アルキメデスの原理
物体を流体の中にいれると、物体が押しのけた流体にはたらく重力と同じ大きさの浮力が発生する。水(密度1g/cm3)の場合、体積1cm3につき1g重の重力(=浮力)。上:
本時の目標
1 物体を水中へ入れると、浮力で軽くなることを確認する
2 物体の体積と浮力の大きさは比例する、ことを知る
3 物体の体積と浮力の大きさが等しいことを確かめる
→ 近い将来、1cm3 = 1g重(0.01N)を教えることができますように!準 備
生 徒 教 師
- 教科書
- 理科便覧
- 本日の学習プリント (1/人)
- 浮力 測定用の物体
- 糸
- 100g重(1N)ばねばかり
- 200g重(2N)ばねばかり
- 500mlビーカー(または水槽)
授業の流れ
(1) 本時の授業内容の紹介 (3分)
「今日の学習プリントのタイトルを読んでみましょう。実験20、何、と書いてありますか? ・・・ その通り、浮力の大きさと書いてありますね。物体を水の中に入れると軽くなるのは知っていると思いますが、水の中に入れたときに発生する上向きの力を浮力といいます。えっ、水に入れると軽くなることを知らないって! ちょっと待って! 知らない人は手を挙げてください。意外にたくさんいますね。じゃあ、プールに入ると浮きますか、沈みますか。全員に質問です。浮く人? ・・・ 沈む人? ・・・ どちらにも手が挙りましたが、沈む人は空気を思いっきり吸ってからプールに入ってください。ぷかーん、と浮きます。逆に、浮く人は肺の中の空気を全部出してください。沈みます。人の体の70%は水なので、肺の中にある空気の量で浮いたり沈んだりします。潜水するときは、空気がない方が沈みますが、すぐに苦しくなります。ということで、君の体重とは関係なく、プールの中では体重がなくなります。自分の体重とほぼ同じ大きさの浮力が発生するからです。
さて、今日の授業は学習プリントの左ページで浮力の理論をまとめ、右ページで実験してもらいます。理論どおりになるか、実験で調べてもらいますが、なかなか理想的なデータはとれないので、しっかり左ページで学習しましょう。左ページでまとめるときの値は、できるだけ簡単な数字にします。簡単な数字を決めることができれば、浮力は簡単にわかります。逆に、簡単な数字を決めることができる人は、よく理解している証拠になるので、できるだけ簡単な値をみんなで考えてましょう。簡単な値で、簡単な計算をして、全員正解にしましょう。」
(2) 物体を水に沈めたとき、小さくなるばねばかりの値 (12分)
下図のように、A〜Dを印刷しておきます。物体の質量は変わりませんが、水に入れると『ばねばかりの値』が小さくなります。浮力が発生するからです。『浮力=水中に沈めた物体の体積』という関係は、具体的な数値を入れることで明確になります。
上:あらかじめ印刷しておいた4つの図上図のポイント
1 物体の質量は変わらない
2 Aは初めの状態
3 Bは半分、CとDは全て水中に沈めた状態
4 ばねばかりの数値は授業現場で決める
※ 予定はA:100g重(1N)、B:80g(0.8N)、C:60g(0.6N)「Aのばねばかりはいくつにしますか? ・・・ 1N(ニュートン)、大変よろしい! 単純明快で良いと思います。それを採用します。では、ばねばかりに1Nと書いてください。そして、1Nの重力がはたらく物体の質量g(グラム)も記入しましょう。1Nは何g ? ・・・ その通り、100gです。」
「次に、Bの値を決めます。いくつにしますか? ・・・ ええっ、2N?? それは絶対にあり得ません。みなさんどうしてかわかりますか。 ・・・ そうですね。水の中に入れると軽くなるからです。1Nより小さくしてくださいよ。それから、Nを使うと分りにくい人がいるので、gを使うことにしましょう。ばねばかりの単位はNですが、今日は質量の単位gだけを書くことにします。Nにしたい人は、後から1/100にしてください。
では、100gより小さな値を募集しますが、Bを良く見てください。半分だけ水に入っています。次のCは全部水に入っています。Dはさらに深く入っています。この図の流れを見て、良い感じの数字を考えてください。良い感じの数字で、良い感じの問題にできる人は、浮力の大きさを正しく予想できている人です。
Bの値をいくつにしますか? ・・・ 80g、75g、50g、いろいろ出てきましたが、どれでも悪くありませんが、ここは先生に任せてもらえますか。先生のセンスと同じ人は、80gです。75gでも良いのですが、計算が少しだけ難しくなるので、より簡単な80gを採用します。50は、全部沈めたときに若干分りにくいことになるので良くありません。」
「Cの値は、ちょっと考えるだけで出てきます。A100g、B80gなら、Cの値は決定です。Cは何g ですか。これが正解の人は、今日の授業は半分終ったようなものです。早いけれど、浮力について分かってしまっかのですから、お終いです。さあ、Cは何g ですか。考える時間を1分差し上げます。
では、答えが分かった人? ・・・なるほど、60gですか。60gに賛成する人は手を挙げてください。 ・・・ 15人ぐらいいますね。その人は正解! すばらしいです。さらに正解者のうち、Cが60gになる理由をみんなに説明できる人はいますか。 ・・・ では、Q君お願いします。
上:Bは半分で20g軽くなったことを指摘するQ君(中略)・・・ Q君の説明を確認しますと、半分で20gだから、全部で40gになるわけです。したがって、100g- 40g = 60g、答えは60g です。」
「ここで、BとCの浮力の大きさを図にしましょう。浮力は水に入った部分によって発生したのですから、水に入っている部分だけに色を塗ります。そして、同じ色で上向きの力、浮力を矢印で書きますが、BとCは長さが2倍違います。よろしくね!
それから、できる人は『矢印の始まりの点』、作用点にもこだわってください。水にはいった部分の中央、色を中央に小さな点を打ち、そこから矢印を書いてください。」
上:ここまでの板書例「いよいよ最後の問題です。Dは何gになるでしょう。Dは、Cより2倍沈めたことにします。答えは、60g、40gのどちかです。全員に答えてもらいます。考える時間は30秒。
・・・(中略)・・・BとCでわかったように、浮力は水に入った体積によって決まります。つまり、深さとは関係ないので、正解は60g。Cと同じです。」
上:ここまでの板書例(3) アルキメデスの原理 (7分)
(2)の思考実験の結果をまとめることで、アルキメデスの原理を導きます。
上:穴埋め問題形式にしたまとめを完成させる生徒(クリックすると、まとめの完成)その後、違う色のチョークで体積を記入して、アルキメデスの原理の完成です。ただし、言葉では正しく説明しましたが、黒板に記述した内容はちょっと違うので、正しくはこのページの冒頭にあるアルキメデスの原理をご覧ください。
(4) 生徒によるアルキメデスの原理の検証実験 (25分)
ここから授業後半、実験を始めます。プリントのまとめが終った生徒から準備を始めます。準備する器具は、終った生徒の顔を見ながら指示します。準備を始めてから約3分で、ほぼ全員完了します。そろったところで、実験手順を説明します。ポイントは、左ページA〜Dと右ページA〜Dが対応していることです。
実験手順の説明のポイント
1 測定する物質(物体)は3種類、6個浮力を測定する6つの物体
1 アルミニウム(大)
2 アルミニウム(小
3 塩化ビニール(大)
4 塩化ビニール(小)
5 木 (大)
6 木 (小)
上:浮力を測定する6つの物体2 物体(直方体)の体積は3辺の長さをかければ良い
・体積は『実験装置の解説書』に書いてあった(ラッキー!)
・大:40cm3、小:20cm3
・体積をメスシリンダーで測定することはお勧めしない。誤差が大きく、結果が面白くないからである。とくに、今回のように体積が分かっている場合は、浮力の測定に専念すべきである。ばねばかりによる測定は、意外に大きな誤差が出る。一般に、目盛りがある測定器具は目盛りの1/10まで読むことになっているが、ばねばかりそのものの誤差が大きい。親切なものは誤差を表示してあるので確認すること。3 物体にはたらく重力(g重、N)を測定する
・ばねばかりの単位としてg重を使えば問題ないが、今はNを使わなければいけないので、力Nと質量g を並記した。理解度が低い子どもが多い場合は、質量g だけを使うべきだろう。最後にg をNにすれば良い。
上:6つの物体にはたらく重力の大きさを測定する生徒達
上:目の高さで値を読む生徒
ばねばかり上部の丸い輪をつまむようにして持てば、ばねばかりが鉛直になり、より正確になるが、上の生徒は問題ないだろう。それより、ゼロ点調節の方が大切。4 ばねばかりの目盛りの単位に注意する
これが最大の問題点です。古いばねばかりの単位はg重(重力単位系)ですが、最近はN(国際単位系)になっています。Nだけなら何とかなりますが、写真下のようにg重とNが並記してあるものは、その意味を説明しなければなりません。御丁寧に100g重=1Nではなく、100g重=0.98Nとなっているものは本当に困ります。さらに、gとNが並記してあるものは完全な『間違い品』です。質量(g)と力(g重、N)の区別ができていないものは処分するべきでしょう。
上:Nとg重を並記したばねばかり5 入水前の状態(A)の測定を終えたら、自由に実験開始
1〜4で調べたことは、物体の体積(cm3)と重さ(g重、ここでは質量g になっていますが)です。浮力の大きさを測定する上で大切なことは、この初めの体積と重さをはっきりさせることなので、しっかり確認しましょう。下図は、入水前(A)の体積を全て記入し、さらに、初めの重さと全部沈めたときの重さから、浮力を求めています。なお、半分沈めた状態(D)は斜線とし、測定しませんでした。
上:体積は大40cm3、小20cm3。浮力の計算式は、はじめ(g)-全部(g)=浮力(g)。
※浮力の単位は(g重、N)なので、例えば、アルミ大40cm3は「質量40gにはたらく重力と同じ大きさの浮力が生じる」と説明すること。
上:ビーカーに物体を沈めて何g軽くなったか調べる生徒
上:ビーカーに物体を半分だけ沈めて何g軽くなったか調べる生徒(掲載許可取得中)
上:違うものを量っても良いです!(5) 実験結果の考察、後片付け (10分)
授業を終えて
深く沈めたときの浮力を測定することは、不要でした。実験をする過程で、自然にわかることでした。実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学』
第2章 静かな
力のつりあいアルキメデスの原理 p.38、p.39 よくある重力と浮力の実験 p.40、p.41
実験19 水の圧力 |
実験21 水圧と浮力の関係を矢印で表す |