このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第71時
実験23 浮沈子をつくろう(パスカルの原理)

     2013 1 22(火)、23(水)
     理科室

はじめに
 多くの小学校で現象だけを学んでいる『浮沈子』の理論を学び、時間に余裕があるクラスは制作します。

 浮沈子は、重力と浮力のバランスによって浮き沈みします。浮力が大きければ浮き、重力が大きければ沈みます。当たり前です! 重力は一定ですが、浮力はペットボトルを押さえると小さくなります。押さえると浮力が小さくなることの説明は、『パスカルの原理』を使います。

 パスカルの原理を簡単にいうと、『水や空気などの流体を容器に入れ、密閉して押さえると、容器全体に同じ圧力がかかる』です。ペットボトルのどこを押さえても同じ水圧になるので、浮沈子の体積が小さくなります。浮沈子に空気が入っているなら、空気の体積が小さくなります。体積が小さくなる → 浮力が小さくなる、という『アルキメデスの原理』により浮沈子は沈みます。以上が浮沈子の理論です。重力と浮力のつりあい、パスカルの原理、アルキメデスの原理、以上3点を順に押さえることがポイントです。


上:ペットボトルを押さえて、浮沈子を浮き沈みさせる生徒


本時の目標
 浮沈子が浮き沈みする理論を理解する
 パスカルの原理を理解する
 浮沈子をつくり、楽しく遊ぶ

準 備
生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • 栓付きペットボトル
    (1.5lの大きいものが良い)
    (口が大きいものが良い)
  • 醤油入れなど小さな容器
    (浮沈子の本体)
  • クリップやくぎなどの錘
    (浮沈子のおもり)
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • エナメル線
    (浮沈子となる小さな容器に錘をつけるため)
  • ネジやナットなどの錘
    (理科準備室を探せば、エナメル線で固定
    できるものがいくつかあるはず。業務師さん
    や校務主任に相談しても良い)

授業の流れ
(-1) 前時に行う浮沈子の材料説明 (3分)

 浮沈子の材料は、すべて持参させます。その材料は、上表にある『栓付きペットボトル』『醤油入れなど』『クリップやくぎなどの錘』の3つです。生徒から質問が出るのは、浮沈子の本体となる『小さな容器』なので、次のように説明すると良いでしょう。

浮沈子をつくりやすい容器
 「浮沈子は浮いたり沈んだりしますが、浮沈子を動かすためには、その中に空気を入れておく必要があります。よくある浮沈子は、弁当に使う小さな醤油入れです。100均ショップにいけば、いろいろな種類を売っていますが、無色透明なものは、容器の中の空気の量がわかるので最高です。ペットボトルを押すと空気が小さくなり、離すと空気が大きくなって、浮沈子の原理がよくわかるからです。できれば、空気がたくさん入るもの、醤油がたくさん入るものの方が良いでしょう。ただし、空気がたくさん入るものは、それだけおもりをつける必要があります。おもりは学校でも用意しておきますが、くぎやナットが家にある人は持ってきてください。小さな浮沈子なら、紙をはさむクリップで十分です。クリップ、くぎ、ナットの数を変えて、浮き沈みしやすいバランスを調節します。」※ナットはほとんどの生徒が知らないので、黒板で図解すること。醤油入れのキャップのネジの部分に、ちょうどはまるナットがあると良いけれど、そんなに都合良くいかない。下の写真のように、学校でエナメル線を配付して、それを巻き付けるようにすれば、簡単におもりをつけることができる。ただし、具体的な方法は当日説明する。


上:醤油入れの口の部分にエナメル線が巻き付け、その下にクリップをつけてバランスを調節したもの。ペットボトルは1.5lを使用している。

 「(生徒の筆箱から適当なペンを借りて、そのキャップを外し、キャップを手に持って見せながら)このキャップも浮沈子になります。ただし、このまま入れると、すぐに逆さまになるので、逆さまにならないように、下におもりをつけます。おもりの付け方は難しいと思いますが、おもりを取り付けることができれば、完璧に完成です。」

 「また、ペットボトルは栓がなければ意味がありません。押した時に水が吹き出てしまいますからね。それから、大きなペットボトルの方が動きが大きくて楽しいです。」

(1) 本日の授業内容の紹介 (1分)

(2) 浮沈子の理論を図示する   (10分)
 あらかじめ、学習プリントに2つの容器と浮沈子を印刷しておきます。1つは容器を押す前、もう1つは容器を押した後です。図解させるポイントは、浮沈子にはたらく2つの力、浮力重力の矢印を色分けすることです。それぞれの長さを正しく表現できる生徒は、浮沈子が浮き沈みする理論を理解したといえます。


上:A組の最終的な板書(クリックすると拡大)

浮沈子が浮き沈みする理由を図解する手順とポイント
 左のペットボトルの下に『・・・ので、浮く』書く
 右のペットボトルの下に『・・・ので、沈む』書く
 浮沈子を沈ませるための実験操作を考えさせる

→ 正解は『ペットボトルを密閉して押す』
 ただし、クラスによって発表される内容が違うので、生徒の理解が進むように対応する。最終的に、パスカルの原理を紹介すれば良いので、ここでがんばり過ぎると失敗する。上図A組では、『ペットボトルを押して
空気の体積を小さくする』とした。空気(浮沈子)の体積=浮力なので、浮力の色を緑色にして、後から書く矢印の色と統一するように指導する。授業冒頭で、「浮力と重力の色を決めなさい」と指示しておいても良い。

 左右のペットボトル間の矢印の上に実験操作を書く

 左右の浮沈子が浮き沈みする理由『・・・ので、』に適切な語句を考えさえる

→ 左の正解は『浮力が大きいので、浮く』
→ 右の正解は『
重力が大きいので、沈む』

 別な場所に、<まとめ>としての発問をする
 (1)・・・は変わらない
 (2)・・・は空気の体積によって変わる

→ (1)の正解は『重力は、変わらない』
→ (2)の正解は『
浮力は、空気の体積によって変わる』
 (2)はアルキメデスの原理であるが、ここでの再確認は簡単にすること。本日の主役は、次にまとめるパスカルの原理である。主役をはっきりさせないと、生徒は混乱する。アルキメデスの原理とパスカルの原理の2つがあること、それらは違うことを明確にする。

 パスカルの原理をまとめる
 → A組のまとめは『密閉した容器に力を加えると、全て同じ圧力がかかる』


上:B組の板書


上:C組の板書


上:Dさんの学習プリント

(3) 浮沈子をつくる
 持参した醤油入れで浮沈子を作らせます。浮沈子はいろいろなもので作ることができますが、このページの(-1)のように説明しておけば、各自考えて持参します。浮沈子づくりは、その材料を準備する時点で半分以上完了しています。


上:完成した浮沈子


上:同上


上:浮沈子を観察する生徒


授業を終えて
 浮沈子の理論は、順序良く指導すれば全員理解できます。また、浮沈子をつくる時は、エナメル線を使ってください。簡単におもりをとりつけることができます。

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学
 第章 静かな
  力のつりあい 
 パスカルの実験   p.35 
 パスカルの原理   p.42 
 浮沈子の実験   p.43 

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