このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第70時
実験22 大気による圧力

     2013 1 10(木)、11(金)
     理科室

はじめに
 大気圧は、水圧と同じように考えることができです。大気と水は一定の形を持たない流体で、いずれも『アルキメデスの原理』と『パスカルの原理』が成り立ちます。大気圧は大気の重さ、水圧は水の重さによって圧力が生まれます。浮力も同じように生じます。

 したがって、地球の大気と海を1つの図に表せば、13才の子どもでも同じ流体として統一できます。地球を真っ二つした断面図を用意し、宇宙、大気、海、山を書かせると良いでしょう。本年度の授業は、この図を書いてから、大気圧で空き缶をつぶす実験を行いました。

関連ページ
実験7 大気の圧力 1年(1999年)


上:大気圧と水圧は、同じ流体として考えられることを示した板書


本時の目標
 大気圧と水圧は、同じように考えられることを理解する
 大気圧は、大気の重さによって生じることを理解する
 平均的な大気圧は1013hPaであることを知る

準 備
生 徒 教 師
  • 教科書
  • 理科便覧
  • アルミ缶(ペットボトル)
  • 軍 手
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • ガスバーナー
  • 三 脚
  • 金 網
  • マッチ
  • 水 槽

授業の流れ
(1) 本時の授業内容の紹介 (1分)

(2) 大気圧を水圧と同じように理解する (16分)
 3時間前の授業『実験19 水の圧力』で、水圧は水深に比例することを学習しました。大気圧も同じように、大気の深さに比例する。大気の深さを考えるためには、大気の上限を決める必要があります。実際の地球の大気は、上空へいくにつれ段階的に薄く(密度が低く)なって宇宙空間につながっいますが、授業は『大気の厚さ10km』としました。これは水蒸気が循環する対流圏、雲ができる上限です。


上:A組の板書


上:B組の板書

大気と水を同じ流体として指導する手順とポイント
 水面に相当する『大気と宇宙の境界』を決める
 厚さ10kmとすると、
 富士山3.8km山頂上空の厚さ: 10km-3.8km=6.2km
 チョモランマ(8.8km): 10km-8.8km=1.2km
 ※酸素ボンベなしでは呼吸できない
 ※高地トレーニングの話
 ※気圧が低いので、すぐに沸騰する
 ※宇宙は、すぐそこ

 私達は大気の中で生活している、と考えることができる
 ※水中生活する魚と同じ
 ※宇宙飛行士の体は、深海から釣り上げられた魚のように膨らんでいる

 地表から風船を飛ばすと、上空へいくほど膨らむ
 ※気温の変化は無視した場合
 ※宇宙に達すると、風船内部の圧力で爆発する

 大気の厚さは、時間や場所によって変わる
 標準気圧1013hPaは、101300Pa(h ヘクトは100倍する接頭語)

 大気圧は、測定地点の上空にある大気の厚さで決まる
 ※水圧は、水深で決まる『実験19 水の圧力
 大気圧と水圧は、同じように考えることができる
 前時『実験21 水圧と浮力の関係を矢印で表す』のように、大気の重さによる力を矢印で表す
 ※上図『B組の板書』は、黄色の矢印で大気圧ピンクの矢印で水圧

(3) 理論:大気圧でアルミ缶をつぶす
 (4)でアルミ缶をつぶす実験をする前に、実験の方法と理論を確認します。学習プリントに印刷しておいた3つの空き缶に、目に見えない水の粒を書かせます。ポイントは、粒の運動量の変化、液体←→気体 の状態変化です。生徒は『実習14 物質の状態変化』『実験20 こげた砂糖の拡散(水溶液)』『実習23 溶解度曲線』で、運動エネルギー量を矢印の長さで表現することを学んでいます。さくさく理解できるでしょう。


上:A組の板書


上:B組の板書

大気圧でアルミ缶をつぶす理論の説明手順とポイント
 初めの水は、ごく少量
 水を加熱すると、何になるか考えさせる
 ※正解は、水蒸気

 2つめの図に、水蒸気の粒をたくさん書かせる
 ※矢印はまだ書かない。最後に書く。

 水蒸気がいっぱい入った缶に栓をして、冷やすと缶がつぶれる理由を考えさせる
 ※何人かの生徒が、正しい説明をしてくれるでしょう
 ※キーワードは『真空』『体積が小さくなる』『水に戻る(状態変化)』など

 真空を実感させるために、具体的な数値を出すと良い
 「水が水蒸気になったとき、体積は何倍になるか知っていますか。温度やいろいろな条件によって違いますが、ざっと1000倍です。1000倍になるということは、10円貯金しておいたら、いくらになるのかな? ・・・ その通り、1万円です。1000円札を入て加熱したら、・・・ 100万円になるわけです。しかし、今はその逆なので、貯金箱に1万円入れて冷やしたら、10円になっちゃった訳です。これはもう、真空というしかありませんね。」

 最後の缶が大気圧で押される矢印を書く
 ※矢印を書くのは、これが最初
 ※缶は、その内部に矢印なし
 「缶の外には大気圧がありますから、押されます。10万Paという、大きな圧力です。しかし、缶の中は真空なのでつぶるしかありません。

 次に、前の図に戻ると、水蒸気がいっぱい入っているので、これはつぶれません。つまり、熱エネルギーをもらった水の粒が元気良く飛び回り、缶の中を押しているからです。外の大気圧とつりあっているわけです。では、真ん中の図に、大気圧の矢印と同じ数の矢印を書きましょう。」

 中央の缶に、大気圧の矢印と水蒸気の矢印を書く

8 重大注意!
 「ここで重大事故が起らないように注意します。栓をしてから加熱すると、缶が大爆発します。金属の破片が飛び散ります。(片手の指2本を小さく合わせ、その間隔をだんだん広げ、最後は両腕をいっぱいに広げて)10円が1万円になる事故ですから、大事故です。絶対にやってはいけません。栓をする前は、必ず火を止めてください。火を止めて栓をすれば、缶は大気圧で押されて小さくなるだけなので安全です。でも、限界を超えたときは、一気に(大声で、パカンと叫んで)とつぶれます。ビックリを楽しんでください。」

 一番初めの缶の外と中に、大気圧の矢印を書く

10 以下のまとめはしなくても良い(先生の覚え書き)
 ※初めの缶は、その中に空気が入っている
 ※2つめの缶は、空気が水蒸気で追い出され、水蒸気だけが入っている
 ※3つめの缶は、水蒸気が水になり、その内部は真空になる

(4) 実験:大気圧でアルミ缶をつぶす
 前に述べた爆発事故が起らないように、十分注意しましょう。火傷事故は、実験中よりも後片付けをするに起きるので注意してください。次に、実験のポイントを紹介します。合わせて、栓がないアルミ缶、栓付きペットボトルの使い方を記します。

栓なしアルミ缶





※プルタブの部分を水面に入れたら、その状態を保つ。上手くいくと、一瞬で潰れる。一瞬で缶いっぱいに水が引き込まれることもある(失敗みたいな感じだけど成功です)。
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栓ありアルミ缶








※栓をした場合は、放置するだけ(空冷)でよい。完全につぶしたい場合や時間がない場合は、上のように水冷する。

実験のポイント
 軍手を使うときは、2枚重ねる
 アルミ缶やペットボトルのラベルは、溶けたり燃えたり軍手にひっついたりする
 るつぼばさみは、滑り落とさないように事前練習する
 ペットボトル本体は、70度Cぐらいで変形する
 水の白い湯気(液体)は、40度Cのお風呂でも発生する
 40度Cの水蒸気(気体)より、100度Cの水蒸気を使った方が、よくぶつれる
 高圧にすれば200度C、300度Cの水蒸気もできるが、絶対につくらない。確かめることもできない。

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上4枚:軍手を重ね、缶内部の水をこぼしながら逆さにして、ぺちゃんこにする様子

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左:ペットボトルに水蒸気を集めている様子(ペットボトルは手で触れることができる程度の温度までしか上げないようにする。ただし、栓をするときは焼けどしないように軍手をすること。)
右:栓をして、空冷したペットボトル(薄いボトルは良く凹む)

(5) 後片付け、考察
 三脚や金網で火傷しないように注意させます。


上:Dさんの学習プリント


上:E君の学習プリント


上:F君の学習プリント


授業を終えて
 空き缶つぶしの実験は盛り上がります。手際のよい班は、次から次へと5、6個つぶします。実験で使うアルミ缶やペットボトルは、各自で持参、実験後はお持ち帰りです。つぶれた缶を家族でみんなで鑑賞し、楽しい一時を過ごしてもらいましょう。

関連ページ
実験7 大気の圧力 1年(1999年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の物理学
 第章 静かな
  力のつりあい 
 大気による圧力   p.36、p.37 
 宇宙から見た地球の大気   p.37 
 重力、圧力、浮力のまとめ   p.42 

第69時 ←
実験21 水圧と浮力の関係を矢印で表す

→ 第71時
実験23 浮沈子をつくろう(パスカルの原理)

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