このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第44時
実験20:こげた砂糖の拡散(水溶液)

     2012 10 5(金)、9(火)
     理科室

はじめに
 水溶液は、水の中に1種類以上の物質が溶けたものです。肉眼では安定している水溶液でも、ミクロレベルでは水分子と溶けている粒子がダイナミックに動き回っています。第6章の目標は、この水溶液を分子レベルでイメージすることです。(私の著書 実践ビジュアル教科書『中学理科の化学第6章 水溶液 前文)

 今日から4時間で水溶液について学びます。本時の実験『こげた砂糖の拡散』は、黒い砂糖が溶けていく様子を観察できるので最適な教材です。まだ実践されていない先生は、是非お試しください! 非常に簡単な実験ですが、生徒の反応も発見も理解も上々です。


上:焦げた砂糖を水に入れた時の様子(実践ビジュアル教科書『中学理科の化学の原稿p.98から)
 ※ 上の画像をクリックすると同原稿p.98-p.99をご覧頂けます
 ※ 焦げた砂糖の作り方は、同本p.69、あるいは、実験12 べっこう飴(2年)2003年を参考にしてください


本時の目標
1 砂糖が水に拡散する様子を観察、スケッチする
2 砂糖は小さな粒が集まってできていることを理解する
3 溶質(砂糖)は、ばらばらになって動いていることを理解する
4 溶けている粒子は非常に小さく、肉眼では透明に見える

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • 25mm試験管(5本)
  • 同試験管立て
  • 雑 巾
  • こげた砂糖(演示実験でつくる
    ・砂糖120g
    ・炭酸水素ナトリウム25g
    ・500mlビーカー
    ・ガラス棒
    ・アルミホイル
    ・ガスバーナー、マッチ
    ・三脚、金網

授業の流れ
(1) 本時の内容紹介 (1分)

 今日から『水溶液』という新しい分野に入ることを宣言します。

(2) 角砂糖を冷めた紅茶に入れて放置するとどうなるか (10分) 
 角砂糖を冷めた紅茶に入れ、数時間放置したときの変化を『モデル図と言葉』によって表現させます。紅茶は冷めていなくても良いのですが、冷たい紅茶を設定することで、熱エネルギーを持った熱い紅茶で考えるより高い思考力を要求できます。それよりも私は、角砂糖を知らない生徒がいないか心配していましたが、ほぼ全員知っていました。


上:自分の考えを発表するA組の生徒達


上:A組の生徒達の考え(クリックすると拡大)
 「教科書に書いてあるような考えは面白くありません。絶対にあり得ないような独創的な考えを発表してください」と一言付け加えると、生徒達は燃えます。


上:B組の生徒達が意見を出し合いながら考え、発表する様子 (クリックすると発表後の黒板)

 代表生徒の考えが出そろったら、先生は1つずつ確認しています。何を意味しているのか分からないものは、発表した生徒に説明させてください。それぞれの考えについて賛成・反対、質問の時間をとると盛り上がりますが、時間を取り過ぎないようにしましょう。本日のメインは観察・スケッチです。先生が演示しながら焦げた砂糖をつくる時間も10分必要です。

正しい実験結果
 写真下のように、すべて溶けて同じ濃さになります。どの部分を飲んでも同じ甘さの紅茶になります。液体の色は、紅茶色透明です。透明になる理由は、紅茶に溶けた砂糖の粒が1粒ずつばらばらになっていること、1粒ひとつぶは小さくて肉眼で確認できないこと、です。


上:C組代表生徒の考えと正しい実験結果(クリックで拡大) 

 さらに、拡散という語を紹介し、拡散は混ぜなくても起ること、熱い紅茶なら素早く起ること、熱い紅茶が早い理由は砂糖や水の粒が元気に動いているからであること、をつけ加えます。

 授業の最後の考察の時間に、均一になった砂糖水溶液は、どれだけ放置しても砂糖と水に戻らないこと(熱エネルギー第2法則)を付け加えると完璧です。

(3) 砂糖水溶液の溶媒と溶質 (2分)
 砂糖水溶液の溶媒と溶質について、以下のようにめとめます。


上:C組の板書

 溶質、溶媒という語は覚えるだけなので、時間をとる必要はありません。授業中にくり返し溶質、溶媒、溶質、溶媒と呪文を唱えるように先生がくり返して口に出しましょう。言葉は自然に覚えていくものものです。学習塾で事前に知っている生徒もたくさんいると思います。

(4) 焦げた砂糖を作る演示実験 (10分)
 教師用実験台のまわりに生徒を集めます。そして、加熱して液体にした砂糖の中に、大量の炭酸水素ナトリウムを入れます。砂糖の温度を175度Cで投入すれば、簡単に焦げた砂糖ができます。これを見た生徒は大変喜びますが、初めて行う先生は必ず予備実験をしてください。砂糖を加熱して液体にするまでに少なくとも5分必要です。その間に、砂糖の状態変化、砂糖の粒の状態、熱エネルギーをもらった粒が元気になっていく様子、液体になると透明になること、などいろいろな話ができるようにしておきましょう。


上:液体の砂糖に大量の炭酸水素ナトリウムを加えた時の様子(授業記録『実験12 べっこう飴(2年)2003年』から)
 ※上の実験は、焦げないように温度調節しています。


上:A組でつくった焦げた砂糖

焦げた砂糖をつくるポイント
:アルミホイルを長さ1m以上出し、実験台の上に広げておく
 → しわが寄ると、砂糖がはずれにくくなる(上の写真は生徒が持ち帰った後なのでクシャクシャ)
 → アルミホイルの準備は、砂糖の加熱中に行えば良い
:砂糖の量は、ビーカーの底から1.5cm程度
:水は入れない
:炭酸水素ナトリウムを加える前は、できるだけ砂糖を焦がさないようにする
 → 炭酸水素ナトリウムを加えると、加熱しなくても膨張、真っ黒に焦げる
:砂糖が液体(透明)になったら、さらに少し加熱する
 → ただし、水蒸気が出る(熱分解する)ほど加熱してはいけない
 → この時点では、できるだけ焦げないようにする
:炭酸水素ナトリウムを入れる前に、ガスバーナーの火を止める
:炭酸水素ナトリウムは、薬さじ大さじ2杯程度入れる
:入れたら、一気にかき混ぜる
:膨らんできたら、ビーカーからこぼれないようにガラス棒で操作する
 → 溢れそうな砂糖をガラス棒で取り、アルミホイルにのせる
 → 生徒が持ち帰りやすいように、アルミホイルに少量ずつ分けておく

安全上の注意
:溶けた砂糖は大変危険で、触れると皮膚が重大な火傷をおう
:膨らんだ砂糖の温度も高いので、十分注意する


上:焦げた砂糖をつくる方法をまとめた生徒の学習プリント

(5) 生徒実験・観察、スケッチ  (15分)
 単純な実験・観察、スケッチですが、生徒は興奮覚めやらぬまま、焦げた砂糖が溶けていく様子を観察することでしょう。大きめの試験管の方が適しています。1人1本の試験管を使うことも十分可能ですが、試験管1本を班全員で観察した方が感動的です。劇的に粒子が動くのは初めの10秒なので、試験管を何本か用意しておき、何度も溶けはじめる瞬間を確かめるようにした方が良いでしょう。砂糖粒子の動きを詳しく観る力が養われます。


上:砂糖が溶ける様子を観察する生徒


上:D君の記録


上:Eさんの記録


上:Fさんの記録


上:班全員で観察する様子。焦げた砂糖のカケラが机上に準備してある。

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左:観察、記録する生徒
右:真っ黒な炭になった部分を入れ、観察する生徒


上:色がついた水溶液に、さらに砂糖を追加したときの変化を調べる生徒


上:もっともよく変化が観られるのは、砂糖を入れてから30秒まで

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上4枚:生徒4人の学習プリント(いずれもクリックすると拡大)


授業を終えて
 焦げた砂糖は素晴らしい材料です。近い将来、全世界の教科書に標準掲載させることでしょう。

関連ページ
実験12 べっこう飴 (2年)2003年

実践ビジュアル教科書『中学理科の化学
第4章 化学変化  液体状態の砂糖にNaHCO3を入れた時の様子 p.69
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第6章 水溶液   溶媒と溶質 p.96
角砂糖の拡散
 ↑ クリックすると、印刷原稿がご覧になれます
p.98、p99

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