このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第43時
実験19:いろいろな酒を蒸留しよう

     2012 10 4(木)、5(金)
     理科室

はじめに
 時間にゆとりがあれば、この実験の前に1999年に実践した『実験8 蒸留』を行うべきです。その授業は、水とエタノールを混ぜる演示実験から始まります。水とエタノールはいずれも無色透明ですが、それら2つを1つのビーカーに入れると完全に混ざります。無色透明の混合液を見た生徒は、もう2度と2つのビーカーに分けることは不可能だと感じます。そこで、次の発問をします。

「もう一度、2つの液体に分けられると思う人は手を挙げてください!」
「その方法を解る人はいますか? ・・・前の時間に習ったことを利用すればできるよ!」
→ 水とエタノールの沸点の違いを利用する

 水の沸点100度C、エタノールの沸点78度Cを確認してから、混合液を各班に配付します。そして、沸点の違いを利用してエタノールと水に分留させるわけです。半々に混ぜたものを使えば、確率100%でエタノールを取り出すことができるでしょう。その応用実験として本時を配置すれば、より鮮やかな1時間になりますが、本年度から完全施行の学習指導要領では無理なので、次の改定まで声を出し続けましょう。

他年度の実践
実験10 みりん、ワインの蒸留 1年(2002年)
実験8 蒸 留 1年(1999年)
いろいろな蒸留実験 1年(1999年)


上:持参した酒を加熱し、何本かの試験管に蒸留した液体を調べる生徒達


本時の目標
1 いろいろな酒を蒸留し、エタノールを取り出す
2 蒸留によって取り出した液体を脱脂綿につけ、燃焼する様子を観察する
3 正しい操作で安全に実験する

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • いろいろな酒
    ウィスキー
    ブランディー
    ワイン
    日本酒
    みりん
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • 試験管(6本)
  • 試験管立て
  • 沸騰石
  • 鉄製スタンド
  • ゴム栓・ガラス管・ゴム管のセット
  • ガスバーナー
  • マッチ
  • 脱脂綿
  • ピンセット
  • ぬれ雑巾
  • エタノール(演示実験用)

授業の流れ
(0) 生徒が持参した酒の確認

 始業前に、生徒が持参した酒を確認、点検印を押します。

(1) 本時の内容紹介 (1分)
 生徒実験の時間を確保するため、短時間で実験目的、操作方法、結果のまとめ方、を解説することを知らせました。

(2) 生徒が持参した酒の確認 (2分)
 「酒を持ってきた人は手を挙げてください。・・・おっと、ほとんどの人が持ってきていますね。大変よろしい。では、ウィスキーを持ってきた人? ・・・ウィスキーは強いお酒ですが、それはアルコールの割合、すなわち、アルコール度数が高いということです。アルコール度数はラベルに表示してあるので、見てください。ウィスキーでなくてもラベルがあるなら、必ず表示してあるはずです。では、調べてご覧! ・・・(生徒からいろいろな声が聞こえるので、適切なものを拾って『アルコール度数』について関心を高める)・・・ということで、酒の種類によってアルコールの割り合いが違いますが、今日は、持ってきた酒からアルコールを取り出す実験をします。」

(3) エタノールの紹介 (2分)
 「酒に含まれているアルコールを何というか知っていますか? ・・・そうです。エタノールです。よく知っていますね。アルコールはたくさんの種類があり、単純なものから順にメタノール、エタノール、ブタノール、プロパノール、などがあります。詳しいことは時間があるときに紹介しますが、有名なものは2つで、1つは適量なら薬になるエタノール、もう1つは飲むと目が見えなくなるメタノールです。今日はみなさんが持参した酒からアルコールを取り出しますが、それは飲んでも大丈夫なエタノールで、注射を打つ前の消毒液としても使われているものです。あ、エタノールについては4時間前に『
実験16 エタノールの沸点』で教えましたね。」

(4) 酒からエタノールを取り出す蒸留装置の確認 (8分)
 今日の学習プリントのタイトル『いろいろな酒を蒸留しよう』にある、蒸留という言葉の意味を紹介した後、すぐに蒸留装置を板書します。


上:A組で紹介した蒸留装置(本日の実験装置)の板書

蒸留装置のポイント
1:
酒の中に沸騰石を入れる
2:
ガスバーナーは中火  → 沸騰した液体がゴム栓に達したら失敗
3:
酒の量は、試験管1/5〜1/4 → 同上で失敗
4:
混合液は、5本の試験管に分ける
 → 4本は蒸留した液体を捕集する + 1本は蒸留しなかった残り物(沸騰石入り)
5:試験管4本には、それぞれ試験管の底から5mm〜7mm 蒸留した液体を捕集する
6:
ゴム管・ガラス管から出る気体は、とくに冷却しなくても液体になればそれで良い

安全を確保するための注意
1:酒の中に沸騰石を入れる
2:ゴム管を折り曲げない
3:ガラス管を抜き差しするときに火傷しない

(5) 実験結果のまとめ方とエタノールの確認方法 (7分)
 試験管4本のまとめ方を紹介します。


上:B組の板書

まとめ方のポイント
1本目の試験管には、沸点が低いエタノール(78度C)が捕集される
 → 1本目で捕集できない場合、2本目以降の可能性はゼロ
2:捕集できるエタノールの量は、酒のアルコール含有量で決まる
 → アルコール度数40%なら、初めの試験管2本はエタノール、次の2本は水、残った1本は旨味成分
3:エタノールの確認は、捕集した液体を脱脂綿につけて行う
 → 液体が燃焼すればエタノール


上:C組の板書

(6) 生徒実験 (25分)
 初めての実験でしたが、協力しあってできたようです。写真下の班の生徒は、ペットボトルに少量の焼酎を入れて持参したと思います。ガスバーナーの右にある小さな容器を使って持ってきた生徒もいました。時間があれば、いろいろな酒を調べることができて楽しくなったと思います。


上:火傷しないように注意しあいながら試験管をかえる様子


上:炎の大きさを調節しながら蒸留を続ける様子


上:試験管の上に脱脂綿の載せ、それぞれの試験管に捕集した液体が燃えるか確かめる様子

エタノールの確認方法


上:脱脂綿下部は、水がついているので燃えない(白いまま、変化なし)。脱脂綿上部は、水もエタノールもついていないので燃えて黒くなる(脱脂綿そのものが燃える)。 →脱脂綿にエタノールが含まれている場合、ガスバーナーの炎に入れた途端にエタノールが燃焼する(脱脂綿は白いまま変化しない)。この操作は、4時間前の『実験16 エタノールの沸点』で演示済み。


上:脱脂綿そのものは変化していないので、エタノールが燃焼している


上:A君の学習プリント


授業を終えて
 このページの冒頭で述べたように、蒸留実験を行うなら2時間欲しいですね。

note:蒸留と分留の違い(蒸留 > 分留)

蒸 留

分 留
・沸点の違いを利用して、混合液を2種類以上の液体に分けること。 ・蒸留の中でも、ほぼ完全に分けられる場合、石油を蒸留する場合は『分留』という。

実践ビジュアル教科書『中学理科の化学p.91欄外から

関連ページ
実験16 エタノールの沸点 1年(2012年)
実験10 みりん、ワインの蒸留 1年(2002年)
実験8 蒸 留 1年(1999年)
いろいろな蒸留実験 1年(1999年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の化学
第1章 分 子  脱脂綿とエタノールを加熱する
 
↑ 印刷原稿をご覧になれます
p.11
第5章 状態変化  エタノール水溶液を分留しよう p.88、p.89
ウィスキー、ラム酒を蒸留しよう
 台所にある水溶液のいくつかは、エタノールを含んだ混合物です。成
分表示を見て、興味を持った水溶液を蒸留してみましょう。
p.90、p.91
石油(原油)の分留
 地下から採掘される石油は、大昔の植物(有機物)からできた混合物
です。これを加熱すると、沸点の順に分かれます。最後に残るのは、高
温でも蒸気にならない重油やアスファルトです。
p.91

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実験18:パルミチン酸の融点、凝固点

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実験20:こげた砂糖の拡散(水溶液)

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