このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録 1年(2012年度)です

第42時
実験18:パルミチン酸の融点、凝固点

     2012 10 3(水)、4(木)
     理科室

はじめに
 融点と凝固点は同じ温度で、パルミチン酸は63度Cです。この測定方法は2時間前に行った『実験16 エタノールの沸点』と同じなので、生徒は良好なデータを簡単に得ることができたと思います。ただし、融点と凝固点を比較すると、融点の誤差は大きく、凝固点は完璧な結果を得られます。なぜなら、融点は不安定な加熱によって求めますが、凝固点は安定した空冷によって求めるからです。

 したがって、凝固点を測定する時間を必ず確保してください。実験操作のポイントを本文中に示してあります。

他年度の実践
実験8 パルミチン酸の融点・凝固点 1年(2002年)
実験7 融点・凝固点 1年(1999年)


上:融解したパルミチン酸を空冷させ、凝固点を測定する生徒達


本時の目標
1 パルミチン酸の融点と凝固点を測定する
2 データ数10個を適切に処理し、理想的なグラフを得る
3 正しい操作で安全に実験する

準 備
生 徒 教 師
  • 筆記用具
  • 教科書、理科便覧、ファイル
  • 本日の学習プリント (1/人)
  • 温度計
  • パルミチン酸
  • 沸騰石
  • 直径18mm試験管
  • 直径15mm試験管
  • 300mlビーカー
  • ガスバーナー
  • 三 脚
  • 金 網
  • マッチ
  • ぬれ雑巾
  • 鉄製スタンド
  • セロハンテープ

授業の流れ
(1) 本時の内容紹介 (1分)

(2) パルミチン酸の紹介 (4分)
 パルミチン酸という言葉を聞いたことがある人は少ないでしょう。中学理科教師でなければ、私も知りませんでした。


上:パルミチン酸について紹介した板書

.

左:薬包紙に載せたパルミチン酸(5g)
右:A君の学習プリントに添付されたパルミチン酸

(3) 実験結果の紹介(10分)
 実験前に、理想的なデータとグラフを紹介しました。2時間前の『実験16 エタノールの沸点』と同じ手順です。


上:B組の板書

グラフを書くポイント
1:横軸と縦軸は、学習プリントに印刷しておく
2:横軸は、加熱時間(30秒毎に計測、エタノールの実験と同じ
3:縦軸は、パルミチン酸の温度
 → 基本は、目盛りの1/10まで計測
 → しかし、温度計そのものの誤差=1度Cなので、0.1度Cまで計測することは無意味
 → 今回の目的は、融点(63度C付近で温度上昇が止ること)の確認
 → 結論、0.1度Cまで計測しても良いが、グラフは誤差1度Cで十分
4:63度C融点で温度上昇が止まる
5:融点の始まり(溶け始め)と終わり(溶け終り)をグラフにメモする
6:加熱しても温度上昇しない時間は、固体と液体が同時に存在することを確認する
7:再び温度上昇が始まり、75度Cを超えたら火をとめる
8:火をとめた時間をグラフにメモする
9:6冷却時の温度変化、および、パルミチン酸の状態を記録する
10:各データは、なだらかな曲線で結ぶ
11:時計係1人、温度計測係1人、記録係1人、安全係1人を選ぶ
 → 兼任可


上:C組の板書

(4) 生徒実験(25分)

上:パルミチン酸を試験管に入れる様子

 次のクラスからは、パルミチン酸を試験管に入れる操作がなくなります。パルミチン酸はパラフィンと同じように洗浄しにくいからです。2重になった試験管にパルミチン酸と温度計が入っているものから実験開始です。

 また、温度計の理想の位置はパラフィンの中央部ですが、試験管にさしたままでも大きな誤差は生じません。それよりも重要なポイントは、温度計の球全てをパラフィンでおおうことです。


上:パルミチン酸を湯煎法で加熱している様子


上:すべて液化したパルミチン酸を空冷する準備をする生徒達

空冷するためのポイント
1:
ガスバーナーは、手元に移動させてから火を消す
2:鉄製スタンドのネジや試験管の挟み具合を良く確認してから、試験管を鉄製スタンドに挟んだまま全体を垂直に持ち上げるようにして移動させると良い。鉄製スタンドは重たいが、鉄製スタンドのネジを緩めるより確実な操作で、試験管・温度計・パルミチン酸が落下したり暴れたりする失敗が少ない。


上:空冷中のパルミチン酸の温度を測定する生徒


上:温度計の目盛りを読む生徒


上:同 上


上:30秒毎のデータを記録する様子


上:グラフを書いてから、実験操作やパラフィンの状態をメモする生徒


上:定規を使ってグラフを書く生徒


上:D君のデータとグラフ


上:E君の学習プリント


上:F君の学習プリント


授業を終えて
 エタノールと同じ実験操作なので、手際良く実験できたと思います。データ処理も上手くできました。同じような実験をくり返すことは、生徒にとって非常に大切なことだと思います。

関連ページ
実験8 パルミチン酸の融点・凝固点 1年(2002年)
実験7 融点・凝固点 1年(1999年)

実践ビジュアル教科書『中学理科の化学
第5章 状態変化  物質の三態(固体・液体・気体) p.80
パルミチン酸の融点・凝固点 p.86、p87

第41時 ←
実験17:パラフィンを加熱、冷却する

→ 第43時
実験19:いろいろな酒を蒸留しよう

↑ TOP

[→home
(C) 2012 Fukuchi Takahiro