このページは、Mr.Taka 中学校理科の授業記録> 1年(2012年度)です |
第45時
実習21:水溶液の濃度2012 10 10(水)、12(金)
理科室はじめに
今日は小学校の復習です。中学1年数学は難解な濃度の問題を解いていますが、理科も貴重な1時間を献上しようと思います。理科で濃度を教えるポイントは、濃度は簡単! と感じさせることです。数字で心的外傷を負っている子どもに光を与えることです。もちろん、自然科学で数量を扱う基本も教えます。その基本は、(1)単位を必ずつけること、(2)数は数、単位は単位どうしで計算すること、(3)パーセントは単位ではないこと、(4)分数は×、必ず少数にすること、です。なお、有効数字の詳細はこの段階では教えません。他年度の実践
・質量パーセント濃度 1年(1999年)
上:練習問題の答えを発表に来た生徒に注目するクラスメイト達
本時の目標
1 水溶液の濃度計算ができるようになること
2 数は数、単位は単位どうしで計算できるようになること
3 パーセントは単位ではないことを理解すること
4 分数は、必ず小数にすること準 備
生 徒 教 師
- 筆記用具
- 教科書、理科便覧、ファイル
- 本日の学習プリント (1/人)
授業の流れ
(1) 本時の内容紹介 (1分)(2) 小学校の算数を4問 (10分)
小学校で学習済みの問題4問を解きます。その問題と解答は写真下の通りです。指導上のポイント
1:分数は×
2:自然を調べるとき、どこまで正確か(桁や有効数字)が大切なので小数にする
3:ただし、割り切れない時の有効数字は、適切な桁で良い
・上の(4)は、(3)との違いを出すために0.48、0.476、0.4762のいずれかとした
4:割算の方法を丁寧に確認する
・色分けして示す
・割算ができない生徒を探し、同意の上で指名し、全員の前で行う
(クラスメイトの大半は誰ができないか知っているし、本人も自覚している)
・上の画像をクリックすると、6÷105 の板書例
上:割算の問題を解く生徒(3) 5%の食塩水を確認する(10分)
「食塩5g を水に溶かして食塩水をつくります。さて、水は何g 必要ですか?」
みなさんも一緒に考えてみましょう。
上:問題のモデル図
「5%の食塩水は、左右どちらでしょう。1回だけ手を挙げてください。」「意見は2つに分かれましたが、正解は1つだけです。では、それぞれの考えを説明してもらいましょう。どちらからでも良いので、みんなが納得するように説明できる人は手を挙げてください。では、Aさん。・・・なるほど、良いですね。その他、説明してくれる人はいますか。では、B君。・・・なるほど、分かりやすい説明でしたね。その他にいますか? AさんもB君も左の説明をしてくれたのですが、右が正しいと思う人で、誰か説明してくる人はいませんか? ・・・いないようなので、もう一度全員に、どちらが正しいかききます。左右、どちらか1回だけ手を挙げてください。(以下省略)」
「正解は左でしたが、確認するために黒板にまとめます。そして、右の濃度、パーセントも求めてみましょう。」
上:食塩水の濃度の求め方を示すための板書
指導の手順とポイント
濃度を難解なものにしている原因は2つです。1つは単純な割算、必ず小数になる割算です。もう1つは百分率(パーセント)です。ハードル1:濃度を求めるための割算
小数になる割算については、直前の練習問題で復習したばかりなので問題でしょう。しかも、100÷5、105÷5は、いずれも、先ほど解いた数字と同じです。計算しなても良いように仕込んでおいたわけです。
1:塩、水、全体の順に、それらの語を板書する
2:塩と水の数量を単位を書く
3:塩と水から、全体の数量と単位を求める
4:違う色のチョークで、塩と全体をチェックし、同じ色で矢印(↓)と濃度を板書する
5:塩÷全体を計算する
→ 数は数、単位は単位どうしで割算する
→ 数は残るが、単位は消える (質量の単位 g は消えた!)
→ 数は小数になる
→ 左は0.05、右は0.048
→ この時点でパーセントはどこにもないハードル2:パーセントは単位ではない
6:左は濃度0.05、右は濃度0.048でよい(質量で比較した濃度)
→ 濃度にパーセントをつける必要はない
→ しかし、より分かりやすくするためにパーセントという接尾語をつける
→ この接尾語は、前の数をふた桁あげる
7:数は、パーセントをつけて表すこともできる
→ 左は0.05 = 5%、右は0.048→ 4.8%
→ パーセントは単位ではない、桁をあげる接尾語(正しくは下表参照)
→ パーセントを使って表した濃度を、パーセント濃度、という
→ この場合は、質量で比較しているので質量パーセント濃度という
8:下の(4)のように数とパーセントをつけた数についてまとめるnote:百分率(パーセント)を扱う自然事象
濃度(溶解度の問題)と湿度(水蒸気量の問題)は、いずれも同じ考えによって解くことができます。多くの生徒がつまずいていると思いますので、中学3年生になったら、2つの事象を同時に復習してあげましょう。悩める受験生の神になってください。(4) 百分率(%)について確認する (3分)
数と、二桁あげる接尾語としてのパーセント付きの数、をまとめます。写真下のように、1=100%、0.5=50%、・・・とすれば良いでしょう。十分に理解してないと思われる生徒に答えさせることも重要です。学級の理解度に合わせ、適切な問題を設定してださい。表にしてまとめることも、分かりやすい方法です。
上:板書例なお、パーセントと同じはたらきをする接尾語として、千分率(‰)と百万分率(ppm)がありますが、今回の授業では紹介しませんでした。時間にゆとりがあったり、3年生で復習する時に教えると良いでしょう。
百分率(%) 2つの数量の割合いを100倍したもの 千分率(‰) 2つの数量の割合いを1000倍したもの 百万分率(ppm) 2つの数量の割合いを1 000 000倍したもの (5) 濃度の公式をまとめる (2分)
下の板書は単位が書いてありませんが、塩(g)、全体(g)と記すべきです。
上:A組の板書指導のポイント
1:塩=溶質、全体=溶媒+溶質であるが、あえて触れない
2:この濃度は質量で比較したものなので『質量濃度』というが、質量の単位(g)は消える
3:濃度を%で表すなら、100倍する
→ ‰なら1000倍、ppmなら1 000 000倍する(6) 簡単な練習問題を解く
クラスの実態に合わせて、適切な問題をつって練習させましょう。理論がわからなくても、正解が出れば嬉しいものです。わかったように錯覚するものです。ここまでの授業で首を傾げている子どもを見つけ、その子どもに答えさえてください。「水90gと塩10gで何パーセント?」と発問しましょう。それができないなら、もう一度同じ子どもに「水80gと塩20gで何パーセント?」と発問しましょう。そのようなキャッチボールができるクラスの雰囲気をつくることが先生の仕事です。
上:A組の練習問題 Q3
上:B組の練習問題 Q3
上:F君の感想
数学は答えが1つしかないので簡単(分数)ですが、自然は答えがないので難しい(小数)です。どこまで近づくことができるか(有効数字)がポイントです。右:G君の学習プリントの裏
.
授業を終えて
各クラスに、ひと桁÷ふた桁の割算ができない生徒が数人います。その子ども達に愛の手を差し伸べることが先生の仕事です。できない子どもは恥ずかしいと思っています。そのような子どもを先生が丁寧に救おうとする姿勢を示すこと、一斉授業で1人のために時間を使うこと、クラス全体で学習しようとする雰囲気をつくること、友達を教えたり説明したりする力は自分が解くだけの力より優れていることを教えること、基礎を振り返ることの楽しさを教えること、が大切です。できない生徒を隠すのではなく、オープンにすることで未来を拓きます。それがみんなで創る授業、立派な大人社会へつながる授業です。
関連ページ
・質量パーセント濃度 1年(1999年)実践ビジュアル教科書『中学理科の化学』
第6章 水溶液 水溶液の濃度
濃度はむずかしい、という人がいますが、その原因の多くは小学校レ
ベルの算数ができないことです。次の問題を解いてみましょう。
実践ビジュアル教科書『中学理科の化学』p.101から抜粋p.100、p101 濃度は、単位を持っていない p101 物質量の単位 = モル(mol)
分子はとても小さいので、その数をかぞえられません。そこで、ある
数をまとめた単位、molをつくりました。1molには、602 000 000
000 000 000 000 000 000個の分子(あるいは、小さな粒子)が含
まれています。水分子の場合、1molの質量は18g、水素分子は2gで
す。その中に、6.02×1023の分子があります。
同 上p101
※アボガドロ数 = 6.02 ×10の23乗
実験20:こげた砂糖の拡散(水溶液) |
実験22:最高に濃い食塩水をつくろう |