このページは中学校2年理科『化学』/takaの授業記録2003です

 実験12 べっこう飴
              
                   2004 3 19(金)
                   第1理科室
  家庭科の授業でたくさんお菓子を作っているので、シンプルな『べっこう飴』は人気が
  ないだろうと思いきや、生徒の反応は非常によい。4つも5つも食べて気持ち悪くなっ
  ても作り続けるのは何故だろう?
 
  (上:2回めの飴には、小さなチョコレートがトッピングされた)

  → 2000年度の実践『実験9アメ・カルメ焼き』も参考にして下さい。


 <授業の流れ>
 1 実験上の注意

  大火傷をする危険があるので十分に注意させて下さい
  <注意の例>
  「今日の火傷は重傷になります。どうして危険なのかよく話を聞いて下さい。先日の実験で
  は、間違えてガスバーナーで焼いたピンセットを持ち、親指と人さし指にギザギザの痕がつ
  く火傷をしましたが、あれは治りました。焼いた温度は300度Cぐらいだったので、一瞬
  のうちに皮膚が焼けて煙りを出しましたが、あちっ、とすぐに離したので重傷ではありませ
  ん。さらに、水で2時間ぐらい冷やし続けたので、3日後には完全に治りました。しかし、
  今日の火傷は一生残ります。溶けた砂糖の温度は172度Cぐらいしかありませんが、間違
  って手の上に落ちると、取り外すことができません。あちちちち、と言いながら水道のとこ
  ろに移動して、蛇口をひねって水をかけるまで5秒間かかるので、その間に皮膚の下の細胞
  まで死にます。水を掛けても、飴は急に冷えません。ピンセットのようにすぐに離すことが
  できないので、重傷になるのです。飴が皮膚の中に埋まります。先生も、これまでに何回か
  飴を手の上に落して、こことここに痕が残っています。みなさんも十分に注意し下さい。絶
  対に、溶けた砂糖の下に手を入れてはいけません。美味しそうなのでついつい手が出たり、
  棒についた飴を舐めたくなりますが、絶対にいけません。普通の火傷とは違います。皮膚が
  焼け焦げ飴が埋まらないように十分注意して下さい。」

 2 実験の手順

  <説明の例>
  「それでは、実験手順を説明するので前のテーブルに集まって下さい。」
  「これは洗いてたの綺麗なビーカーなので、できた飴は美味しいく食べられますが、ビーカ
  ーで作ると砂糖が焦げて苦くなるので、鍋を使った方が絶対に良いです。砂糖の量は小さな
  『げんこつのグー』ぐらい。もっと沢山入れも良いけれど、入れ過ぎて失敗して鍋を洗うの
  に時間がかかってチャイムが鳴るより、半分の量で2回作った方が正解だと思います。」
  「さて、ここで質問です。砂糖には水を入れますか?入れませんか?」
  「え、残念ながら1滴も入れてはいけません。『かるめ焼き』の場合は、砂糖が隠れる程度
  の水を入れますが、べっこう飴はダメです。鍋を洗ったあとの水もキンと拭かないと、残っ
  た水が完全に蒸発するまで温度が上がりません。100度Cで温度が止まり、完全に蒸発す
  るまで砂糖が溶けないので、砂糖は鍋を乾かしてから入れて下さい。」
(上:加熱しはじめるとビーカーの表面が曇った。/ 左:表面を加熱し観察しやすくする。)

  「バーナーで加熱します。砂糖が焦げないように弱火がいいけれど、説明に時間がかかる
  ので強火で頑張ります。200度Cの温度計で掻き混ぜますが、みなさんは割りばしを使
  った方がいいでしょう。かき混ぜるスピードは、やたらに速くすると砂糖の温度が下がっ
  てしまい『金平糖』のように固まるので、ゆっくり動かしてください。こうしてペラペラ
  喋っている間も、掻き混ぜたくなるのですがダメです。溶ける温度、融点になるまでは何
  の変化もありませんので、じっと観察して下さい。炎が直接当っている場所を良く確認し
  て、少しでも溶け始めたらゆっくり割りばしを動かして焦げないようにします。ほら、少
  し溶けてきたのが分かりますか。一番前に座っている人は分かりますね。溶けると何色に
  なっていますか?」
  「え、違います。白ではありません。」
  「違います。黄色でもありません。無色です。色なしです。無色で透明です。もちろん焦
  げた場合は、黄色や茶色になりますが、白色が無色です。透明か不透明は色とは関係ない
  のでなので、溶けたばかりの砂糖は無色透明、美味しそうなべっこう飴は黄色透明、大人
  のビター味になったものは茶色透明です。」

  
  (上:色の変化は白→無色→黄→茶→黒。)

  「さあ、だんだん溶けてきました。今、炎から出したり入れたりしていますが、割りばし
  でかき回すのではなく、ビーカーの余熱を使って溶かします。溶けてきたら炎から出し、
  砂糖をゆっくり動かします。かき混ぜると温度が下がり、せっかく溶けたものが固まって
  しまったり、小さな空気の泡が混じって白く濁り、溶けているのかどうか分からなくなり
  ますので、とにかくゆっくり動かすようにして下さい。さあ、説明しているうちに融点に
  達し、みるみるうちに溶けてきました。おっと、もう美味しそうに色づいてきましたね。
  ただ、ここからは一気に温度が上昇して真っ黒に焦げて食べられなくなります。」

  
  (上:ちょっと茶色過ぎるけれど、これを固めればべっこう飴です)

  「今、火傷しないようにアルミホイルの上に垂らせば、べっこう飴の出来上がりです。し
  かし、理科の実験ということなので、もう少し加熱して炭酸水素ナトリウムを入れましょ
  う。耳かき1杯で十分ですが、今日はたっぷり加えます。」

「ここで注目して欲しいのは、もくもくでている白い湯気です。これは何ですか?」
「酸素ではありません。」
「二酸化炭素でもありません。」
「惜しい! 水蒸気でもありません。」
「そうですね、水です。水蒸気は目に見えませんが、白い湯気は見えるので液体の水です。炭酸水素ナトリウムを熱で分解すると、炭酸ナトリウムと二酸化炭素と水になるので、今、見ている白い湯気は水です。そして、もう1つ質問しますが、どうして膨らんだのですか?」
「そうですね。二酸化炭素で膨らんだのです。ぶくぶく出ている泡は水蒸気と二酸化炭素によってできたものです。」

炭酸水素ナトリウム→
 炭酸ナトリウム+ 二酸化炭素+ 


  「見た目めは美味しそうですが、中は丸焦げだし、炭酸水素ナトリウムの味で不味い
  です。失敗作品は洗い流し、新しく挑戦しますが、洗い方は簡単! 水につけるだけ
  です。見てて下さい。水道水で流しますよ。ほら、もうこんなに取れました。焦げ付
  いていなければ洗う必要は一切ありません。水につけておくだけで勝手に取れます。
  湯を使いたい人は準備室の湯沸かし器を使っても構いません。」

  ◎ 作り方のまとめ


 2 生徒実験
  
「はじめ!」と号令をかければ、蜘蛛の子を散らしたように実験が始まります。
  作業が始まると、説明が通らなくなるので、事前に丁寧に説明しておくことが大切です。
  
 ・ つまようじは、飴を落したあとに埋め込んでも良いです
 ・ アルミホイルに皺がよっていると取り外せなくなります
 ・ 食べ切れなかったものは、ホイルに包んでお持ち帰りです
 
 ・ 食紅で色をつけても楽しいです
 
 
 ・ リンゴの上にかけるとリンゴ飴になります
 ・ お勧めは酸っぱさと甘さのハーモニー、『ミカン飴』です
 ・ 紅茶味にしたい時は、葉を細かくして固める直前に混ぜます

 ◎ 生徒の感想

 
 


 ◎ A君の学習プリント


 <評価基準>
 1 自然事象への関心・意欲・態度
  A 授業だけでなく、家庭でもべっこう飴を作ることができる
  B 砂糖、なべ、割りばし、つまようじ、アルミホイルなどを持参できる

 2 科学的な思考
  B 砂糖の分子のようすをイメージしながら実験できる

 3 実験・観察の技能・表現
  B 透明で美味しいべっこうあめを作れる
  C 安全に注意して、事故なく実験することができる
  C 実験終了後、理科室をもとのように清潔にすることができる

 4 自然事象についての知識・理解
  B 砂糖と溶かして固めると、美味しいべっこう飴になることが理解できる


  授業を終えて
  できあがった飴は、理科とランチの時間のみ食べ良いことにしたが、授業後もマナーを
  守れたので満足。実験机に多少の飴が付着しているのは、我慢するしかなさそうだけれ
  ど・・・

  → 2000年度の実践『実験9アメ・カルメ焼き』も参考にして下さい。

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